2022年4月15日金曜日

アンソニー・ホロヴィッツ作「モリアーティー」(Moriarty by Anthony Horowitz) - その3

英国のグラナダテレビから出ている
「シャーロック・ホームズの冒険」(上巻)の内表紙 -
画面左手前には、ジェレミー・ブレット(Jeremy Brett)が演じるホームズが、
また、画面右手奥には、スイスのマイリンゲンにある
ライヘンバッハの滝壺へと落ちていくホームズと
ジェイムズ・モリアーティー教授(演:Eric Porter)が載っている。

読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆半(3.5)


3年間(1891年5月ー1894年4月)の大空位時代を生み出したサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)作「最後の事件(The Final Problem)」直後のスイスのマイリンゲン(Meiringen)にあるライヘンバッハの滝(Reichenbach Falls)から、物語が始まる。

シャーロック・ホームズが居ないロンドンを舞台にして、米国のピンカートン探偵社(Pinkerton Detective Agency)に所属するフレデリック・チェイス(Frederick Chase)とスコットランドヤードのアセルニー・ジョーンズ警部(Inspector Athelney Jones - コナン・ドイル作「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済)」に登場)が、ホームズの宿敵で、犯罪界のナポレオンと呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)と手を組もうとしていた米国の犯罪組織の首領で、正体不明のクラレンス・ドゥヴルー(Clarence Devereux)を捕らえるべく、二人での戦いを続ける設定。


(2)物語の展開について ☆☆☆☆(4.0)


フレデリック・チェイスが謎の少年につけ狙われたり、アセルニー・ジョーンズ警部の娘が誘拐されたり、また、スコットランドヤードが爆破されたりと、様々な困難に接するも、チェイスとジョーンズ警部の二人は、それらを乗り越えて、徐々にドゥヴルー一味に迫っていく。前作の「絹の家(The House of Silk → 2022年1月29日 / 2月5日 / 2月12日付ブログで紹介済)」(2011年)と同様に、テンポ良く話が進み、読みやすい。


(3)フレデリック・チェイス / アセルニー・ジョーンズ警部の活躍について ☆☆☆(3.0)


ホームズを敬い、ホームズの捜査方法を模倣するアセルニー・ジョーンズ警部であるが、ホームズ張りの推理が見られるのは、物語の初めの方だけで、米国の犯罪組織の首領を追いつめるという物語の性格上、話がややハードボイルド風になり過ぎている点は否めず、残念。

一方、本作品の主人公に該るフレデリック・チェイスは、部下の復讐に燃えているものの、自分のホームグラウンドではないロンドンという点は考慮するが、ジョーンズ警部に付き従っているだけのように感じられてしまい、惜しい。ただし、物語の結末における驚くべき仕掛けのためにはやむを得ない点はあるが…


(4)総合評価 ☆☆☆半(3.5)


物語の大部分は、ややハードボイルド風で展開していくが、物語の結末には、驚くべき仕掛けが用意されていて、これによって、最後、物語の様相が一変する。仕掛けとしては、非常に面白いが、コナン・ドイル作「最後の事件」におけるモリアーティー教授の人物設定を考えると、全員が納得できるかと言うと、少し疑問である。



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