本作品「シャーロック・ホームズの冒険 / 芸術家の血(A Sherlock Holmes Adventure / Art in the Blood)」は、米国の小説家であるボニー・マクバード(Bonnie MacBird)が2015年に発表したものである。
サンフランシスコ(San Francisco)出身のボニー・マクバードは、スタンフォード大学(Stanford University)において、音楽の学士号と映画の修士号を取得した後、ハリウッド(Hollywood)において、脚本家およびプロデューサーとして、長らく活躍し、エミー賞(Emmy Awards)を3回、そしてmCine Golden Eagles 賞を11回受賞。また、彼女は、SF 映画「トロン(TRON)」(1982年)の原案・原作者としても知られている。
なお、本作品は、小説家としての処女作に該る。
物語は、ロンドンのイーストエンド(East End)において発生した切り裂きジャック(Jack the Ripper)による連続娼婦殺害事件(1888年8月31日ー同年11月9日)が世間をまだ騒がせていた1888年11月末から始まる。
ジョン・H・ワトスンは、「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済)」事件を通じて知り合ったメアリー・モースタン(Mary Morstan)と結婚して、シャーロック・ホームズと共同生活を送っていたベーカーストリート221B(221B Baker Street)を離れ、新婚生活を送っていた。
そんなある日の夕方、息を切らしたメッセンジャーが、ワトスンの元へ、ハドスン夫人(Mrs. Hudson)からの緊急の手紙を届ける。手紙を開封したワトスンの目に、「あの方(シャーロック・ホームズ)が、部屋に火を点けました。」というハドスン夫人の文面が飛び込んできた。
馬車でベーカーストリート221Bへと急行するワトスン。ワトスンを出迎えたハドスン夫人によると、ホームズは、暫くの間、拘置所に入れられていた、とのこと。
幸いにも、221Bの部屋の家事は、ぼや騒ぎで済んだが、部屋の中には、睡眠不足と栄養失調のため、顔面蒼白となったホームズが居た。ワトスンがホームズの身体を調べると、火事による怪我はないものの、打撲傷と切り傷がいくつもあった。更に、ワトスンを憂慮させたのは、ホームズの細い腕には、コカインを注射した跡が見つかったのである。
これは、後に判ったことであるが、切り裂きジャック事件に関して、ホームズは真相に肉薄していたものの、英国政府の上層部にとって非常に都合が悪いことがあり、彼としては、秘密を守らざるを得なかった。そのため、ホームズは、犯人を逮捕するための証拠を隠したとの理由で、警察に訴えられ、拘置所に入れられたのである。彼の兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)も、当初、弟の居所が判らず、各方面に手を尽くして、なんとか釈放させたのであった。ただし、そのために、彼は、ひどい鬱状態になった上に、再びコカインに手を出し、更に、部屋に火を点けてしまうという悪循環に陥ったのだった。
ワトスンが寝ずの番でホームズの様子を注視している際、ふとサイドテーブルの上にもみくちゃになった手紙が載っているのに気付く。手紙の差出人は、シャーロック・ホームズの兄であるマイクロフト・ホームズからで、E/P の件で直ぐに自分のところへ来るよう、要請していた。「E/P」とは、一体、何のことだろうか?
ワトスンがホームズに手紙のことを持ち出すと、ホームズは、ワトスンに対して、「燃やせ!」と鋭い口調で答えたのである。
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