本作品「閉じられた棺(ひつぎ)(Closed Casket)」は、英国の詩人で、小説家でもあるソフィー・ハナ(Sophie Hannah:1971年ー)が、アガサ・クリスティー財団(Agatha Christie Limited)による公認(公式認定)の下、エルキュール・ポワロ(Herucule Poirot)の正統な続編として執筆の上、「モノグラム殺人事件(The Monogram Murders)」(2014年)に続く第2作として、2016年に発表された。
アイルランド南部のコーク州(County Cork)クロナキルティー(Clonakilty)にあるレディー・アテリンダ・プレイフォード(Lady Athelinda Playford)の邸宅において、その夜、内輪のパーティーが行われようとしていた。彼女は、シュリンプ・セドン(Shrimp Seddon)という女性を主人公とする子供向けの探偵小説シリーズを執筆する有名な作家であった。
パーティーのゲストとして、彼女は、二人の人物を招待していた。一人は、スコットランドヤードの若手警部であるエドワード・キャッチプール(Inspector Edward Catchpool)で、もう一人は、ベルギー出身の著名な私立探偵であるエルキュール・ポワロであった。二人は、彼女と面識が全くなく、何故、自分達が彼女に招待されたのかを事前に知らされていなかった。
パーティー前に、彼女は若手顧問弁護士であるマイケル・ギャザーコール(Michael Gathercole)を呼び、遺言書の変更を依頼する。急な変更を訝るマイケル・ギャザーコールに対して、レディー・アテリンダ・プレイフォードが説明した変更内容とは?そして、彼女の意図は何なのか?
その夜、レディー・アテリンダ・プレイフォードの邸宅には、以下の10名が集まった。
(1)ハリー・プレイフォード子爵(Viscount Harry Playford)- レディー・アテリンダ・プレイフォードの長男
(2)ドロシー・プレイフォード子爵夫人(Viscountess Dorothy Playford)- ハリー・プレイフォード子爵の夫人
(3)クラウディア・プレイフォード(Honourable Miss Claudia Playford)- レディー・アテリンダ・プレイフォードの長女で、ハリー・プレイフォード子爵の姉
(4)ランダル・キムプトン医師(Dr. Randall Kimpton)- クラウディア・プレイフォードの婚約者
(5)ジョーゼフ・スコッチャー(Mr. Joseph Scotcher)- レディー・アテリンダ・プレイフォードの秘書
(6)ソフィー・ブゥーレット(Miss Sophie Bourlet)- ジョーゼフ・スコッチャーの看護師
(7)マイケル・ギャザーコール - レディー・アテリンダ・プレイフォードの顧問弁護士
(8)オーヴィル・ロルフェ(Mr. Orville Rolfe)- マイケル・ギャザーコールの共同経営者
(9)エドワード・キャッチプール警部
(10)エルキュール・ポワロ
パーティーが始まる直前、邸宅に集まった10名を前にして、レディー・アテリンダ・プレイフォードは、つい先程変更した遺言書の内容を皆に明らかにする。
それは、亡くなった前子爵から彼女が相続した土地 / 建物を含む全ての資産について、自分の子供である長男ハリー・プレイフォード子爵と長女クラウディア・プレイフォードの二人を相続人から外し、彼女の秘書であるジョーゼフ・スコッチャーに対して、全てを遺贈する内容で、皆を驚かせた。しかも、本人曰く、ジョーゼフ・スコッチャーは、現在、重度の肝臓病を患っており、余命数週間という話であった。つまり、ジョーゼフ・スコッチャーがレディー・アテリンダ・プレイフォードよりも長生きする可能性は、ほとんどないと言うよりも、ゼロに近かった。
相続人から外されたハリー・プレイフォード子爵とクラウディア・プレイフォードだけではなく、ドロシー・プレイフォード子爵夫人も、レディー・アテリンダ・プレイフォードに対して、異を唱えるが、彼女が聞き入れることはなかった。
しかしながら、彼女は、何故、自分よりも長生きする可能性が極めて低いジョーゼフ・スコッチャーに対して、自分の全財産を遺贈しようと心変わりしたのであろうか?
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