2022年1月23日日曜日

ミッチ・カリン作「ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件」<映画版>(Mr Holmes by Mitch Cullin

2015年に Cannongate Books 社から出版された
ミッチ・カリン作「ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件」の表紙 -
2005年に米国で、また、2014年に英国で出版された際、
「A Slight Trick of the Mind」という原題であったが、
2015年の映画公開に伴って、題名が変更された。


BBC (British Broadcasting Corporation) の iPLAYER を通じて、久し振りに映画「ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件(Mr Holmes)」を視聴したので、本映画について紹介したい。


原作は、米国の作家であるミッチ・カリン(Mitch Cullin:1968年-)が2005年に発表した「ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件(Mr Holmes → 2020年8月15日 / 8月22日付ブログで紹介済)」で、ビル・コンドン(Bill Condon)を監督にして、英国 / 米国が映画化している。

2014年7月から、ロンドンやイングランド南部を中心にして、7週間にわたって撮影が行われ、2015年2月7日に「第65回ベルリン国際映画フェスティバル(65th Berlin International Film Festival)」に出品された後、英国では、2015年6月19日に、また、米国では、2015年7月17日に一般公開された。


ミッチ・カリンの原作は、元々、2005年に米国で、また、2014年に英国で出版された際、「A Slight Trick of the Mind」というタイトルであったが、2015年の映画公開に伴い、「Mr Holmes」へと変更された。

New Observations on the Natural History of Bees
by Mr. Francis Huber (その1)

映画版は、ミッチ・カリンの原作通り、以下の3つの話が並行して展開する。


<1つ目の話>

1947年、シャーロック・ホームズ(93歳)は、諮問探偵業から引退し、サセックス州(Sussex)丘陵の農場で暮らしており、手記を書いたり、蜜蜂の世話をしたりして、毎日を過ごしていた。未亡人のムンロ夫人(Mrs. Munro)が家政婦としてホームズの世話をし、彼女の息子であるロジャー・ムンロ(Roger Munro)が助手として蜜蜂の世話を手伝っていた。

ホームズは、日本の広島への旅から英国へと丁度戻ったところであった。広島での出来事を振り返り、ホームズは、若い頃のような絶対的な知力が自分にはもうないと思い、知力の衰えと格闘していたのである。

そんな中、彼が思い出すのは、彼が諮問探偵業から引退する引き金となったある事件であった。


<2つ目の話>

第一次世界大戦(1914年ー1918年)が終わった約30年前、ジョン・H・ワトスンは3度目の結婚をしており、ベーカーストリート221Bには、ホームズ一人であった。そこへ、トマス・ケルモット(Thomas Kelmot)と名乗る青年が、ホームズの元を相談に訪れる。

ケルモット氏は、ホームズに対して、「2年前に結婚してから、妻のアン(Ann)が2回連続して流産し、医者からは「今後、子供を授かることは難しい。」と言われた。」と語った。ケルモット氏は、妻の気持ちを落ち着かせる精神的なケアの意味もあって、アンにドイツ人のマダム シルマー(Madame Shirmer)のところへアーモニカ(Armonicaー金属やガラス片を長い順に並べて、スティックで打つ楽器)を習いに行かせた。それ以降、妻の様子がおかしくなったと言うのだ。妻の案は、マダム シルマーのところから戻って来ると、屋根裏部屋で楽器の練習をしているのだが、彼女以外、部屋には誰も居ないにもかかわらず、誰かと会話をしていると、ケルモット氏は語った。彼は、マダム シルマーが妻のアンを精神的に操っているのではないかと心配していた。

ケルモット氏の依頼を受けたホームズは、早速、アン・ケルモットの後をつける。彼女は、夫名義で小切手を振り出して、それを現金化したり、また、薬局で毒薬を購入したりと、非常に怪しい行動を繰り返している。

果たして、彼女は、夫のケルモット氏を殺害しようと計画しているのだろうか?


<3つ目の話>

ホームズは、知り合いのタミキ・ウメザキ(Tamiki Umezaki)を訪ねて、神戸に居た。

ホームズがウメザキ氏を訪ねたのは、知力の衰えを防ぐために、ウメザキ氏から煮ごこりを手に入れる必要があったからである。一方で、ウメザキ氏の方にも、ホームズに尋ねたい重要なことがあった。

ホームズは、ウメザキ氏によって、広島を案内される。その際、ホームズは、ウメザキ氏から次のような話を聞かされる。ウメザキ氏の父親は日本政府で働いていたが、政府内での権力闘争に敗北して、失脚。その後、ウメザキ氏の父親は、単身ロンドンへと向かう。そして、ウメザキ氏が父親から受け取った手紙には、「ロンドンにおいて、著名な探偵であるシャーロック・ホームズ氏に相談した結果、暫くの間、英国に留まることに決めた。」ということが書かれてあった。ウメザキ氏は、ホームズに対して、「自分の父親の居場所を知らないか?」と尋ねるが、ホームズは「君の父親に会った記憶はない。」と答えるだけであった。


そして、また、1つ目の話へと戻る。


<1つ目の話>

そんなある日、ムンロ夫人は、養蜂場の近くで、彼女の息子であるロジャーが意識不明の状態で倒れているのを見つけた。彼には、蜂に何度も刺された痕があった。

果たして、ホームズとロジャーが世話していた蜜蜂の仕業なのだろうか?

New Observations on the Natural History of Bees
by Mr. Francis Huber (その2)

映画版における主な配役は、以下の通り。


<1つ目の話>

・シャーロック・ホームズ - イアン・マッケラン(Ian Mckellen)

・ムンロ夫人 - ローラ・リニー(Laura Linney)

・ロジャー・ムンロ - マイロ・パーカー(Milo Parker)


<2つ目の話>

・シャーロック・ホームズ - イアン・マッケラン

・アン・ケルモット - ハティー・モラハン(Hattie Morahan)

・トマス・ケルモット - パトリック・ケネディー(Patrick Kennedy)

・マダム シルマー - フランシス・デ・ラ・トゥーア(Frances de la Tour)


<3つ目の話>

・シャーロック・ホームズ - イアン・マッケラン

・タミキ・ウメザキ - 真田 広之



映画版の場合、概ね、ミッチ・カリンの原作通りに制作されているが、原作対比、以下の点が変更されている。


<2つ目の話>

・映画版では、この事件が発生するのは、第一次世界大戦が終わった後に設定されているが、原作では、1902年の春となっている。

・映画版では、主要な登場人物は、アン・ケルモットとトマス・ケルモットの夫婦であるが、原作では、アン・ケラー(Ann Keller)とトマス・R・ケラー(Thomas R. Keller)となっている。


<1つ目の話>

・映画版では、ムンロ夫人の息子であるロジャーは、病院に搬送され、命を取りとめるが、原作では、ムンロ夫人が発見した段階で、ロジャーは既に死亡しており、非常に後味が悪く、かつ、救いのない終わり方を迎えている。

New Observations on the Natural History of Bees
by Mr. Francis Huber (その3)

映画版において、タミキ・ウメザキを真田 広之が演じているが、原作に比べると、出番が限定されており、彼が登場するのは、物語の前半の3場面位で、非常に残念である。

また、タミキ・ウメザキの母親や、シャーロック・ホームズとタミキ・ウメザキが外食をしているシーンに登場する女性の髪型や服装、更に、ホームズとウメザキが食事をしている建物やその内装等、全てが全く日本的ではなく、中国のようであり、英国 / 米国が制作とは言っても、全然駄目な感じである。



2つ目の話において、イアン・マッケラン演じるシャーロック・ホームズが、映画館において、ジョン・H・ワトスンによる原作に基づいたシャーロック・ホームズの映画を観ているが、劇中劇のシャーロック・ホームズを演じているニコラス・ロウ(Nicholas Rowe)は、スティーヴン・スピルバーグ(Steven Spielberg)制作総指揮「ヤング・シャーロック ピラミッドの謎(Young Sherlock Holmes Pyramid of Fear)」(1985年)において、当時19歳で、シャーロック・ホームズを演じている。


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