英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2010年に出版された バリー・ロバーツ作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 地獄から来た男」の表紙 |
本作品「地獄から来た男(The Man from Hell)」は、英国の作家であるバリー・ロバーツ(Barrie Roberts:1939年ー2007年)によって、1997年に発表された。なお、作者のバリー・ロバーツは、フォーク歌手、フリーランスのジャーナリストの他に、刑事弁護士でもあった。
それは、1886年初夏のある朝だった。いつになく早起きをして朝食を済ませたシャーロック・ホームズは、朝刊を眺めていた。同じく、新聞を読んでいたジョン・H・ワトスンが、バックウォーター卿(Lord Backwater)のジェイムズ・ライル・バックウォーター氏(James Lisle Backwater)が殺されたことを知らせる記事を見つける。残念ながら、事件の詳細は載っていなかった。
ちょうどそこへ、父親から爵位を引き継いだバックウォーター子爵(Viscount Backwater)のパトリック・バックウォーター氏(Patrick Backwater)と彼の弁護士であるプレッジ氏(Mr Predge)の二人が訪ねて来る。バックウォーター子爵は、ホームズに対して、「(自分の)父親の死の真相を明らかにしてほしい。」と依頼するのであった。
バックウォーター子爵によると、父親の前バックウォーター卿は、昨日の午後4時前に外出した、とのこと。何の理由もないまま、夕食時までに戻らなかったため、使用人達に付近を捜索させたところ、屋敷の南側にあるブナの森の中で、撲殺された父親の死体が発見されたのである。
バックウォーター子爵自身は、その日の午後、父親には会っていなかったが、子爵の妹パトリシア(Patricia)によると、父親の様子はいたって普通で、特に気分がすぐれなかったりとか、悩んでいる様子はなかった、とのこと。また、ブナの森は、父親が好む散歩コースの一つだと言う。
更に、バックウォーター子爵は、ホームズに対して、「(自分の)父親は何十万ポンドもチャリティー団体へ寄附しており、誰かに恨まれるようなことは考えられない。」と説明するが、その一方で、父親宛に届けられた謎の手紙を見せるのであった。その手紙は、バックウォーターホール(Backwater Hall)のバックウォーター卿宛になっており、封はされていたが、切手は貼られていなかった。
ホームズがバックウォーター子爵からその手紙を受け取り、封を破ってみると、中の紙には、「地獄の門から来た男が、(午後)6時に古き場所で待つ。(The man from the Gates of Hell will be at the old place at six.)」と書かれてあった。バックウォーター子爵によると、この手紙は、事件当日の午後、屋敷に届けられたようである。
この手紙に書かれた「地獄の門」や「古き場所」とは、一体、何を意味しているのだろうか?
バックウォーター子爵は、自分の父親が、事件当日の午後を含め、ブナの森を散歩する際、屋敷の敷地内に放していた番犬を必ず繋がせていたことを思い出す。ホームズは、そのことから、前バックウォーター卿は、定期的に、犬を嫌う人物、もしくは、犬を恐れる人物と、ブナの森で会っていたものと考える。ただし、前バックウォーター卿の様子から察するに、彼がその人物をよく知っており、恐れてはいなかった筈だと、ホームズはバックウォーター子爵に説明する。
ホームズは、バックウォーター子爵とプレッジ氏の二人に対して、「前バックウォーター卿は、オーストラリア / ニュージーランド(The Antipodes)と何か関係があるか?」と急に尋ねるが、二人は「前バックウォーター卿は、米国、カナダ、南アメリカや南アフリカ等で事業を展開していたが、オーストラリア / ニュージーランドとの繋がりは特にない。」と答えた。
ホームズが突然訪ねた奇妙な質問の意図は、何を意味するのか?
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