2021年8月29日日曜日

コナン・ドイル作「サセックスの吸血鬼」<小説版>(The Sussex Vampire by Conan Doyle ) - その2

「ストランドマガジン」の1924年1月号 に掲載された
コナン・ドイル作「サセックスの吸血鬼」の挿絵(その2)
<ハワード・ケッピー・エルコック(Howard Keppie Elcock:1886年 - 1952年)によるイラスト> -
モリスン、モリスン&ドッド法律事務所経由、
調査依頼を行ったロバート・ファーガスン(画面右端)が、
翌日の午前10時にベーカーストリート221Bを訪れ、
ホームズ(画面左端)に対して詳細の説明を行っている場面が描かれている。
なお、画面中央の人物は、ワトスン。


サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が発表した短編小説「サセックスの吸血鬼(The Sussex Vampire)」(英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1924年1月号に、また、米国では、「ハーツ インターナショナル(Heart’s International)」の1924年1月号に掲載)の冒頭、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)のシャーロック・ホームズの元に、モリスン、モリスン&ドッド法律事務所(Morrison, Morrison & Dodd)から、「吸血鬼(Vampires)」に関する調査依頼が持ち込まれる。事件の依頼人は、同法律事務所の顧客で、紅茶仲買商であるファーガスン&ミューアヘッド社(Ferguson and Muirhead)のロバート・ファーガスン(Robert Ferguson)氏で、彼からの手紙も同封されていた。


ジョン・H・ワトスンは、学生時代、Blackheath チームの一員として、ラグビーの試合に出ていたが、ファーガスン氏は、相手チームの Richmond でプレーしており、奇しくも、二人は旧知の間柄だったのである。


ファーガスン氏は、商用で知り合ったペルー人の娘と5年前に再婚して、現在、サセックス州に居を構えていた。

彼には、15歳になるジャック(Jack)という名前の前妻との息子が居るが、ここのところ、再婚した妻と息子の仲はあまり良くなく、彼女がジャックに体罰を加えている現場を2度見かけた。一度は、彼女による体罰のあまり、ジャックの腕に酷いミミズ腫れが残る程であった。ジャックは、子供の頃の事故により、身体が不自由になっており、その分、父親であるファーガスン氏は、息子を溺愛しているようだった。

再婚した妻によるジャックへの体罰は、ファーガスン氏にとっては、まだ些細な出来事に過ぎず、彼女は、自分が生んだ1歳になる赤ん坊の首に噛み付いて、血を吸っているような現場を、ナースによって目撃されたのであった。彼女は、ナースにお金を渡すと、この件は内密にするよう、強く言い含める以外、キチンとした説明は何もなかったのある。その後、彼女は、寝室に閉じ籠ったまま、外へ出てこようとしなかった。


事件の依頼を受けたホームズとワトスンの二人は、霧深い晩、ファーガスン氏の屋敷を訪問する。屋敷内には、数多くの装飾品が飾られており、彼が再婚した妻が南米から持ってきた道具や武器が壁に架けられていた。ホームズはそれらを注意深く眺めると、考え込む仕草をした。

更に、ホームズは、飼い犬のスパニエルの動きに目を止めた。ファーガスン氏によると、4ヶ月程前から後ろ足に麻痺症状が出ているが、原因時ついては判っていないとのことだった。


ファーガスン氏の妻は、未だに寝室に閉じ籠ったままで、夫であるファーガスン氏が入ることも良しとしなかったが、医者であるワトスンだけは、室内に入れることを許容した。ワトスンの問いに、彼女は、「夫は自分を愛しているし、自分も夫を愛している。」と語るものの、ジャックに対する体罰や赤ん坊への吸血について、その理由を説明することは、頑なに拒否するのであった。


一方、ジャックはファーガスン氏の帰宅を歓迎したが、父親から紹介されたホームズとワトスンに対して、何故か、敵意のこもった鋭い視線を向けるのであった。


ホームズは、傷口を調べるべく、赤ん坊を呼ぶよう、ファーガスン氏に請うと、ナースが赤ん坊を連れて来た。ファーガスン氏が赤ん坊を抱き抱えてあやし始めると、ホームズが庭に面した窓に視線を向けて、真剣な表情をしていることに、ワトスンは気付いた。この時、ホームズは、事件の真相を全て見抜いたのである。


コナン・ドイルは、ゴシック小説 / ホラー小説「吸血鬼ドラキュラ(Dracula → 2017年12月24日 / 12月26日付ブログで紹介済)」(1897年)を発表したアイルランド人の小説家であるブラム・ストーカー(Bram Stoker)こと、エイブラハム・ストーカー(Abraham Stoker:1847年ー1912年)と親交があった。コナン・ドイルが本作品「サセックスの吸血鬼」を執筆したのは、「吸血鬼ドラキュラ」の存在が念頭にあったのではないかと語る有識者が居る。


一方でコナン・ドイルが「サセックスの吸血鬼」を発表した頃、精霊や妖精について、彼が熱心に講演をしたり執筆したりしていた時期に符合する。

ところが、本作品の冒頭部分で、コナン・ドイルは、ホームズからワトスンに対して、「This Agency stands flatfooted upon the ground, and there it must remain. The world is big enough for us. No ghosts need apply. (我が探偵局は、しっかりと足を地につけて建っているし、いつまでもそうあるべきだ。この世は、我々にとって、広大過ぎて、幽霊なぞに関わってはいられない。)」というセリフを言わせており、心霊研究家という顔と(推理)作家という顔をうまくバランスさせていると言える。


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