英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2010年に出版された フレッド・トマス・セイバーヘーゲン作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 吸血鬼を呼び出す降霊術の会」の表紙 |
なお、本作品「吸血鬼を呼び出す降霊術の会(Seance for a Vampire)」は、1994年に発表されている。
1903年7月初旬の蒸した日であった。ワトスン夫人は、親類を訪ねるために、ロンドンを離れていた。その期間を利用して、ジョン・H・ワトスンは、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)のシャーロック・ホームズの元を訪れていた。
ワトスンが朝食を食べに階下へ降りて来ると、ホームズが、ワトスンに対して、「バッキンガムシャー州(Buckinghamshire)アムバリー(Amberley)のノーバートンハウス(Norberton House)に住むアムブローズ・アルタモン氏(Mr. Ambrose Altamont)が、相談のために、これからやって来るところだ。」と告げる。
訪問者の名前を聞いたワトスンは、先月(6月)20日に発生した事故のことを思い出す。アムブローズ・アルタモン氏の長女ルイーザ・アルタモン(Louisa Altamont)、次女レベッカ・アルタモン(Rebecca Altamont)とルイーザの婚約者である米国人ジャーナリストのマーティン・アームストロング(Martin Armstrong)の3人がボート遊びをしていた際、ボートが転覆し、レベッカとマーティンの2人は無事だったが、ルイーザだけが溺れ死んでしまったのである。
約束の時間キッカリにやって来たアムブローズ・アルタモンは、早速用件に入った。彼によると、長女のルイーザが亡くなってから、まだ2週間程しか立っていないが、既に数多くの詐欺師 / ペテン師がアルタモン家に群がって来ている、とのこと。その中には、降霊術で亡くなったルイーザを呼び出して、妻のマデリーン・アルタモン(Madeline Altamont)に会わせたサラ・キーカルディー(Sarah Kirkaldy)とエイブラハム・キーカルディー(Abraham Kirkaldy)の姉弟も含まれていた。アムブローズ・アルタモンは、ホームズに対して、キーカルディー姉弟が行う降霊術のいかさまを暴いてほしいと依頼するのだった。
アムブローズ・アルタモンからの依頼を受諾したホームズは、1週間後、ワトスン、そして、マーティン・アームストロングの2人を伴って、ヴィクトリア駅(Victoria Station)からバッキンガムシャー州アムバリーへと向かった。
現地の駅に到着したホームズ達は、アムブローズ・アルタモン一家が住むノーバートンハウスへと向かう途中、ルイーザ・アルタモン達が乗っていたボートが転覆した現場に立ち寄った。
ホームズが調べたところ、現場の川底はそれ程深くなく、また、川の流れもそれ程早くなかった。マーティン・アームストロングの説明によると、事故発生当時、オールを漕いでいた彼を含め、3人ともボートに座った状態で、誰も立ち上がっていなかった。また、誰もボートの片側に大きく身体を傾けるようなこともしておらず、ボートが不安定な状態だった訳でもなかった。
それにもかかわらず、彼によると、ボートが突然大きく揺れ出して、転覆したと言う。その上、川の流れはそれ程早くもないにもかかわらず、ルイーザ・アルタモンの遺体は、転覆現場から1マイルも川下で見つかったのである。
今のところ、ホームズにとっても、ボート転覆の原因は、ハッキリとしなかった。
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