2021年8月15日日曜日

コナン・ドイル作「サセックスの吸血鬼」<小説版>(The Sussex Vampire by Conan Doyle ) - その1

「ストランドマガジン」の1924年1月号 に掲載された
コナン・ドイル作「サセックスの吸血鬼」の挿絵(その1)
<ハワード・ケッピー・エルコック(Howard Keppie Elcock:1886年 - 1952年)によるイラスト> -
モリスン、モリスン&ドッド法律事務所経由、
ロバート・ファーガスンから調査の依頼を受けたシャーロック・ホームズ(画面左側)が、
自分の資料を用いて、吸血鬼のことを調べている場面が描かれている。
画面右側の人物は、ワトスン。

米国の作家であるリチャード・ルイス・ボイヤー(Richard Lewis Boyer:1943年ー2021年)が1976年に発表した「スマトラ島の巨大ネズミ(The Giant Rat of Sumatra → 2021年7月14日 / 7月18日 / 7月25日付ブログで紹介済)」は、元々、シャーロック・ホームズシリーズの作者であるサー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)が発表した短編小説「サセックスの吸血鬼(The Sussex Vampire)」において言及されている「語られざる事件」をベースにしている。


「サセックスの吸血鬼」は、ホームズシリーズの56ある短編小説のうち、48番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1924年1月号に、また、米国でも、「ハーツ インターナショナル(Heart’s International)」の1924年1月号に掲載された。そして、ホームズシリーズの第5短編集である「シャーロック・ホームズの事件簿(The Casebook of Sherlock Holmes)」(1927年)に収録された。


「語られざる事件」である「スマトラ島の大ネズミ」事件こと、「マチルダブリッグス号(Matilda Briggs)」事件は、「サセックスの吸血鬼」の冒頭で語られている。


Holmes had read carefully a note which the last post had brought him. Then, with the dry chuckle which was his nearest approach to a laugh, he tossed it over to me.

‘For a mixture of the modern and the medieval, of the practical and of the wildly fanciful, I think this is surely the limit,’ said he. ‘What do you make of it, Watson?’

I read as follows:


46 Old Jewry, November 19th


Re Vampires

SIR - Our client, Mr Robert Ferguson, of Ferguson and Muirhead, tea brokers, of Mincing Lane, has made some enquiry from us in a communication of even date concerning vampires. As our firm specialises entirely upon the assessment of machinery the matter hardly comes within our purview, and we have therefore recommended Mr Ferguson to call upon you and lay the matter before you. We have not forgotten your successful action in the case of Matilda Briggs.

We are, sir, faithfully yours,


MORRISON, MORRISON & DODD

per E.J.C.


‘Matilda Briggs was not the name of a young woman, Watson,’ said Holmes, in a reminiscent voice. ‘It was a ship which is associated with the giant rat of Sumatra, a story for which the world is not yet prepared. …’ 


ホームズは、先程の郵便で届いた手紙に入念に目を通した。それから。ホームズは、彼の中では最も笑い声に近い乾いた含み笑いをして、私にその手紙を投げて寄越したのである。

「現代と中世の混合、現実と全くの空想の混合、これは、正にその極致だね。」と、彼は言った。「ワトスン、君はどう思うかい?」

その手紙には、次のようなことが書かれていた。


オールドジュー通り46番地

11月19日


吸血鬼の件


拝啓

弊法律事務所の顧客で、ミンシングレーンの紅茶仲買商であるファーガスン&ミューアヘッド社のロバート・ファーガスン氏が、本日の手紙で、私どもに対して、吸血鬼に関する調査の依頼をされました。私どもは、機械設備 / 装置の評価を専門にしており、生憎と、本件は、私どもの業務範疇に入っておりません。従って、私どもは、ファーガスン氏に、貴殿を訪問して、本件を依頼するよう、推薦致しました。私どもは、マチルダ・ブリッグスの件で、貴殿が活躍されたことをよく覚えております。

敬具


モリスン、モリスン&ドッド法律事務所

E・J・Cより


「ワトスン、マチルダ・ブリッグスと言うのは、若い女性の名前じゃない。」と、ホームズは、昔を思い出すように言った。「スマトラ島の大ネズミ事件に関連した船の名前なんだ。この事件の話を世間に公表するには、まだ機が熟していないがね。」 


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