2021年8月9日月曜日

ガイ・アダムス作「シャーロック・ホームズ / モロー博士の軍団」(Sherlock Holmes / The Army of Dr. Moreau) - その3

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2012年に出版された
ガイ・アダムス作「シャーロック・ホームズ / モロー博士の軍団」の表紙
Cover Design : Amazing15.com


読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆半(3.5)

作者のガイ・アダムス(Guy Adams:1976年ー)は、英国の作家ハーバート・ジョージ・ウェルズ(Herbert George Wells:1866年-1946年 → 2020年2月10日 / 2月22日付ブログで紹介済)が1896年に発表した「モロー博士の島(The Island of Dr. Moreau)」を物語の初めに設定として置いて、うまく物語をスタートさせている。同じ原作者であっても、「宇宙戦争(The War of the World)」(1898年)をシャーロック・ホームズとリンクさせるのは、正直ベース、やや荒唐無稽過ぎるが、「モロー博士の島」であれば、ドラキュラ伯爵(Count Dracula)やジキル博士 / ハイド氏(Mr. Jekyll and Mr. Hyde)等と同様に、許容範囲内におさまっていると思う。


(2)物語の展開について ☆☆☆(3.0)

マイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)がシャーロック・ホームズやジョン・H・ワトスンに対して「モロー博士の島」の話を語る物語の冒頭から、物語の最後まで、個人的には、割合と面白く読めた。ホームズとワトスンの他に、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)による「失われた世界(The Lost World)」(1912年)に登場したチャレンジャー教授(Professor Challenger)達も物語の主要人物として加わっているものの、今一つ大きな活躍の場を与えられておらず、少し可哀相であった。また、物語の終盤、ホームズ、ワトスンやチャレンジャー教授達が獣人達と闘いを繰り広げるが、ややあっさりとしている気がする。そう言った意味では、物語全般、特に、終盤について、ストーリーを練り直したり、もう少しストーリーを膨らませる等の習性が必要かと考える。


(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆☆☆(3.0)

物語の終盤、ホームズは獣人達の一手二手先を読んだ策を張りめぐらす等、ホームズやワトスン達はそれなりに活躍してはいるが、物語の性格上、冒険活劇の要素だけが強いまま、物語が終わってしまった感が強い。ホームズ作品であれば、個人的には、推理小説の要素も多分に入れてほしかった。ホームズが登場しさえすれば良いという訳ではないと思う。


(4)総合評価 ☆☆☆(3.0)

ガイ・アダムス作「シャーロック・ホームズ / 神の息吹(Sherlock Holmes / The Breath of God)」(2011年)に比べると、同作「シャーロック・ホームズ / モロー博士の軍団(Sherlock Holmes / The Army of Dr. Moreau)」(2012年)の方が遥かに楽しめたが、「船頭多くして船山に登る」ではないものの、登場人物をもう少し整理して、ストーリーを練り直す必要があるものと考える。チャレンジャー教授のような重要なキャラクターを出すのであれば、それなりに活躍の場を与えないと、物語に広がりが出てこない。また、ホームズ作品であるので、冒険活劇のままで終わらせないで、ある程度、推理小説の要素も入れた上で、ストーリーを進めてほしかった。



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