「モロー博士の島」において、エドワード・プレンディック(Edward Prendick)という青年が、語り手を務める。
1887年2月、南太平洋において、帆船レディーヴェイン号(Lady Vain)が漂流船と衝突事故を起こして沈没。帆船レディーヴェイン号に乗り込んでいたエドワード・プレンディックは、沈没の際、小型ボートで脱出する。
後に、彼は別の船に救助されて、命が助かるが、その船には、動物が多数積まれている上に、異様な外見をした人間も乗船しており、何か怪しい雰囲気が漂っていた。
その後、プレンディックは、その船の船長と衝突した結果、船の目的地である孤島で下船されられてしまった。
その島において、プレンディックは、白髪の男性に出会うことになる。
生物学を学んだ経験があるプレンディックは、その白髪の男性が、英国で高名な学者だったモロー博士(Dr. Moreau)で、残酷な動物実験を行ったとの理由で、学界を追放され、英国からその姿を消した人物であることに気付くのであった。
モロー博士は、プレンディックに対して、「この島は、生物学研究所のようなものだ。」と告げる。モンゴメリー(Montgomery)という男性が、モロー博士の助手を務めていた。
なんと、モロー博士は、この島において、様々な動物を人間のように改造した上、彼ら獣人に知性を与える実験を行っていたのである。島には、
(1)ムリング(M’ling)
(2)犬男(Dog-man)
(3)銀毛の男(grey Sayer)
(4)豹男(Leopard-man)
(5)ハイエナと豚の男(Hyena-swine)
等、多数の獣人が存在していて、人間を模範とする掟を遵守しながら、生活をしていたが、プレンディックは、島内に散らばる斬殺された動物の死骸等から、モロー博士から課せられた掟を破った獣人が居ることに気付くのだった。
そして、ある事件を経て、獣人達は、人間らしい知性を失い、獣と化していく。更に、獣人達との酒宴を最後のキッカケにして、非常に恐ろしい事態へと陥るのであった。
作者のH・G・ウェルズは、1866年にケント州(Kent)のブロムリー(Bromley → 現在のブロムリー・ロンドン自治区(London Borough of Bromley))内の商人の家に生まれた。
彼は奨学金を得て、サウスケンジントン(South Kensington)の科学師範学校(National School of Science→現在のインペリアル・カレッジ・ロンドン(Imperial College of London))に入学し、生物学を学んだ。また、彼は学生誌「サイエンス スクール ジャーナル(Science School Journal)」に寄稿したりして、将来「SF(空想科学小説)の父」と呼ばれるようになる基礎を同学校に置いて築いたのである。
科学師範学校を卒業した後、彼は当初教員を目指すものの、教育界が非常に保守的な体質であること、また、当時肺を患っていたこと等が原因で、教員への道が閉ざされたため、ジャーナリストとなり、文筆活動へと進むことになった。そして、彼は1890年代から1900年代にかけて、
(1)「タイムマシン(The Time Machine)」(1896年)
(2)「モロー博士の島」(1896年)
(3)「透明人間(The Invisible Man)」(1897年)
(4)「宇宙戦争(The War of the Worlds)」(1898年)
(5)「月世界旅行(The First Man in the Moon)」(1901年)
等、科学師範学校時代に得た科学知識に裏打ちされた SF 小説を次々と発表して、成功を納めた。これらの作品群は、現在においても、非常に有名なものばかりで、今も映像化されたりして、後世に大きな影響を与えている。
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