英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2010年に出版された フレッド・トマス・セイバーヘーゲン作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 吸血鬼を呼び出す降霊術の会」の表紙 |
(1)事件や背景の設定について ☆☆(2.0)
降霊術の会において、ボート転覆事故で亡くなったアムブローズ・アルタモン氏(Mr. Ambrose Altamont)の長女ルイーザ・アルタモン(Louisa Altamont)を呼び出したところ、彼女が吸血鬼として復活したというのが、フレッド・トマス・セイバーヘーゲン(Fred Thomas Saberhagen:1930年ー2007年)作「吸血鬼を呼び出す降霊術の会(Seance for a Vampire)」(1994年)の本筋に該る。この事件に、シャーロック・ホームズ、ジョン・H・ワトスンの他に、ホームズの従兄弟であるドラキュラ伯爵(Count Dracula)が関与する。本作品の前に、作者による物語が何作かあるようで、いきなり本作品を読むと、ドラキュラ伯爵がホームズの従兄弟である設定がよく判らず、物語にやや入り難い。
(2)物語の展開について ☆☆(2.0)
降霊術の会の後、ホームズが何者かによって連れさらわれたため、ワトスンはホームズの従兄弟であるドラキュラ伯爵に助けを求める。降霊術の会が始まるまでは、普通の展開スピードであったが、ワトスンがドラキュラ伯爵に助けを求めた後、物語の展開が急に遅くなり、話がなかなか進まない。ワトスンから助けを求められたドラキュラ伯爵は、個人的には、あまり役に立っていないように感じられた。
(3)ホームズ / ワトスン / ドラキュラ伯爵の活躍について ☆半(1.5)
降霊術の会の後、何者かによって連れさらわれるという憂き目に遭ったことに加えて、物語全般を通して、残念ながら、ホームズは主だった活躍をできていないし、推理の煌めきも見せられていない。
また、ホームズの従兄弟に該るドラキュラ伯爵は、ワトスンの求めに応じて、物語の中盤から姿を見せるものの、彼も、ホームズの救出や事件の解決等を含めて、正直なところ、あまり大きな貢献をできていない。
(4)総合評価 ☆☆(2.0)
本作品は、ホームズとドラキュラ伯爵が共演するシリーズの一つという位置付けであるが、(今回だけなのか、それとも、他の作品もそうなのか不明なるも、)彼らの共演が、物語に対して、プラス効果を全く与えていないように感じられる。
ホームズが単独で事件を捜査する物語の前半部分、ドラキュラ伯爵がワトスンに助力してホームズを救出する物語の中盤部分、そして、ホームズ、ワトスンとドラキュラ伯爵が協力して事件を解決する物語の終盤部分と、ストーリー自体に大きな盛り上がりが感じられず、やや面白味に欠ける。
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