2021年9月4日土曜日

バリー・ロバーツ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 地獄から来た男」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Man from Hell by Barrie Roberts) - その2

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2010年に出版された
バリー・ロバーツ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 地獄から来た男」の裏表紙


シャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンは、バックウォーター子爵(Viscount Backwater)のパトリック・バックウォーター氏(Patrick Backwater)と彼の弁護士であるプレッジ氏(Mr Predge)と一緒に、パディントン駅(Paddington Station)から昼12時発の列車で現地へと赴くことになった。

バックウォーター子爵とプレッジ氏の二人がベーカーストリート221Bを去った後、ワトスンは各新聞記事から前バックウォーター卿(Lord Backwater)のジェイムズ・ライル・バックウォーター氏(James Lisle Backwater)の経歴を調べ上げて、ホームズに話して聞かせる。


前バックウォーター卿であるジェイムズ・ライル・バックウォーター氏は、貧しい家庭環境に生まれ、幼い頃に孤児となった。長じると、船員となって、アメリカ大陸を巡った。鉱山業 / 採掘業に手を広げ、大成功をおさめると、25年前に英国へと戻り、バックウォーター(Backwater)で隠遁生活を送る。チャリティー団体への多額な寄付が評価され、バックウォーター子爵に叙せられる。その後、レディー・フェリシア・イーグルストーン(Lady Felicia Eaglestone)と結婚し、現バックウォーター子爵であるパトリックと娘のパトリシア(Patricia)の二人を設ける。妻のレディー・フェリシア・バックウォーターが10年前に亡くなった後、前バックウォーター卿は再婚せず、パトリックとパトリシアの二人と一緒に、バックウォーターで静かな生活を送っていた。

前バックウォーター卿の経歴の中に、今回の殺人事件を解明する要素はあるのだろうか?ワトスンの説明を聞いたホームズは、「前バックウォーター卿とオーストラリア / ニュージーランド(The Antipodes)の繋がりが、何かある筈だ。」と告げるのであった。


現地に到着したホームズ達は、スコット警部(Inspector Scott)の出迎えを受ける。スコット警部を見たホームズの顔が、喜びに輝く。彼がロンドンのモンタギューストリート(Montague Street)において諮問探偵業を始めた頃、ちょっとした事件で、当時、スコットランドヤードの巡査(Constable)だったスコット警部の手助けをしたことがあったのである。


ホームズとワトスンは、スコット警部と一緒に、前バックウォーター卿の遺体が安置されている警察署へと向かう一方、バックウォーター子爵とプレッジ氏は、バックウォーターホール(Backwater Hall)へと戻り、ホームズとワトスンによる捜査結果を待つことになった。


安置所に到着したホームズとワトスンは、前バックウォーター卿の遺体を検死する。彼の遺体は、50代にしては、体格がよく健康体で、肥満の徴候はなかった。彼の上半身と両腕には、棍棒で何度も殴打された痕がハッキリと残っていて、直接の死因は後頭部への一撃で、複数の襲撃者による犯行のようであった。

スコット警部達が彼の遺体をうつ伏せにした時、背中に残る数多くの傷痕が露わになった。ホームズに頼まれて、それらの傷痕を調べたワトスンは、前バックウォーター卿が若い頃に負ったものだと答える。

更に、前バックウォーター卿の両腕の内側には、「NEVER」と「EVER」の二つの文字がタトゥーとして施されていた。ホームズによると、学生時代のタトゥーであれば、インクによるものが、また、軍隊時代のタトゥーであれば、火薬によるものが主体で、両方とも時間の経過とともに薄くなるが、これだけ鮮明に残っている場合、ランプブラック(青みがかった黒色の極めて純度の高い炭素)によるものと考えられるとのことだった。


前バックウォーター卿が船員としてアメリカ大陸へ向かった後、鉱山業 / 採掘業で大成功をおさめて、英国に戻って来るまでの間に、一体、何があったのだろうか?「NEVER」と「EVER」の二つのタトゥーは、一体、何を意味するのか?更に、前バックウォーター卿が受け取った手紙に書かれていた「地獄の門(The Gates of Hell)」とは、一体、何で、彼とどのような繋がりがあるのだろうか?


0 件のコメント:

コメントを投稿