英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2013年に出版された サム・シチリアーノ作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / グリムスウェルの呪い」の裏表紙 |
そのため、彼女の父親で、作家でもあるグリムスウェル子爵ヴィクター・グリムスウェル(Victor Grimswell, the Viscount of Grimswell)の死により、グリムスウェル子爵という爵位は途絶えることになったが、グリムスウェル家が住む屋敷グリムスウェルホール(Grimswell Hall)と広大な土地は、自分の娘であるローズが相続できるよう、ヴィクター・グリムスウェルが法律上の手続を事前に行なっていた、とのこと。更に、ヴィクター・グリムスウェルは、ローズに40万ポンド以上を遺産として残していた。つまり、ローズは、莫大な遺産を受け継ぐ相続人となったのである。
続いて、フレデリック・ディグビーは、ホームズ達に対して、ローズ・グリムスウェルの伯母であるコンスタンス(Constance)から聞いたグリムスウェル家に伝わる呪い(The Grimswell Curse)のことを語る。
今から200年以上前、最初のグリムスウェルホールを建てたレジナルド・グリムスウェル子爵(Viscount Reginald Grimswell)は、芸術や科学に興味を持つ学識者であったが、飲酒と好色に溺れ、グリムスウェルホール近辺の農夫の娘達が一人二人と姿を消し、レジナルドの餌食となって行った。
その後、レジナルド子爵はチャドウィック伯爵(Earl of Chadwick)の娘ローズ(Rose)をその毒牙にかけたため、グリムスウェルホールは、チャドウィック伯爵の軍に包囲される。ダートムーア(Dartmoor)へと逃亡したレジナルド子爵は、追い詰められた岩場 Demon Tor の上から、チャドウィック伯爵に対して、末代までの呪いを掛けた後、岩場から飛び降り、その最期を迎えた。ところが、翌日、彼の死体は発見されなかった。
その夜、自分の部屋に戻ったチャドウィック伯爵は、恐怖の叫びをあげた。彼の部屋へと押し入った配下の者達は、伯爵を殺害した謎の黒い影が、窓から石の壁伝いに荒野へと逃げ去ったのを目撃する。
それ以来、グリムスウェルホールの塔に、怪しい光が灯ったり、ダートムーアを黒い人影が巨大な狼を連れて蠢いているのが見受けられたため、夜間に荒野へ出かける者は、皆無となった。
ある日、雪嵐につかまった羊飼いの番人が自分の家に戻ると、彼の妻は既に死亡しており、赤ん坊の姿がどこにもなかった。
翌日、羊飼いの番人は、教会の僧侶に伴われて、グリムスウェルホールへと向かうと、そこで血を吸いとられた赤ん坊を発見。彼らが塔に火を放ったところ、燃えさかる塔の中から、レジナルド子爵がその姿を表した。羊飼いの番人が射った矢で喉を貫かれたレジナルド子爵は、燃えさかる塔の中に、その姿を消したのである。
これが、グリムスウェル家に伝わる呪いである。
その後、グリムスウェルホールは再建され、現在に至っている。
ホームズと彼の従兄弟であるヘンリー・ヴェルニール医師(Dr. Henry Vernier)は、ヘンリーの妻で、医師のミッシェル・ドゥデ・ヴェルニール(Dr. Michelle Doudet Vernier)に依頼して、ローズ・グリムスウェルを診断してもらうが、ある日、ローズは、突然、ロンドンからグリムスウェルホールへと旅立ってしまう。
フレデリック・ディグビーの依頼に基づいて、ホームズ、ヘンリーとミッシェルの三人は、急いでローズの後を追いかけ、ダートムーアへと向かう。
ローズ・グリムスウェルの心を苦しめるグリムスウェル家の呪いとは、本当なのか?ローズに刻々と迫りつつある謎の悪意、そして、ダートムーアの岩場に現れる謎の黒い人影と巨大な猟犬とは、一体何者なのか?それは、怪物と化したレジナルド・グリムスウェル子爵なのか?
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