読後の私的評価(満点=5.0)
(1)事件や背景の設定について ☆☆☆☆半(4.5)
サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年-1930年)による正典「サセックスの吸血鬼(The Sussex Vampire)」において、シャーロック・ホームズがジョン・H・ワトスンに言及したものの、未発表のままとなっていた「スマトラ島の巨大ネズミ(The Giant Rat of Sumatra)」事件に、作者のリチャード・ルイス・ボイヤー(Richard Lewis Boyer:1943年ー2021年)が、正面きって取り組んでいる。また、コナン・ドイルの正典「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」事件も、物語の終盤に大きく関与してくる。
(2)物語の展開について ☆☆☆☆(4.0)
「スマトラ島の巨大ネズミ」事件とアリステア卿(Lord Allistair)の令嬢アリス・アリステア(Alice Allistair)誘拐事件が次第に一つに集約していき、その背後に、あの「バスカヴィル家の犬」事件が関わってくるという展開。ホームズへの復讐を狙う犯人の執念が全てを突き動かしており、コナン・ドイル作の有名作品、題名だけが言及された未発表事件と作者が考案した事件の3つがうまく噛み合っている。
(3)ホームズ/ワトスンの活躍について ☆☆☆☆(4.0)
「スマトラ島の巨大ネズミ」に関連して起きる殺人事件や放火事件等と、それらとは趣が全く異なる貴族令嬢の誘拐事件の真相を見抜き、うまく一つに集約させている。物語の終盤、ホームズへの復讐心に燃える犯人により、ホームズ達が追い込まれて、手に汗を握る展開となっている。
(4)総合評価 ☆☆☆☆(4.0)
ジョン・H・ワトスンによる未発表作品という体裁を採りつつ、「スマトラ島の巨大ネズミ」というタイトルにあまりにもこだわり過ぎると、やや荒唐無稽になりかねない中、趣の全く異なる誘拐事件を絡ませつつ、うまく一つに集約している。更に、ホームズシリーズの中でも、最も有名な事件を本物語の背後に配しており、うまい具合に着地させていると思う。
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