2021年7月14日水曜日

リチャード・ルイス・ボイヤー作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / スマトラ島の巨大ネズミ」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Giant Rat of Sumatra by Richard Lewis Boyer) - その1

英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から
2011年に出版された
リチャード・ルイス・ボイヤー作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / スマトラ島の巨大ネズミ」の表紙


作者のリチャード・ルイス・ボイヤー(Richard Lewis Boyer:1943年ー2021年)は、米国イリノイ州エヴァンストン出身の作家で、ニューイングランドの歯科医であるチャーリー・”ドク”・アダムズ(Charlie “Doc” Adams)を主人公にした犯罪小説シリーズ(1982年ー1998年)等で知られる。彼は、当該シリーズの第1作目である「ビリングスゲート ショール(Billingsgate Shoal)」(1982年)により、1983年にエドガー賞(Edgar Allan Poe Award)を受賞している。

なお、本作品「スマトラ島の巨大ネズミ(The Giant Rat of Sumatra)」は、1976年に発表されている。


本作品は、1912年にジョン・H・ワトスンがロンドンのバークレイズ銀行オックスフォードストリート支店(Barclay’s Bank, Oxford Street Branch, London)の金庫に預けた未発表事件の記録が、彼の遺言で定められた期限である1975年を過ぎたため、封印が解かれて、世に公表されたという体裁を採っている。


1894年の夏、ある誘拐事件が世間を騒がせていた。アリステア卿(Lord Allistair)の令嬢アリス・アリステア(Alice Allistair)が、インドへの夏季休暇旅行中、ボンベイの市場へ出かけた際、そこから何の痕跡もなく、姿を消してしまったのである。アリステア卿は、シャーロック・ホームズに対して、秘密裡に助力を求めたが、今のところ、アリステア嬢誘拐事件に関する大きな進展は、まだ見られなかった。


そんな9月15日の宵のことである。

ホームズは、ワトスンに対して、「チャリングクロス(Charing Cross)方面で、火災が起きている。」と告げる。二人がベーカーストリート(Baker Street)をポートマンスクエア(Portman Square)へ向かって下って行くと、人混みの真ん中にスコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)が居た。通りでは、体格のよい中年男性が、大量の流血をして、殺されていたのである。ホームズは、「近くの家の屋根の上で、二人以上の犯人によって刺された後、屋根から通りに突き落とされたに違いない。」と推理する。

そこに巡査が来て、「ドッグ島(Isle of Dogs → 2020年5月2日 / 5月9日付ブログで紹介済)の造船所での火災の勢いが強く、手に負えないので、造船所の方へ向かって下さい。」と、レストレード警部に依頼する。ホームズとワトスンが、レストレード警部と一緒に、造船所に到着すると、そこは火の海であった。負傷者の手当てもままならず、ワトスンは自分の無力感を噛みしめるだけだった。


ベーカーストリート221B(221B Baker Street)に戻ると、ホームズは、ワトスンに対して、「先程、通りで殺されていた男性は、右手首の入れ墨から推測するに、6~8週間程前に東南アジアのボルネオ島辺りに居た船員に違いない。」と告げる。ワトスンが新聞を調べると、その日の午後、東南アジア方面からロンドンに戻った船として、マチルダ・ブリッグス号(Matilda Briggs)の名前が載っていたのある。

ホームズは、ワトスンに対して、「この船員は、何か重要なことを我々に相談する必要があって、ベーカーストリート221Bへ来る途中、それを良しとしない何者かによって殺害されたのではないか?」と話すのであった。


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