英国の Titan Publishing Group Ltd. の Titan Books 部門から 2009年に出版されているダニエル・スタシャワー作 「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 心霊体の男」(1985年)の裏表紙 |
ストーク ニューイントン(Stoke Newington)にある英国政府官邸ゲアストウハウス(Gairstowe House)の金庫室に賊が侵入して、政府の信用に関わる重要書類が盗まれたのである。盗まれた重要書類とは、英国王太子(His Royal Highness the Prince of Wales:後のジョージ5世)が、以前にドイツのヴァレンカ伯爵夫人(Countess Valenka:英国王太子の昔の愛人)宛に出した手紙だった。即位を間近に控えた英国王太子にとって、この手紙が表に出た場合、英国王室のみならず、英国全体を揺るがす一大スキャンダルになることは、間違いなかった。
前の晩、フーディーニのショウに列席した英国王太子が、フーディーニのために、ゲアストウハウスにおいて、非公式のレセプションを開催していた。
フーディーニの足跡が問題の部屋に残っていたことが決め手となり、フーディーニは、スコットランドヤードのレストレード警部(Inspector Lestrade)に、犯人として逮捕されてしまう。英国一堅固な警備を誇る金庫室内に、フーディーニは心霊体(エクトプラズム)になって侵入したと考えられたのである。
兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)からの依頼を受けたシャーロック・ホームズは、ジョン・ワトスンと一緒に、英国政府の欧州問題担当大臣であるオニール卿(Lord O’Neill, the Secretary for European Affairs)の協力を得て、ゲアストウハスを調査するとともに、フーディーニの助手であるフランツ・シュルツ(Franz Schultz)の助けで、フーディーニが出演するサヴォイ劇場(Savoy Theatre)を調べるが、フーディーニが大変身魔術に使用するトランクの中から、非常に意外な人物、ヴァレンカ伯爵夫人の死体を発見する。
果たして、フーディーニが彼女を殺害したのか?それとも、他の人物に罠に嵌められたのだろうか?
一方で、ゲアストウハウスの金庫室に侵入して、重要書類を盗んだ犯人として、ホームズが疑うクレッピーニは、犯行のあった晩、英国南部ブライトン(Brighton)のパレスピア(Palace Pier)にある興行小屋に出演していたことが判明する。つまり、クレッピーニには、難攻不落のアリバイがある訳だ。更に、ロンドンとブライトンという絶対的な距離という問題が、ホームズの前に横たわる。
果たして、クレッピーニが、ゲアストウハウスの金庫室に侵入した賊なのか?どうやって、彼は鉄壁のアリバイを確保したのか?
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