2021年6月27日日曜日

コナン・ドイル作「ソア橋の謎」<小説版>(The Problem of Thor Bridge by Conan Doyle ) - その3

「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の
1922年2月号 / に3月号掲載された
コナン・ドイル作「ソア橋の謎」の挿絵(その3) -
シャーロック・ホームズ達が、
マリア・ギブスンが銃で撃たれて亡くなった事件現場である
ソア橋の上にやって来た場面
(画面左側から、地元警察のコヴェントリー巡査部長(Sergent Coventory)、
ホームズ、そして、ジョン・ワトスン)


サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「ソア橋の謎(The Problem of Thor Bridge)」では、ある年(識者の間では、1900年と言われている)の10月の荒涼とした朝、ベーカーストリート221Bを訪れた米国の元上院議員(American Senator)で、かつ金鉱王(Gold King)のニール・ギブスン(Neil Gibson)は、シャーロック・ホームズに対して、「子供の家庭教師で、屋敷に住み込みのグレイス・ダンバー嬢(Miss Grace Dunbar)に、自分の妻マリア・ギブスン(Maria Gibson)を殺害した容疑がかけられている。」と説明し、「ダンバー嬢にかけられている容疑をなんとしても晴らしてほしい。」と依頼する。


「ストランドマガジン」の
1922年2月号 / に3月号掲載された
コナン・ドイル作「ソア橋の謎」の挿絵(その4) -
ホームズが自分の杖(ステッキ)を使って、
ソア橋の欄干を打ち据える場面
(画面左側から、コヴェントリー巡査部長、
ワトスン、そして、ホームズ)


「ダンバー嬢の無実を証明できるのであれば、お金に糸目を付けない。」と言って、傲慢な態度をとり続けるギブスンに対して、ホームズは冷ややかな対応を行う。

「What were the exact relations between you and Miss Dunbar?」と言って、ダンバー嬢との関係を問うホームズだったが、ギブスンは「Then I can assure you that our relations were entirely and always those of an employer towards a young lady whom he never conversed with, or ever saw, save when she was in the company of his children.」と答え、雇用関係のみを主張する。しかし、ホームズは、ギブスンに対して、「This case is quite sufficiently complicated to start with, without the further difficulty of false information.」と

言って、ギブスンが真実を話していないことを指摘する。

それを聞いたギブスンは激怒して、座っていた椅子から立ち上がると、ホームズに殴りかからんばかりの勢いだった。ホームズに飛びかかることを自制したものの、ギブスンは、足音荒く、ベーカーストリート221Bから立ち去った。ところが、頭を冷やしたのか、暫くして戻って来たギブスンは、今までの傲慢な態度を改めると、ホームズに対して、真実を語るのであった。

「ストランドマガジン」の
1922年2月号 / に3月号掲載された
コナン・ドイル作「ソア橋の謎」の挿絵(その5) -
午後9時に、屋敷近くのソア橋に、グレイス・ダンバー嬢を呼び出したマリア・ギブスンは、
激しい怒りの中、ダンバー嬢に対して、罵声を浴びせかける場面

ギブスンによると、妻マリアに対する愛情が冷めてしまい、冷淡な態度や冷たい仕打ちをとるようになったが、それにもかかわらず、妻の自分に対する燃えるような愛情が変わることはなかった。

そんな中、ダンバー嬢が、子供達の家庭教師として、ハンプシャー州(Hampshire)の屋敷ソアプレイス(Thor Place)へとやって来た。ギブスンはダンバー嬢に心を奪われてしまい、彼女に対して、自分の気持ちを打ち明ける。

ギブスンの話を聞いたダンバー嬢は、屋敷を去ろうとしたが、いろいろと考えた末に、屋敷を去ることを止める。ダンバー嬢は、自分がギブスンに対して強い影響力を有していることが判り、世の中に貢献すべく、彼の莫大な資産を社会奉仕のために使ってもらおうとしたのである。ダンバー嬢は、ギブスンが自分に対して二度と言い寄らないことを条件として、屋敷に残ることにした。

ギブスンとしては、ダンバー嬢が妻マリアを殺害した訳ではなく、自分とダンバー嬢のことを知った妻マリアが、嫉妬と憎しみに駆られて、銃でダンバー嬢を脅そうとしたものの、ダンバー嬢と揉み合う中、銃が暴発して、その弾丸が、ダンバー嬢ではなく、自分にあたったのではないかと推測していた。


「ストランドマガジン)」の
1922年2月号 / に3月号掲載された
コナン・ドイル作「ソア橋の謎」の挿絵(その6) -
ウィンチェスター(Winchester)の留置場に居るダンバー嬢の元を
ホームズ達が訪れる場面
(画面手前に座っているのは、ダンバー嬢で、
画面奥左側から、彼女の弁護士である
ジョイス・カミングス(Joyce Cummings)、
ワトスン、そして、ホームズ)


ギブスンから真実を聞いたホームズは、事件の捜査を引き受けるのであった。


「ストランドマガジン」の
1922年2月号 / に3月号掲載された
コナン・ドイル作「ソア橋の謎」の挿絵(その7) -
ソア橋の上で、ホームズが、ワトスン達に対して、
マリア・ギブスンを撃った銃が事件現場に残っていないトリックを
実際に披露する場面
(画面手前に立っているのが、ワトスンで、
画面奥左側から、ホームズ、そして、コヴェントリー巡査部長)


本作「ソア橋の謎」は、ホームズシリーズ作品の中でも、本格推理小説としての完成度が高く、最も人気がある作品の一つとなっている。

ソア橋の上で、マリア・ギブスンが銃で亡くなったトリックは、非常に有名になり、後に、ファイロ・ヴァンス(Philo Vance)シリーズで有名な米国の推理作家 / 美術評論家であるS・S・ヴァン・ダイン(S. S. Van Dine:1888年ー1939年 本名:ウィラード・ハンティントン・ライト(Willard Huntington Wright))や金田一耕助シリーズ等で有名な日本の推理作家 / 小説家である横溝正史(1902年ー1981年)が、自作品にこのトリックを応用している。


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