大英図書館(British Library)から British Library Crime Classics シリーズの一つとして 2020年に出版された キャロル・カーナック作「妨害されたスキー旅行」(1952年)の表紙 |
エディス・キャロライン・リヴェット・ロラック(Edith Caroline Rivett Lorac:1894年ー1958年)は、英国における探偵小説の黄金期にほぼ該る1930年代初頭から1950年代末期にかけて活躍した英国の女流推理作家である。
彼女は、1894年にロンドンのヘンドン地区(Hendon)に出生。サウスハムステッド高校(South Hampstead High School)を教育を受け、美術工芸中央学校(Central School of Arts and Crafts)を卒業した後、1931年にマクドナルド主任警部(Chief Inspector Macdonald)が登場する「避難所の殺人(The Murder on the Burrows)」で、推理作家としてデビュー。その後、コリンズ社(クライムクラブ)の看板作家となった。
生涯を通じて、彼女は、「E・C・R・ロラック(E. C. R. Lorac)」と「キャロル・カーナック(Carol Carnac)」という2つのペンネームを使い分け、「E・C・R・ロラック」名義では、マクドナルド主任警部シリーズを主とする約50作品を、また、「キャロル・カーナック」名義では、3シリーズ((1) Inspector Ryvet / (2) Chief Inspector Julian Rivers / (3) Inspector Lancing)を含む20を超える作品を執筆している。
なお、本作品「妨害されたスキー旅行(Crossed Skis)」は、1952年に「キャロル・カーナック」名義で発表された(2)リヴァース主席警部シリーズの一つである。
当初、彼女が「E・C・R・ロラック」名義を使ったのは、作者が、女性ではなく、男性と思わせたかったのではないか、また、「E・C・R・ロラック」と「キャロル・カーナック」の2つの名義を使い分けたのは、一つの名義で数多くの作品を世に出すことを避けたかったのではないか、と言われている。
1951年1月1日(月)の昼12時に、ロンドン市内のヴィクトリア駅(Victoria Station)に集合した以下のメンバーが、フランス / スイス経由、オーストリアへのスキー旅行へと出発した。
<女性8名>
(1)ブリジット・マナーズ(Bridget Manners) → 愛称:ビディー(Biddy) / このスキー旅行を企画
(2)ジェーン・ハリントン(Jane Harrington) → ブリジットの友人
(3)フィリッパ・ブランド(Philipa Brand) → 愛称:ピッパ(Pippa) / ウィンチェスター(Winchester)の近くに居住
(4)キャサリン・レイド(Catherine Reid) → 愛称:ケイト(Kate) / ジェーンの友人 / 絵画が趣味
(5)メリエル・パーソンズ(Meriel Parsons) → 絵画が趣味
(6)マーサ・ハリス(Martha Harris) → フランク(後述)の妹
(7)ジリアン・デクスター(Jillian Dexter) → イアン(後述)の妹
(8)ダフニ・メリング(Daphne Melling) → ブリジットの友人
<男性8名>
(9)マルコルム・ペリー(Malcolm Perry) → Sherbury にある学校の教師
(10)ティモシー・グラント(Timothy Grant) → 愛称:ティム(Tim) / パイロット
(11)デリック・コサック(Derrick Cossack) → 海軍大尉
(12)フランク・ハリス(Frank Harris) → 医師 / マーサの兄
(13)ジェラルド・レイン(Gerard Raine) → 医師
(14)ロバート・オハラ(Robert O’Hara) → アイルランド出身 / ダンサー
(15)イアン・デクスター(Ian Dexter) → ケンブリッジ大学卒業 / 以前、陸軍でビルマに駐在 / ジリアンの兄
(16)ネヴィル・ヘルストン(Neville Helston) → このスキー旅行に最後に参加した人物
ブリジット・マナーズがこのスキー旅行を企画した当初、参加メンバーはもう少し限定されていた。ところが、当初参加を表明していたメンバーの数名が、結婚や入院等により、都合がつかなくなったため、当初のメンバーの紹介等に基づき、数名のメンバーが入れ替わった上、参加人数が最終的に16名まで増えたのであった。その結果、スキー旅行に参加したメンバー全員が、お互いに友人や知り合いという状況ではなくなった。
厳密には、パイロットのティモシー・グラントは、他のメンバーと一緒に、ヴィクトリア駅からスキー旅行に出発するのではなく、仕事でスイスのチューリッヒまでフライトするため、そこから単独でオーストリアへと向かい、現地で合流する予定だった。
また、最後に参加したネヴィル・ヘルストンも、他のメンバーとは別に、現地へと向かう予定だったが、「ギリギリで他のメンバーと一緒に現地へと向かえることになり、ヴィクトリア駅の集合になんとか間に合った。」とのことだった。
0 件のコメント:
コメントを投稿