「ストランドマガジン(Strand Magazine)」の 1922年2月号 / 3月号に掲載された コナン・ドイル作「ソア橋の謎」の挿絵(その1) - 米国の元上院議員で、金鉱王のニール・ギブスンの妻であるマリアが、 屋敷近くのソア橋の上で、頭を銃で撃ち抜かれて死亡しているのが、 午後11時頃、猟場の番人によって発見された。 |
サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「ソア橋の謎(The Problem of Thor Bridge)」は、シャーロック・ホームズシリーズの短編小説56作のうち、46番目に発表された作品で、英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1922年2月号 / 3月号に、また、米国では、「ハーツ インターナショナル(Heart's International)」の1922年2月号 / 3月号に掲載された。
また、同作品は、1927年に発行されたホームズシリーズの第5短編集「シャーロック・ホームズの事件簿(The Casebook of Sherlock Holmes)」に収録された。
ある年(ホームズの間では、1900年と言われている)の10月の荒涼とした朝(午前11時)、米国の元上院議員(American Senator)で、金鉱王(Gold King)のニール・ギブスン(Neil Gibson)が、ベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を事件の相談に訪れる。彼は、クラリッジズホテル(Claridge’s Hotel → 2014年12月31日付ブログで紹介済)に宿泊していた。
ギブスンはホームズに対して、「子供の家庭教師で、屋敷に住み込みのグレイス・ダンバー嬢(Miss Grace Dunbar)に、自分の妻マリア・ギブスン(Maria Gibson)を殺害した容疑がかけられている。」と説明し、「ダンバー嬢にかけられている容疑をなんとしても晴らしてほしい。」と依頼する。
実は、ギブスンがホームズを訪問する直前に、彼の屋敷の管理人(manager of his estate)であるマーロウ・ベイツ(Marlow Bates)が姿を見せていた。ベイツは、雇い主であるギブスンに対して、事前の了解を得ないまま、ここに来ており、落ち着きがない様子だった。
ベイツは、ホームズに対して、「ホームズさん、雇い主のニール・ギブスンは、ひどい男です。あっし達の誰に対しても、本当にひどいんです。(Mr. Holmes, he is a villain - an infernal villain.)」と告げる。ベイツによると、使用人達は皆マリアを慕っており、夫であるニール(・ギブスン)自身が妻を大事にしていない、とのことだった。
更に、ベイツは、ホームズに対して、「雇い主のギブスンがどんなことを言ったとしても、そのまま鵜呑みにはしてはいけません。(Don’t take him at his face value.)」と言い放つと、雇い主が現れる前に、慌てて姿を消したのである。
「ストランドマガジン」の 1922年2月号 / に3月号掲載された コナン・ドイル作「ソア橋の謎」の挿絵(その2) - ホームズから「あなたは、真実を話していない。」と指摘された ニール・ギブスンは、彼に対して、激しい怒りを見せた。 |
ギブスンによると、事件自体は、彼が住むハンプシャー州(Hampshire)の屋敷ソアプレイス(Thor Place)付近にあるソア橋(Thor Bridge)の上で発生した。
ある夜遅く(11時)、彼の妻マリアが頭を銃で打ち抜かれて死亡しているのを、猟場の番人(gamekeeper)によって発見されたのである。その現場には凶器の銃は見当たらなかったが、ダンバー嬢の衣装戸棚の底から銃が出てきた。そして、その銃の弾倉は一発だけ空になっていた上に、マリアの頭を打ち抜いた弾丸とその口径が一致したのだ。更に、マリアはダンバー嬢からの手紙を手に握りしめていて、そこには「9時にソア橋の所で - G.ダンバー(I will be at Thor Bridge at nine o’clock - G. Dunbar)」と書かれていたのである。
アマゾンの熱がいつも血の中で騒いでいる位、情熱的なブラジル人の妻マリアは、その容色に衰えをみせていて、ギブスンの妻への愛情は冷めてしまった。その一方で、ギブスンは若く魅力的なダンバー嬢に大きな関心を示していた。そのため、嫉妬深いマリアはダンバー嬢を激しく憎んでいた。つまり、妻マリアが死亡すれば、ダンバー嬢はギブスンの後妻として入ることができるものと考えられていた。
それらの証拠や状況等に基づき、ダンバー嬢はマリア殺害の容疑で逮捕されるに至ったのである。
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