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サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)原作のシャーロック・ホームズシリーズを翻案して、舞台をヴィクトリア朝時代のロンドンから21世紀のロンドンに置き換え、自称「コンサルタント探偵」のシャーロック・ホームズが、同居人かつ相棒であるジョン・ヘイミッシュ・ワトスンと一緒に、スマートフォンやインターネット等の最新機器を駆使して、事件を解決する様を描くTVドラマ「シャーロック(Sherlock)」が2010年7月に英国 BBC1 で放映されてから10周年を記念して、2020年8月18日に英国ロイヤルメール(Royal Mail)から6種類の記念切手が発行された。
それらと一緒に、コナン・ドイル原作のシャーロック・ホームズシリーズについても、4種類の記念切手が発行された。
3番目に紹介するのは、「第二のしみ(The Adventure of the Second Stain)」である。
本作品は、56ある短編小説のうち、37番目に発表された。
英国では、「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1904年12月号に掲載された後、1905年発行の第3短編集「シャーロック・ホームズの帰還(The Return of Sherlock Holmes)」に収録されている。なお、米国では、「コリアーズ ウィクリー(Collier's Weekly)」の1905年1月28日号に掲載された。
秋のある火曜日の朝、英国首相であるベリンガー卿(Lord Bellinger)と欧州問題担当大臣(Secretary for European Affairs)のトレローニー・ホープ(Trelawney Hope)が、ある極秘の用件で、ベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪ねて来る。
彼らの説明によると、ある非常に重要な手紙が入った封筒が盗まれたと言う。問題の封筒は、欧州問題担当大臣の自宅寝室の鏡台に置いてある鍵のかかった書類箱内に保管されていたのだが、今朝、それが無くなっていたのである。首相曰く、この手紙を無事に取り戻せるかどうかによって、欧州全体の平和が大きく左右される、とのことだった。
首相と欧州問題担当大臣の二人が帰ると、ホームズはジョン・ワトスンに対して、「こんな大それたことができるのは、僕が知る限りでは、三人だけで、エドアルド・ルーカス(Eduardo Lucas)がその一人だ。」と話す。ワトスンが「新聞記事によると、エドアルド・ルーカスは昨夜自宅で殺害されたようだ。」と告げると、ホームズは非常に驚くのであった。
ウェストミンスター殺人事件
昨夜、ゴドルフィンストリート16番地において、不可解な事件が発生した。現場は、国会議事堂のヴィクトリアタワーすぐ近く、テムズ河とウェストミンスター大寺院の間にあり、古めかしく、そして、辺りから隔絶された18世紀の家々が建ち並ぶ通りの一つである。この小さいながらも洗練された邸宅に、エドアルド・ルーカス氏はここ数年住んでいた。彼は魅力的な性格をしており、その上、我が国における最も優れたアマチュアのテノール歌手の一人であるという正にその通りの評判によって、彼は社交界では非常に有名であった。ルーカス氏は独身の34歳で、彼の世帯構成は、老家政婦のプリングル夫人と従者のミットンの二人だけだった。家政婦は家の最上階で早めに就寝する習慣であった。また、従者はその晩ハマースミスの友人のところへ出かけて不在だった。よって、午後10時以降、ルーカス氏は家に一人で居たのである。その間に何が起きたのかについては、まだ判っていないが、午後11時45分にバレット巡査がゴドルフィンストリートを巡回した際、16番地の戸口が少し開いているのに気がついた。そこで、彼は扉をノックしたが、何の返事もなかった。正面の部屋に灯りが点いているのが判ったので、彼は廊下を進み、もう一度ノックしたものの、応答がなかった。それかれ、彼はドアを押し開いて、その部屋へ入った。その部屋の内は、手に負えない程乱れた状態で、家具は全て片側に寄せられ、部屋の中央には倒れた椅子が一脚あった。椅子の近くには、その椅子の一本の足をまだ握ったままの状態で、その家の不幸な住民であるルーカス氏が横たわっていたのである。彼は心臓を刺されて、即死だったものと思われる。彼の殺害に使用されたナイフは、湾曲したインドの短剣で、ある壁に飾ってあった東洋の武器の戦利品の一つであった。強盗が犯行の目的ではなかったようだ。何故ならば、その部屋にあった貴重品を持ち去ろうとした様子がなかったからである。エドアルド・ルーカス氏は非常に有名で、人気があったので、彼の乱暴で謎に満ちた死は、各方面の友人達に悲痛な関心と強烈な同情を引き起こすだろう。
記念切手は、エドアルド・ルーカスが殺害された部屋で、シャーロック・ホームズが捜査する場面が描かれている。
ホームズが室内を捜査したところ、ルーカスが倒れていた絨毯に付いていた血のしみが、その下の床板には付いておらず、別の箇所の床板に第二のしみ(The Second Stain)がついていた。
ルーカスが殺害された日、彼の部屋で、一体、何が起きたのだろうか?そして、英国首相と欧州問題担当大臣が必死にその行方を捜している「ある非常に重要な手紙」が入った封筒は、どこへ消えたのか?
この手紙の内容が公表されて、英国を含む欧州全体が大混乱に陥るのを回避すべく、ホームズが極秘裏に捜査を進め、これらの謎を解明するのであった。
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