2020年10月18日日曜日

アガサ・クリスティー作「終わりなき夜に生れつく」<グラフィックノベル版>(Endless Night by Agatha Christie

HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「終わりなき夜に生れつく」の
グラフィックノベル版の表紙
(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)-
終わりなき夜へと鳥が飛び立つ場面が描かれている。


6番目に紹介するアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)による長編作品のグラフィックノベル版は、「終わりなき夜に生れつく(Endless Night)」(1967年)である。

本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第58作目に該っている。


本作品のグラフィックノベル版は、元々、フランス人の作家であるフランソワ・リヴィエール(Francois Riviere:1949年ー)が構成を、そして、ベルギー出身のイラストレーターであるフランク・ルクレルク(Frank Leclercq:1967年ー)が作画を担当して、2003年にフランスの Heupe SARL から「La Nuit qui ne finit pas」というタイトルで出版された後、2008年に英国の HarperCollinsPublishers から英訳版が発行されている。


HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「終わりなき夜に生れつく」の
グラフィックノベル版の裏表紙
(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)


キングストンビショップ村(Kingston Bishop)にある「ジプシーが丘(Gipsy’s Acre)」は、海を臨むことができる美しい眺望の景勝地であったが、そこで以前に起こった不吉な事故によって、キングストンビショップ村の住民達からは、呪われた伝説を持つ土地として、非常に恐れられていた。


キングストンビショップ村にある「ジプシーが丘」において、
マイケル・ロジャース(マイク)とフェニラ・グットマン(エリー)の二人は出会い、恋に落ちる。


ある日、皆に恐れられている「ジプシーが丘」において、

(1)ドライバー等の職業を転々とするその日暮らしの風来坊であるマイケル・ロジャース(Michael Rogersー通称:マイク(Mike))→この物語の語り手

(2)米国の大富豪(石油王)の娘で、裕福な相続人であるフェニラ・グットマン(Fenella Gutemanー通称:エリー(Ellie))

は出会い、会った瞬間に、若い二人は恋に落ちた。

そして、「ジプシーが丘」こそ、自分達の生活のスタート地点として相応しいと考えたのである。


マイクとエリーの二人は、
キングストンビショップ村に住む占い師の老女エスター・リーから
「ジプシーが丘には近づいてはならない。」と警告を受けるが、無視してしまう。


マイクとエリーの二人は、幸いにも、スカンディナヴィア出身で、エリーの世話係であるグレタ・アンダーセン(Greta Andersen)の助けを得て、短い交際期間を経た後、お互いの身分の違いを乗り越え、こっそりと結婚式を挙げた。

マイクとエリーの二人は、「ジプシーが丘」一帯の土地を購入すると、マイクがドライバーとして働いていた頃に知り合った芸術家気質の著名な建築家であるルドルフ・サントニックス(Rudolf Santonix)に対して、荒れた屋敷を取り壊した跡地に二人の夢の邸宅を建ててもらうよう、依頼すると、欧州大陸への新婚旅行へと旅立った。

二人は、キングストンビショップ村に住む占い師の老女エスター・リー(Esther Lee)から、「ジプシーが丘には近づいてはならない。」と強く警告を受けていたが、それを無視してしまったのである。


マイクとエリーの二人は、知り合いの建築家であるルドルフ・サントニックスに依頼して、
「ジプシーが丘」に自分達の夢の邸宅を建ててもらった。


不治の病を患っていて、余命いくばくもないルドルフであったが、マイクとエリーの期待に答えて、二人の夢の邸宅を無事に建て終えた。

新婚旅行から英国へと戻って来たマイクとエリーの二人は、「ジプシー丘」の夢の邸宅に住み始めるが、老女エスター・リーによる警告通り、二人の夢は悪夢へと変わるのであった。


そして、衝撃のラストが待ち構えている。


何者かが、マイクとエリーの二人を「ジプシーが丘」から立ち去らせようとしていた。


イラストレーターであるフランク・ルクレルクによる作画は、「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」のグラフィックノベル版(→2020年9月13日付ブログで紹介済)と同様に、劇画風で、非常にリアルなキャラクターを以って、物語が進行する。

「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版と比べると、全体を通して、コマ割りはかなり大きく、明るいカラーリングであるが、個人的には、アガサ・クリスティーによる原作が有する不穏な雰囲気をうまく伝えていると思う。


ある悲劇が発生する9月17日の朝の場面 - 
画面左側から、グレタ・アンダーセン、マイク、そして、エリー。


ちなみに、タイトルの「終わりなく夜に生れつく(Endless Night)」は、英国の詩人、画家で、銅版画職人でもあったウィリアム・ブレイク(William Blake:1757年ー1827年)による詩「無垢の予兆(Auguries of Innocence)」の一節から採られている。

Every Night and every Morn

Some to Misery are born.

Every Morn and every Night

Some are born to Sweet Delight,

Some are born to Sweet Delight,

Some are born to Endless Night. 


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