2023年5月23日火曜日

シェイクスピアの世界<ジグソーパズル>(The World of Shakespeare )- その6

英国の The Orion Publishing Group Ltd. より、2020年に発売されたジグソーパズル「シェイクスピアの世界(The World of Shakespeare)」には、のイラスト内には、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年 → 2023年5月19日付ブログで紹介済)や彼が生きた時代の人物、彼の劇が上演されたグローブ座、そして、彼が発表した史劇、悲劇や喜劇に登場するキャラクター等が散りばめられているので、前回に続き、順番に紹介していきたい。


今回紹介するのは、ウィリアム・シェイクスピア作の史劇「ヘンリー5世(The Life of Henry the Fifth)」(1599年)である。


グローブ座の右斜め前の広場に置かれた小舞台の上に、
戦いの準備ができたヘンリー5世が描かれている。


史劇「ヘンリー5世」は、ランカスター朝第2代のイングランド王で、同朝の絶頂期を築いたヘンリー5世(Henry V:1387年ー1422年 在位期間:1413年ー1422年)の生涯を描いており、プロローグ、第1幕~第5幕、そして、エピローグから構成されている。特に、1415年10月25日にフランスのアジャンクールにおいて行われた百年戦争(Hundred Years’ War)のアジャンクールの戦い(Battle of Agincourt)前後に、焦点が当てられている。

史劇「ヘンリー5世」は、(1)「リチャード2世(King Richard the Second)」(1595年)、(2)「ヘンリー4世 第1部(The First Part of Henry the Fourth)」(1596年-1597年)および(3)「ヘンリー4世 第2部(The Second Part of Henry the Fourth)」(1598年)に続くヘンリアド(Henriad)4部作の最終作となる。

なお、「ヘンリアド」とは、上記の史劇4部作をひとまとまりの作品群として取り扱う際、ウィリアム・シェイクスピア研究者がよく用いる名称である。


「ヘンリー4世」において、ヘンリー5世は、ランカスター朝第最初のイングランド王であるヘンリー4世(Henry IV:1366年ー1413年 在位期間:1399年ー1413年)の子供として登場し、手に負えない、かつ、自制心に欠ける若き王子として描かれていたが、「ヘンリー5世」では、分別ある王へと成長しており、フランスの征服へと乗り出し、第5幕で、アジャンクールの戦いに勝利したヘンリー5世は、フランス王からフランスの王位継承者として認められる。


テムズ河(River Thames)南岸のウォータールーロード(Waterloo Road)沿いに建つ
ザ・オールド・ヴィック劇場(The Old Vic Theatre)


ザ・オールド・ヴィック劇場において、
1955年に上演されたウィリアム・シェイクスピア作「ヘンリー5世」
(英国のロイヤルメールから発行された記念切手の1枚)

「ヘンリー5世」は、1599年作と考えられており、ウィリアム・シェイクスピアが座付き劇作家として在籍していた劇団「宮内大臣一座」によって、同年に建てられた「グローブ座(Globe Theatre → 2023年5月8日付ブログで紹介済)」で初演されたと伝えられている。

なお、記録として残っている最初の上演は、1605年1月7日に宮廷で行われたものである。


2023年5月22日月曜日

アガサ・クリスティー作「五匹の子豚」<英国 TV ドラマ版>(Five Little Pigs by Agatha Christie )- その1

第50話「五匹の子豚」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 5 の表紙


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「五匹の子豚(Five Little Pigs)」(1942年)の TV ドラマ版が、英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第50話(第9シリーズ)として、2003年12月14日に放映されている。英国の俳優であるサー・デイヴィッド・スーシェ(Sir David Suchet:1946年ー)が、名探偵エルキュール・ポワロを演じている。ちなみに、日本における最初の放映日は、2005年8月25日である。


英国 TV ドラマ版における主な登場人物(エルキュール・ポワロを除く)と出演者は、以下の通り。なお、順番は、エンディングの出演者順。


(1)カロリン・クレイル(Caroline Crale - アミアス・クレイルの妻 / 夫を毒殺した罪で起訴される):Rachel Stirling → なお、回想シーンに登場する少女時代のカロリン・クレイルは、Lottie Unwin が演じている。

(2)アミアス・クレイル(Amyas Crale - 画家で、カロリン・クレイルの夫):Aidan Gillen → なお、回想シーンに登場する少年時代のアミアス・クレイルは、Darien Smith が演じている。

(3)フィリップ・ブレイク(Philip Blake - アミアス・クレイルの親友 /   現在は、株式仲買人):Toby Stephens → なお、回想シーンに登場する少年時代のフィリップ・ブレイクは、Jacek Bilinski が演じている。

(4)メレディス・ブレイク(Meredith Blake - フィリップ・ブレイクの兄 / 現在は、隠居して、薬草の研究をしている):Marc Warren → なお、回想シーンに登場する少年時代のメレディス・ブレイクは、Joel De Temperley が演じている。

(5)ルーシー・クレイル(Lucy Crale - アミアス・クレイルとカロリン・クレイルの娘 / 今回、で、ポワロに事件調査を依頼):Aimee Mullins → 14年前のルーシーは、Melissa Suffield が演じている。

(6)エルサ・グリヤー(Elsa Greer - アミアス・クレイルの絵のモデルで、彼の愛人 / ディティシャム卿夫人(Lady Dittisham)):Julie Cox

(7)セシリア・ウィリアムズ(Cecilia Williams - アンジェラ・ウォレンの家庭教師):Gemma Jones

(8)アンジェラ・ウォレン(Angela Warren - カロリン・クレイルの異母妹 / 現在は、考古学者):Sophie Winkleman → なお、14年前の少女時代のアンジェラ・ウォレンは、Talulah Riley が演じている。

(9)サー・モンタギュー・ディプリーチ(Sir Montague Depleach - 法廷弁護士 / カロリン・クレイル事件において、弁護側を担当):Patrick Malahide

(10)スプリッグス夫人(Mrs. Spriggs - クレイル家の家政婦):Annette Badlnd

(11)裁判官(Judge - カロリン・クレイル事件を担当):Roger Brierley


アガサ・クリスティーの原作に比べると、英国 TV ドラマ版における登場人物には、以下の違いが見受けられる。


<原作>

原作の場合、ポワロに事件の調査を依頼するのは、カーラ・ルマルション(Carla Lemarchant)こと、本名カロリン・クレイル(Caroline Crale)である。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、事件の依頼人の名前が、ルーシー・ルマルションこと、本名ルーシー・クレイルへと変更されている。


<原作>

原作の場合、カーラ・ルマルションには、ジョン・ラッテリー(John Rattery)と言う名前の婚約者が居る。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、ルーシー・ルマルションには、婚約者は居ない。


<原作>

原作の場合、カーラ・ルマルションとしては、犯罪を行う傾向が、母親から、彼女本人を介して、自分の子供達へと遺伝するのではないかと非常に懸念しており、その疑念を払拭するため、ポワロに対して、自分の母親の事件の再調査を依頼している。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、ルーシー・ルマルションは、自分の母親の無実を確信しており、純粋に、自分の母親の無罪を立証するため、ポワロに対して、自分の母親の事件の再調査を依頼している。


<原作>

原作の場合、ポワロは、五匹の子豚達に会いに行く前、サー・モンタギュー・ディプリーチの他に、


*クェンティン・フォッグ(Quentin Fogg - 法廷弁護士 / カロリン・クレイル事件において、検察側を担当)

*ジョージ・メイヒュー(George Mayhew - 事務弁護士 / カロリン・クレイル事件において、弁護側を担当した事務弁護士の息子)

*クレイブ・ジョナサン(Caleb Jonathan - クレイル家の事務弁護士)


とも面談する。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、時間の制約の関係上、ポワロが面談するのは、サー・モンタギュー・ディプリーチだけに留まり、他の3人は登場しない。


2023年5月21日日曜日

コナン・ドイル作「恐怖の谷」<小説版>(The Valley of Fear by Conan Doyle )- その3

国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第3章「バールストンの惨劇(The Tragedy of Birlstone)」
1月6日の夜11時半頃、
サセックス州バールストンのバールストン館に住む
ジョン・ダグラスと思われる男性が、書斎において、
銃身を切り落として短くした散弾銃で、
至近距離から頭を撃ち抜かれて、惨殺される事件が発生する。
顔が滅茶滅茶になっていた被害者は、
寝間着とピンクのガウンを羽織っているだけで、
足には室内スリッパを履いて、
部屋の真ん中に、仰向けに倒れていた。
被害者を除くと、画面左側から、
ジョン・ダグラスの友人であるセシル・ジェイムズ・バーカー、
サセックス州警察のウィルスン巡査部長、
そして、開業医のウッド医師。
死体の胸元辺りに、銃身を切り落として短くした散弾銃が置かれている。
挿絵:フランク・ワイルズ


シャーロック・ホームズ、ジョン・H・ワトスンとスコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部(Inspector Alec MacDonald)の3人が、サセックス州(Sussex)バールストン(Birlstone)へと向かう間、バールストン館(Birlstone House)において発生した事件の経緯について、ワトスンによる筆を介して、語られる。


バールストンは、サセックス州北部の州境にあり、一番近い要所は、ケント州(Kent)との州境を越えて、10-12マイル程、東へと行ったタンブリッジウェルズ(Tunbridge Wells)だった。


バールストンの町から半マイル程離れた、背の高いぶなの林に囲まれた中に、17世紀の初めに建てられたバールストン館が所在していた。

以前は、館の周囲に、二つの堀があったが、外側の堀については、水が抜かれ、家庭菜園(kitchen garden)が営まれ、内側の堀に関しては、まだ残っており、深さは数フィートに過ぎなかったが、幅40フィートの水が、館全体を取り囲んでいた。


相当の間、誰も住んでなかったバールストン館を、ジョン・ダグラス(John Douglas)と言う50歳前後の男性が購入した。

バールストン館は、跳ね橋(drawbridge)によって、外界と接続されていたが、その鎖と巻上げ機が錆び付いて壊れたままだったため、ジョン・ダグラスが、これらを修理した。その結果、跳ね橋は、毎晩上げられ、そして、毎朝降ろされるようになった。つまり、跳ね橋が上げられた後、バールストン館は、所謂、島のような状態となっていたのである。


ジョン・ダグラスには、サセックス州の社交界よりもかなり低い水準の下層社会での生活を経てきたと言う印象があり、当初は、周囲から好奇の目で見られたり、疎遠にされたりしたものの、誰に対しても陽気で親切な彼は、直ぐに隣人達と打ち解けるようになった。

彼は、巨額の資産を持っているようで、米国カリフォルニア州の金鉱で得たと噂される資産を、地元に惜しみなく寄付した。

また、地元の牧師館が火事になった際、消防隊が諦めたにもかかわらず、ジョン・ダグラスは、燃え盛る牧師館の中に飛び込み、牧師を救出して、彼の名声は、更に高まった。


ジョン・ダグラスの妻は、彼よりも20歳程若かったが、夫婦仲は円満で、彼女の評判も、非常に高かった。

彼女は、ロンドンにおいて、男やもめだったジョン・ダグラスと出会った、とのことだった。


ただし、奇妙なことに、ジョン・ダグラスも、彼の妻も、彼の過去にことについては、あまり話したりがらなかった。


バールストン館には、ジョン・ダグラスの友人で、ハムステッド(Hampstead)のヘイルズ荘(Hales Lodge)に住むセシル・ジェイムズ・バーカー(Cecil James Barker)と言う45歳位の男性が、頻繁に出入りしていた。


その他には、執事のエイムズ(Aimes)、家政婦のアレン夫人(Mrs. Allen)と6人の使用人が、バールストン館において、寝起きしていた。


そして、事件は、1月6日の夜に発生した。


午後11時45分、セシル・バーカーが、突然、地元の交番に駆け込んで来たのである。対応したサセックス州警察(Sussex Constabulary)のウィルスン巡査部長(Sergeant Wilson)に対して、彼は「バールストン館において、ジョン・ダグラスが殺害された。(A terrible tragedy had occurred at the Manor House, and John Douglas had been murdered.)」と告げた。


ウィルスン巡査部長は、州警察に一報した後、12時少し過ぎに、事件現場へと到着した。開業医のウッド医師(Dr. Wood)も、遅れて到着した。


玄関に一番近い部屋の真ん中に、男が手足を伸ばし、仰向けに倒れて、死んでいた。

彼は、寝間着の上に、ピンク色のガウンを羽織っただけで、足には、室内用スリッパを履いていた。

凶器は、男の胸の上に置かれており、それは、銃身が切り詰められた散弾銃で、至近距離から発射されたため、頭部がほとんど粉々に吹き飛んであり、判別の仕様がなかった。

死体の身元は不明だったが、状況的に、バールストン館の主人であるジョン・ダグラスであると思われた。


セシル・バーカーによると、銃声を聞いたのは、午後11時半で、事件現場には、何も手を触れていない、とのこと。

また、彼は「跳ね橋は一晩中上がっていた。」と証言したため、ウィルスン巡査部長は、ジョン・ダグラスは自殺したのではないかと考えた。ところが、セシル・バーカーは、部屋のカーテンを脇に引いて、開いた窓を指し示した。窓の桟には、血が付いた足跡が、ランプの灯りに照らし出されたのである。それを見たウィルスン巡査部長は、自殺説を撤回して、ジョン・ダグラスは、何者かに散弾銃で殺害され、その犯人は、殺害後、窓から脱出して、浅い堀を歩いて渡り、何処かへ逃げ去った、と考えざるを得なかった。

ウッド医師は、「バールストン鉄道衝突事件(Birlstone railway smash)以来の惨事だ。」と、身を震わした。


2023年5月20日土曜日

アガサ・クリスティーの世界<ジグソーパズル>(The World of Agatha Christie )- その22

英国の Orion Publishing Group Ltd. から出ている「アガサ・クリスティーの世界(The World of Agatha Christie)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の生涯や彼女が執筆した作品等に関連した90個の手掛かりについて、前回に続き、紹介していきたい。


今回も、アガサ・クリスティーが執筆した作品に関連する手掛かりの紹介となる。


(65)ビールのボトル(beer bottle)


アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の右側にある本棚の一番下の段に、
ビールのボトルが置かれている。

カーラ・ルマルションこと、本名カロリン・クレイルの父親で、

英国の有名な画家であるアミアス・クレイルは、

ビールのボトルではなく、ビルが入ったグラスに投入された毒薬によって、殺害されている。

ビールのボトルは、左側にあるチッピングクレグホーン村の地元紙朝刊「ギャゼット」
(Chipping Cleghorn Gazette → 2023年2月11日付ブログで紹介済)と、
右側にあるセントマーティンズ劇場
(St. Martin's Theatre → 2014年8月10日 / 2015年10月4日付ブログで紹介済)の
看板の間に挟まれている。

本ジグソーパズル内において、アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の右側にある本棚の一番下の段に、ビールのボトルが置かれている。


(66)絵筆(paintbrushes)


アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の右側にある窓の前の床の上に、絵筆が2本置かれている。

これらは、カーラ・ルマルションこと、本名カロリン・クレイルの父親で、

英国の有名な画家であるアミアス・クレイルの商売道具である。

本ジグソーパズル内において、アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の右側にある窓の前の床の上に、絵筆が2本置かれている。


(67)五匹の子豚(five little pigs)


本ジグソーパズル内において、子豚の小さな人形が5つ、いろいろな場所に置かれている。


アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の左側にある本棚の一番上の段に、
一匹目の子豚の人形が置かれている。

アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の左側にある窓の一番上の段に、
二匹目の子豚の人形が置かれている。

画面下にある蓄音機(左側)とソファー(右側)の間にある床の上に、
三匹目の子豚の人形が置かれている。

アガサ・クリスティーが腰掛けている椅子の右側にある窓の前の床の上に、
四匹目の子豚の人形が置かれている

画面右下にある一人掛け用ソファーの上に、
五匹目の子豚の人形が置かれている。


これらから連想されるのは、アガサ・クリスティーが1942年に発表したエルキュール・ポワロシリーズ作品「五匹の子豚(Five Little Pigs)」である。本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第33作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第21作目に該っている。


英国の Harper CollinsPublishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「五匹の子豚」のペーパーバック版の表紙

物語の冒頭、カーラ・ルマルション嬢(Carla Lemarchant)が、ある事件の調査を依頼するために、エルキュール・ポワロの元を訪れる。彼女は、この世で望み得る最高の探偵を必要としていたのだ。


21歳の誕生日を迎えるに際して、現在、カナダのモントリオールで暮らすカーラ・ルマルションこと、本名カロリン・クレイル(Caroline Crale)は、恐ろしい事実を突き付けられることになった。

彼女は、英国の有名な画家であるアミアス・クレイル(Amyas Crale)の娘として、遺産を相続することになったが、16年前、その父親は、彼女と同名の母親カロリン・クレイル(Caroline Crale)によって毒殺されたと言うのだ。その時、彼女は、まだ5歳だった。彼女は、カナダに住む伯父夫妻へと送られ、名前もカロリン・クレイルから現在のカーラ・ルマルションへと変えられたのであった。彼女の母親は、裁判で有罪判決を受けて、終身刑を宣告され、1年後に獄中で死亡していた。


彼女の母親は、自分の娘(彼女)が21歳になった際に読むようにと、手紙を残していた。その手紙は、自分は無実であることを訴える内容だった。手紙を読んだ彼女は、母親が潔白であることに確信を抱いた。

彼女は、ジョン・ラッテリー(John Rattery)と婚約して、結婚を目前に控えていたが、婚約者であるジョンは、時々、自分をどこか疑うような目つきで見てることに気付く。彼女は、夫殺しの女の娘ではないか、と。

彼女としては、16年前の事件が、これからの自分の結婚生活に不吉な影を落とさないためにも、母親の無実をなんとか証明したいと望んでいたのである。


カーラ・ルマルション嬢の話に興味を覚えたポワロは、早速、事件の調査に取りかかる。しかしながら、証拠は、彼女の母親にとって圧倒的に不利な上に、夫を毒殺する動機もあった。ポワロは、事件の重要関係者である5人に会い、事件当時における各自の記憶を辿ることで、事件の糸口を見い出そうとするのだった。


事件の重要関係者である5人は、以下の通り。


(1)フィリップ・ブレイク(Philip Blake)ーアミアス・クレイルの親友で、カロリン・クレイルに振られた過去がある。現在は、株式仲買人をしている。

(2)メレディス・ブレイク(Meredith Blake)ーフィリップの兄で、カロリン・クレイルに秘かに恋愛感情を抱いていた。現在は、隠居して、薬草の研究をしている。

(3)エルサ・ディティシャム(Elsa Dittisham)ー旧姓は、エルサ・グリヤー(Elsa Greer)。事件当時、アミアスの絵のモデルで、彼の愛人でもあった。現在は、ディティシャム卿夫人(Lady Dittisham)となっている。

(4)セシリア・ウィリアムズ(Cecilia Williams)ー事件当時、カロリン・クレイルの異母妹であるアンジェラ・ウォレン(Angela Warren)の家庭教師だった。

(5)アンジェラ・ウォレンーカロリン・クレイルの異母妹。事件当時、クレイル家に同居しており、女癖の悪いアミアスを毛嫌いしていた。赤ん坊の頃、カロリンがカッとなったため、片目を失明。現在は、考古学者をしている。


タイトルの「五匹の子豚」は、マザーグースの童謡(5匹の子豚が登場する数え歌 → 2023年6月2日付ブログで紹介済)に因んでおり、ポワロが訪ねる事件の重要関係者である5人に対して、5つの歌詞が割り当てられている。


この子豚は、市場へ行った。(This little pig went to market.)

この子豚は、家に居た。(This little pig stayed home.)

この子豚は、ローストビーフを食べた。(This little pig had roast beef.)

この子豚は、何も持っていなかった。(This little pig had none.)

この子豚は、「ウィー、ウィー、ウィー」と鳴く。(And this little pig cried, Wee-wee-wee.)

帰り道が分からない。(I can’t find way my home.)


(1)フィリップ・ブレイク: 市場へ行った(Went to Market)

(2)メレディス・ブレイク: 家に居た(Stayed at Home)

(3)エルサ・グリヤー: ローストビーフを食べた(Had Roast Beef)

(4)セシリア・ウィリアムズ: 何も持っていなかった(Had None)

(5)アンジェラ・ウォレン: ウィー、ウィー、ウィーと鳴く(Cried 'Wee Wee Wee')


「市場へ行った」とは、事件後、フィリップ・ブレイクが株式仲買人になったことを、「家に居た」とは、事件後、メレディス・ブレイクが隠居して、薬草の研究をしていることを、「ローストビーフを食べた」とは、アミアス・クレイルの絵のモデルで、彼の愛人でもあったエルサ・グリヤーが、事件後、貴族と結婚して、ディティシャム卿夫人となっていることを、「何も持っていなかった」とは、事件後、セシリア・ウィリアムズが一人寂しく生活していることを、そして、「ウィー、ウィー、ウィーと鳴く」とは、女癖の悪いアミアスを毛嫌いしていたアンジェラ・ウォレンが、事件発生当時、彼に対して、いろいろと悪戯を仕掛けて、彼を閉口させていたことを指すのではないかと思われる。


2023年5月19日金曜日

シェイクスピアの世界<ジグソーパズル>(The World of Shakespeare )- その5

英国の The Orion Publishing Group Ltd. より、2020年に発売されたジグソーパズル「シェイクスピアの世界(The World of Shakespeare)」には、のイラスト内には、イングランドの劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピア(William Shakespeare:1564年ー1616年)や彼が生きた時代の人物、彼の劇が上演されたグローブ座、そして、彼が発表した史劇、悲劇や喜劇に登場するキャラクター等が散りばめられているので、前回に続き、順番に紹介していきたい。


今回紹介するのは、「グローブ座(Globe Theatre → 2023年5月8日付ブログで紹介済)」の関係者である。


<ウィリアム・シェイクスピア>


劇作家 / 詩人であるウィリアム・シェイクスピアが、
グローブ座の屋根の上に立っている。
また、彼は、右手に羽ペンを、そして、左手に原稿を持っている。

ウィリアム・シェイクスピアは、ジョン・シェイクスピア(John Shakespeare)とメアリー・アーデン(Mary Arden:1537年ー1608年)の下、ウォーリック州(Warwickshire)のストラトフォード=アポン=エイヴォン(Stratford-upon-Avon)に出生。

ウィリアム・シェイクスピアの正確な誕生日は、不明であるが、1564年4月26日に洗礼式を受けたことが記録されている。当時、出生証明書は発行されなかったので、これが、ウィリアム・シェイクスピアにかかる最古の公的な記録に該る。洗礼式は、生誕後3日以内に行われるが、当時の通例であったことから、ウィリアム・シェイクスピアの誕生日は、これまで、伝統的に、「1564年4月23日」と見做されてきた。


ナショナルポートレイトギャラリー
(National Portrait Gallery)で販売されている
ウィリアム・シェイクスピアの肖像画の葉書
(Associated with John Taylor
 / 1610年頃 / Oil on canvas
552 mm x 438 mm)


父親のジョン・シェイクスピアは、成功した皮手袋商人で、町長にも選ばれたことがある市会議員でもあった。また、母親のメアリー・アーデンは、名門一族の出身であったため、ウィリアム・シェイクスピアは、非常に裕福な家庭環境の中で育った。


1582年11月29日、ウィリアム・シェイクスピア(当時:18歳)は、26歳のアン・ハサウェイ(Anne Hathway:1555年 / 1556年ー1623年)と結婚。


地下鉄チャリングクロス駅(Charing Cross Tube Station)の
ベーカルーライン(Bakerloo Line)のプラットフォームにあるウィリアム・シェイクスピアの壁画 -
駅の頭上に、ナショナルポートレイトギャラリーが建っている関係上、
肖像画をテーマにした壁画が数多く描かれている。


1585年前後にロンドンへ出て来ると、1592年から新進の劇作家としての活動を開始した。

1613年頃に引退するまでの約20年間に、ウィリアム・シェイクスピアは、四大悲劇と呼ばれている


(1)「ハムレット(Hamlet)」(1600年ー1601年)

(2)「オセロー(Othello)」(1603年ー1604年)

(3)「リア王(King Lear)」(1605年−1606年)

(4)「マクベス(Macbeth)」(1606年)


を初めとして、


(5)「ロミオとジュリエット(Romeo and Juliet)」(1595年ー1596年)

(6)「真夏の夜の夢(A Midsummer Night’s Dream)」(1595年ー1596年)

(7)「ヴェニスの商人(The Merchant of Venice)」(1596年ー1598年)

(8)「ジュリアス・シーザー(Julius Caesar)」(1599年)


等、史劇、悲劇や喜劇の傑作を多く残した。

また、詩作品として、「ソネット集(The Sonnets)」もあり、今日でも、最高の詩篇の一つと見做されている。


ウィリアム・シェイクスピアは、1613年頃に、劇作家から引退して、故郷であるストラトフォード=アポン=エイヴォンへと戻ったものと考えられている。

そして、彼は、1616年4月23日に、52歳で亡くなった。なお、死因は、腐ったニシンから伝線した感染症であるとされている。

なお、ウィリアム・シェイクスピアの誕生日が本当に4月23日であるとすると、彼の命日は、誕生日と同じ日であることになる。


<リチャード・バーベッジ(Richard Burbage:1567年ー1619年)>


ウィリアム・シェイクスピアが座付き劇作家として在籍していた
劇団「宮内大臣一座」の俳優だったリチャード・バーベッジは、
同劇団の活動拠点であったグローブ座やブラックフライアーズ座の経営者でもあった。
本ジグソーパズルにおいて、
リチャード・バーベッジは、
グローブ座の左側にある庭園内に居て、
グローブ座のスタッフから、売上金が入った袋を受け取っている。

リチャード・バーベッジは、1567年1月6日、演劇制作者である父ジェイムズ・バーベッジ(James Burbage:1531年-1597年)と母エレン・ブレインの下、ロンドンに出生。


リチャード・バーベッジは、ウィリアム・シェイクスピアが座付き劇作家として在籍していた劇団「宮内大臣一座」(ステュアート朝初代の君主であるジェイムズ1世(James I:1566年-1625年 在位期間:1603年-1625年)が即位した後、同劇団のパトロンとなったことをキッカケにして、「国王一座(The King’s Men)」と言う名に改称)に所属して、俳優となった。

また、彼は、劇団「宮内大臣一座」の活動拠点であった「グローブ座」や「ブラックフライアーズ座(Blackfriars Theatre)」の経営者でもあった。


なお、リチャード・バーベッジは、1619年3月13日に、ロンドンで亡くなっている。


2023年5月18日木曜日

アガサ・クリスティー作「白昼の悪魔」<英国 TV ドラマ版>(Evil Under the Sun by Agatha Christie )- その3

英国の Harper CollinsPublishers 社から出版されている
アガサ・クリスティー作エルキュール・ポワロシリーズ
「白昼の悪魔」のペーパーバック版表紙


英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第48話(第8シリーズ)として、2001年4月20日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「白昼の悪魔(Evil Under the Sun)」(1941年)の TV ドラマ版の場合、原作対比、以下のような差異が見受けられる。


(8)

<原作>

原作の場合、クリスティーン・レッドファン(Christine Redfern - 元教師で、パトリック・レッドファン(Patrick Redfern)の妻 / 夫の不倫のため、アリーナ・ステュアート・マーシャル(Arlena Stuart Marshall - 美貌の元女優 / 実業家ケネス・マーシャル(Kenneth Marshall)の後妻)を恨んでいる)は、自分が高所恐怖症であることを告白している。

アリーナ・マーシャルが密会に出かけて、殺害された Pixy Cove と言う場所は、海からのアクセスと高い崖からのアクセスに限られていて、高所恐怖症であるクリスティーン・レッドファンが、高い崖を降りて、Pixy Cove へ至ることは困難という判断から、アリーナ・マーシャル殺害の容疑者から、一旦、彼女は外されることになる。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、クリスティーン・レッドファンは、自分が高所恐怖症であることを告白する場面はない。

実際のところ、夫のパトリック・レッドファンとアリーナ・マーシャルの二人が海で戯れている現場を、高台にある道から、クリスティーン・レッドファンが、苦々しい顔をして、見下ろしている場面が挿入され、エルキュール・ポワロと付き添いのアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)の二人が、彼女を目撃している。


(9)

<原作>

原作の場合、Pixy Cove において、アリーナ・マーシャルが殺害された頃、クリスティーン・レッドファンと一緒に、Gull Cove へ出かけたのは、実業家ケネス・マーシャルの娘であるリンダ・マーシャル(Linda Marshall)である。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、クリスティーン・レッドファンと一緒に、Gull Cove へ出かけたのは、実業家ケネス・マーシャルの子供ではあるが、リンダ・マーシャルと言う娘ではなく、ライオネル・マーシャル(Lionel Marshall)と言う息子へ変更されている。


(10)

<原作>

原作の場合、Pixy Cove において、アリーナ・マーシャルが殺害された頃(昼の12時)、ホテルのテニスコートに集合したのは、ケネス・マーシャル、ロザモンド・ダーンリー(Rosamund Darnley - ドレスメーカー / 以前、ケネス・マーシャルと交際していた)、オーデル・C・ガードナー(Odell C. Gardener - 米国人)とクリスティーン・レッドファンの4人で、クリスティーン・レッドファンは、集合時間丁度に到着。そこへ、エミリー・ブルースター(Emily Brewster - スポーツが趣味 / 以前、投資話でアリーナ・マーシャルに損害を負わされたため、彼女を恨んでいる)が、アリーナ・マーシャルが殺されていることを知らせにやって来る。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、オーデル・C・ガードナーが登場しないため、ヘイスティングス大尉が、代わりに、テニスメンバーとなっている。


(11)

<原作>

原作の場合、アリーナ・マーシャルが殺害されたことを受けて、デヴォン州(Devon)警察のコルゲイト警部(Inspector Colgate)が、捜査責任者として、現場へとやって来る。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、お馴染みのジャップ主任警部(Chief Inspector Japp)が、アリーナ・マーシャルの殺人事件が発生した後、スコットランドヤードから派遣されて、捜査担当者となるため、デヴォン州警察のコルゲイト警部は、登場しない。


(12)

<原作>

原作の場合、検死医のニースデン医師(Dr. Neasden)が登場する。

<英国 TV 版>

英国 TV 版の場合、検死医のニースデン医師は、登場しない。


(13)

<原作>

原作の場合、コルゲイト警部の上司として、デヴォン州(Devon)警察の本部長(Chief Constable)であるウェストン大佐(Colonel Weston)が、捜査を指揮する。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、スコットランドヤードからジャップ主任警部が派遣される関係上、登場するものの、ポワロの指示に基づいて、ミス・レモン(Miss Lemon)がケント州(Kent)ブラックリッジ(Blackridge)へ出張して、アリス・コリガン(Alice Corrigan)の殺人事件を調べる際に、駅で彼女を出迎えて、調査を手助けする地元の捜査官へと変更されている。彼の肩書きは、「(デヴォン州)警察本部長」から「(ブラックリッジ警察)主任警部」へと変えられている。また、原作の場合、彼の名前については、言及されていないが、英国 TV 版の場合、「チャールズ(Charles)」と言う名前が与えられている。


(14)

<原作>

原作の場合、物語の途中で、実業家ケネス・マーシャルの娘であるリンダ・マーシャル(Linda Marshall)が、ブードゥー教(voodoo)の呪いで、自分が継母のアリーナ・マーシャルを殺したものと思い、クリスティーン・レッドファンの睡眠薬で、自殺未遂をする。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、実業家ケネス・マーシャルの子供として、リンダ・マーシャルと言う娘ではなく、ライオネル・マーシャル(Lionel Marshall)と言う息子が、代わりに登場するが、原作とは異なり、自殺未遂をする場面はない。

ただし、原作のリンダと同様に、英国 TV 版のライオネル・マーシャルも、継母のアリーナ・マーシャルのことを疎ましく感じており、本土にある図書館から、「Dangerous Chemicals and Poisons」と言うタイトルの本を借り出したため、アリーナ・マーシャル殺害犯人として、一時疑われる。


(15)

<原作>

原作の場合、「スティーヴン・レーン(Stephen Lane - 元牧師)」、「バリー少佐(Major Barry - 退役将校)」と「ホーレス・ブラット(Horace Blatt - ヨットが趣味)」の3人には、あまり大きな役割が与えられていない。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、上記の3人に、かなり大きな役割が与えられている。


・「スティーヴン・レーン」:アリス・コリガンの絞殺死体が発見されるブラックリッジに所在するセントマシュー教会(Church of St. Matthew)の牧師として、物語の冒頭から登場する。また、彼の妻が、教会の信者の一人と駆け落ちして、彼の元から去ってしまったことから、不倫関係に陥る女性に対して、激しい憎悪を抱くようになっている。

・「バリー少佐」:表向きは、ホテルで老後を楽しむ退役将校を装っていたが、実際には、ポワロ達が滞在している Sandy Cove Hotel がある Island of the Lost Souls において、密かに行われているヘロインの密輸取引を調べるべく、スコットランドヤードの薬物取締官として、数ヶ月間にわたる捜査を行っていた。

・「ホーレス・ブラット」:表向きは、ヨットが趣味で、毎日、海へ出ていたが、実際には、ヘロインの密輸取引を行っており、最終的には、仲間の2人組と一緒に、バリー少佐によって、逮捕される。


(16)

<原作>

原作の場合、ケント州ブラックリッジにある森の中において、アリス・コリガンの絞殺死体が発見された際、彼女の殺害犯人として、まず最初に疑われたのは、「夫」であるエドワード・コリガン(Edward Corrigan)である。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、ケント州ブラックリッジにある森の中において、アリス・コリガンの絞殺死体が発見された際、彼女の殺害犯人として、まず最初に疑われたのは、「婚約者」であるエドワード・デヴァレル(Edward Deverell)である。


(17)

<原作>

原作の場合、Gull Cove において、リンダ・マーシャルが海で泳いでいる隙に、写生をしていたクリスティーン・レッドファンは、リンダの腕時計の針を、20分進める。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、Gull Cove において、ライオネル・マーシャルが海で泳いでいる隙に、写生をしていたクリスティーン・レッドファンは、ライオネルの腕時計の針を、15分進める。

クリスティーン・レッドファンが腕時計の針を進めたのが、5分短いのは、後述の通り、原作対比、彼女の犯行手順が異なるためではないかと思われる。


(18)

<原作>

原作の場合、クリスティーン・レッドファンの犯行手順は、以下の通り。

(A)朝食後、リンダ・マーシャルを Gull Cove へ誘う。

(B)リンダと一緒に、Gull Cove へと出かける。

(C)Gull Cove において、リンダが海で泳いでいる隙に、腕時計の針を、20分進める。

(D)海から出て来たリンダに時刻を尋ね、「テニスに遅れる。」と言って、Gull Cove を去る。その際、腕時計の針を、20分元に戻す。

(E)ホテルに戻り、自室において、フェイクタン(fake tan)で、肌の色をアリーナ・マーシャルと同じにして、Pixy Cove へと向かう。その際、自室からフェイクタンの瓶を投げ捨て、それがエミリー・ブルースターに危うく当たりかける。

(F)ホテルを出て、Pixy Cove へと向かう。

(G)Pixy Cove に到着して、顔を麦藁帽子で隠して、海岸に寝そべる。

(H)共犯者である夫のパトリック・レッドファンが、証人役のエミリー・ブルースターを連れて、海岸に到着。パトリック・レッドファンが、エミリー・ブルースターに対して、ホテルへの報告を頼んだ後、ホテルへと戻る。(その間に、パトリック・レッドファンが、洞窟内に隠れていたアリーナ・マーシャルを絞殺)

(I)自室のバスルームで、フェイクタンを洗い落とす。

(J)ホテルのテニスコートに集合。

<英国 TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、クリスティーン・レッドファンの犯行手順は、以下の通り。

(A)午前9時30分:朝食後、リンダ・マーシャルを Gull Cove へ誘う。

(B)自室において、フェイクタン(fake tan)で、肌の色をアリーナ・マーシャルと同じにする。その際、自室からフェイクタンの瓶を投げ捨て、それがエミリー・ブルースターに危うく当たりかける。

(C)午前10時30分:リンダと一緒に、Gull Cove へと出かける。

(D)午前11時30分:Gull Cove において、リンダが海で泳いでいる隙に、腕時計の針を、20分進める(午前11時30分 → 午前11時45分)。

(E)午前11時30分:海から出て来たリンダに時刻を尋ね、「テニスに遅れる。」と言って、Gull Cove を去る。その際、腕時計の針を、20分元に戻す(午前11時45分 → 午前11時30分)。

(F)原作とは異なり、ホテルへではなく、Gull Cove から、直接、Pixy Cove へと向かう。

(G)Pixy Cove に到着して、顔を麦藁帽子で隠して、海岸に寝そべる。

(H)共犯者である夫のパトリック・レッドファンが、証人役のエミリー・ブルースターを連れて、海岸に到着。パトリック・レッドファンが、エミリー・ブルースターに対して、ホテルへの報告を頼んだ後、ホテルへと戻る。(その間に、パトリック・レッドファンが、洞窟内に隠れていたアリーナ・マーシャルを絞殺)

(I)自室のバスルームで、フェイクタンを洗い落とす。

(J)午前12時:ホテルのテニスコートに集合。


個人的には、クリスティーン・レッドファンの犯行手順として、アガサ・クリスティーの原作対比、英国 TV ドラマ版の方が、より合理的であると考える。


事件を解決して、ロンドンへと戻ったポワロは、ヘイスティングス大尉に対して、「ヘイスティングス大尉が投資して、開店したアルゼンチン料理レストラン(名前:El Ranchero)において、食事中、自分が途中で気分が悪くなり、倒れ込んでしまったのは、医者が診断した肥満が原因ではなく、食中毒(food poisoning)が原因であった。」と明かす。更に、ポワロは、「El Ranchero において、食中毒が起きたのは、これで14回目だ。」と付け加える。

ミス・レモンは、「El Ranchero は、衛生当局の指示により、閉店させられた。」と報告したことを受け、ヘイスティングス大尉は、自分の投資が無駄になったことを悟り、ガックリするところで、物語は終わりを迎える。


なお、英国 TV ドラマ版の「白昼の悪魔(Evil Under the Sun)」は、英国の小説家で、推理 / サスペンスドラマの脚本家でもあるアンソニー・ホロヴィッツ(Anthony Horowitz:1955年ー)が脚本を担当している。

彼は、コナン・ドイル財団(Conan Doyle Estate Ltd.)による公認(公式認定)の下、シャーロック・ホームズシリーズの正統な続編として、「絹の家(The House of Silk → 2022年1月29日 / 2月5日 / 2月12日付ブログで紹介済)」と「モリアーティー(Moriarty → 2022年4月2日 / 4月10日 / 4月15日付ブログで紹介済)」を発表している。 


2023年5月17日水曜日

コナン・ドイル作「恐怖の谷」<小説版>(The Valley of Fear by Conan Doyle )- その2

英国で出版された「ストランドマガジン」に掲載された挿絵 -
第1部第2章「シャーロック・ホームズの講義
(Sherlock Holmes Discourses)」
ジェイムズ・モリアーティー教授の組織内に居る
情報提供者のフレッド・ポーロックから受け取った暗号文の内容通り、
スコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部から、
「昨夜、バールストン館に住むジョン・ダグラスと言う男が惨殺された。」
と言う話を聞いたシャーロック・ホームズは、
ジョン・H・ワトスンも伴い、3人で現地へと急行した。
画面左側から、ワトスン、ホームズ、そして、マクドナル警部。
挿絵:フランク・ワイルズ


1880年代の終わりに差し掛かる頃の朝、シャーロック・ホームズは、ホームズの終生のライヴァルで、「犯罪界のナポレオン(Napoleon of crime)」と呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)の組織内に居る情報提供者であるフレッド・ポーロック(Fred Porlock - 偽名)から、数字が羅列された暗号文を受け取った。

ホームズは、年鑑(Almanac)を使って、ポーロックの暗号文を解読すると、「バールストン館のダグラスと言う男に、危険が差し迫っている。」と言う内容だった。


ちょうどそこへ、スコットランドヤードのアレック・マクドナルド警部(Inspector Alec MacDonald)が、ホームズを訪ねて来た。

マクドナルド警部は、テーブルの上に置かれた解読された暗号文の内容を見て、驚きを見せる。何故ならば、「昨夜、サセックス州(Sussex)バールストン(Birlstone)のバールストン館(Birlstone House)に住むジョン・ダグラス(John Douglas)が惨殺された。」と言う連絡を、彼は受けていたからである。


マクドナルド警部がホームズの元にやって来たのは、サセックス州刑事部長(chief Sussex detective)であるホワイト・メイスン(White Mason)からの要請に基づき、ホームズをバールストンへと連れて行くためだった。

マクドナルド警部からの話を聞き、事件に興味を覚えたホームズは、ジョン・H・ワトスンも伴い、3人でバールストンへと向かう訳であるが、その前にホームズとジョン・H・ワトスン / マクドナルド警部の間で交わされる会話から、ジェイムズ・モリアーティー教授にかかる情報が、いろいろと開示されている。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1893年12月号に掲載された挿絵 -
シャーロック・ホームズは、
ジョン・H・ワトスンに対して、
彼の宿敵で、「犯罪界のナポレオン」と呼ばれる
ジェイムズ・モリアーティー教授について語るのであった。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット
(Sidney Edward Paget 1860年 - 1908年)


以下に列挙すると、


・独身(unmarried)

・表向きは、高名な数学教授で、給与は年700ポンド(His chair is worth seven hundred a year.)

・高等学術書「小惑星の力学(The Dynamics of an Astroid)」を著作

・書斎の書き物机の後ろにある壁に、フランスの画家であるジャン=バティスト・グルーズ(Jean-Baptiste Greuze:1725年ー1805年)が描いた「若い女性が、両手に顔を置いて、横目で見ている絵(the picture - a young woman with her head on her hands, peeping at you sideways)」が掛かっている。

・ジャン=バティスト・グルーズによる別の絵画は、オークションにおいて、4万ポンド以上の高値で取引されたことを考えると、彼の絵画を所有しているモリアーティー教授は、非常に金回りが良いと言える。

・モリアーティー教授の弟は、英国西部において、駅長をしている。(His younger brother is a station master in the west of England.)

・マクドナルド警部は、モリアーティー教授の書斎において、彼に直接会ったことがあり、その際、月食(eclipses)についての会話を交わした。会談後、モリアーティー教授は、マクドナルド警部に対して、本を貸している。

・ホームズは、今までに3回、モリアーティー教授の書斎に入ったことがある。そのうちの2回は、別の用件で、ホームズは、モリアーティー教授を待っていたが、モリアーティー教授が来る前に、ホームズは立ち去ってしまった。残りの1回は、ホームズが、モリアーティー教授の書斎に無断で忍び込んで、彼のことを詳細に調べようとした。

・モリアーティー教授は、彼の右腕で、腹心の部下であるセバスチャン・モラン大佐(Colonel Sebastian Moran)に対して、年6000ポンドの報酬を与えている。

・ホームズが調べた限りでは、モリアーティー教授は、6つの銀行口座を保有しているが、実際には、20の銀行口座を持っているものと確信。また、ホームズは、モリアーティー教授の海外資産の大部分は、おそらく、ドイツ銀行(Deutsche Bank)か、クレディ・リヨネ銀行(Credit Lyonnais)にあるものと考えている。


等である。


英国で出版された「ストランドマガジン」
1903年10月号に掲載された挿絵 -
ベイカーストリート221B(221B Baker Street → 
2014年6月22日 / 6月29日付ブログで紹介済)の向かい側に建つ
カムデンハウス(Camden House)から、
ロンドンに帰還したシャーロック・ホームズを狙撃しようと、
ジェイムズ・モリアーティー教授の部下で、彼の右腕でもある
セバスチャン・モラン大佐が、カムデンハウスへとやって来た。
挿絵:シドニー・エドワード・パジェット

(1860年 - 1908年)


上記の通り、ワトスンは、モリアーティー教授について、ホームズによる説明やホームズとマクドナルド警部の会話を会話を聞いているにもかかわらず、「最後の事件(The Final Problem → 2022年5月1日 / 5月8日 / 5月11日付ブログで紹介済)」(事件発生年月:1891年4月24日 - 同年5月4日)の際、1891年4月24日の晩、ワトスンの診療室を突然訪れたホームズとワトスンの間で、


「多分、モリアーティー教授のことを聞いたことはないだろうね?」と、彼(ホームズ)は言った。

「全くないよ。」


‘You have probably never heard of Professor Moriarty?’ Said he.

’Never.’


という会話が交わされていて、「恐怖の谷(The Valley of Fear)」事件と「最後の事件」の間で、不整合が発生している。