2026年1月18日日曜日

エルキュール・ポワロの世界 <ジグソーパズル>(The World of Hercule Poirot )- その20B

英国の HarperCollinsPublishers 社から現在出版されている
アガサ・クリスティー作「三幕の悲劇」の
ペーパーバック版の表紙 -
壁紙と思われるものが、
スティーヴン・バビントン牧師が飲んで急死した
マティーニのカクテルシェイカーの形に切り取られている。


引退して隠遁生活を送る有名な舞台俳優であるサー・チャールズ・カートライト(Sir Charles Cartwight)が住むコーンウォール州(Cornwall)ルーマスの豪邸「カラスの巣」において開催された晩餐会の席上、飲みつけないカクテルを口にした地元のスティーヴン・バビントン牧師(Reverend Stephen Babbington)が急死する。

サー・チャールズ・カートライトの友人で、ハーリーストリート(Harley Street → 2015年4月11日付ブログで紹介済)で開業する有名な精神科医であるサー・バーソロミュー・ストレンジ(Sir Bartholomew Strange)が「バビントン牧師が口にしたカクテルのグラスを分析したが、毒は検出されなかった。」と告げたため、バビントン牧師の死因は、ある種の発作だと考えられたが、サー・チャールズ・カートライトは、殺人を疑い、調査を主張。ところが、調査の結果、何の証拠も出てこなかった。


英国の The Orion Publishing Group Ltd. より2023年に発行された
アガサ・クリスティーをテーマにしたトランプのうち、
2♠️「サタースウェイト氏」


数ヶ月後、モンテカルロに滞在していたサタースウェイト氏(Mr. Satterthwaite - サー・チャールズ・カートライトの芝居に投資したことが縁で、彼と友人関係にあり)は、ある記事を目にして、大変驚いた。

サー・バーソロミュー・ストレンジが、ヨークシャー州(Yorkshire)の自宅において、友人達をもてなしていた際、ポートワインを飲んで死亡したと言う記事だった。数ヶ月前にサー・チャールズ・カートライトの自宅において、地元のスティーヴン・バビントン牧師がカクテルを飲んで死亡したのと、非常に似通った状況である。


サー・バーソロミュー・ストレンジが開催したパーティーに出席していたのは、


(A)ハーマイオニー・リットン・ゴア(Hermione Lytton Gore - 魅力的な美しい女性 / 愛称:エッグ(Egg))

(B)レディー・メアリー・リットン・ゴア(Lady Mary Lytton Gore - 上流階級の未亡人で、ハーマイオニー・リットン・ゴアの母親)

(C)アンジェラ・サトクリフ(Angela Sutcliffe - 有名な美人舞台女優)

(D)フレディー・ダクレス大尉(Captain Freddie Dacres - 元騎手)

(E)シンシア・ダクレス(Cynthia Dacres - ダクレス大尉の妻で、婦人服業界の有名ブランドのオーナー)

(F)ミュリエル・ウィルズ(Muriel Wills - アンソニー・アスター(Anthony Astor)と言う名前で知られる女流劇作家)

(G)オリヴァー・マンダース(Oliver Manders - ジャーナリストで、ハーマイオニー・リットン・ゴアの友人)


と、数ヶ月前にサー・チャールズ・カートライトの自宅において開催された晩餐会に出席した顔ぶれとほぼ同じで、参加していなかったのは、サー・チャールズ・カートライト、サタースウェイト氏とエルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)の3人だけだった。


今度も、サー・バーソロミュー・ストレンジが飲んだポートワインが入ったグラスからは、何ら疑わしいものは検出されなかったが、毒物学者は、彼の死因を「ニコチン中毒」だと特定する。つまり、サー・バーソロミュー・ストレンジの死は、殺人だったことになるのだ。


エルキュール・ポワロは、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。
<筆者撮影>


同じく、モンテカルロに滞在中のポワロは、同地に居合わせたサー・チャールズ・カートライトとサタースウェイト氏から、サー・バーソロミュー・ストレンジの急死の知らせを受けた。

サー・チャールズ・カートライトとサタースウェイト氏の2人は、サー・バーソロミュー・ストレンジの死を調査するために、急遽、モンテカルロから英国へと帰国する。


英国に戻ったサー・チャールズ・カートライトとサタースウェイト氏の2人は、調査の結果、奇妙なことを知る。

サー・バーソロミュー・ストレンジは、パーティーの直前に、7年前から奉公していた執事に対して、2ヶ月間の休暇を与えていたのである。何処からともなく現れたジョン・エリス(John Ellis)が、彼の代わりに、臨時の執事として雇われたのだが、サー・バーソロミュー・ストレンジの急死後、このジョン・エリスは、行方をくらましていた。更に、姿を消したジョン・エリスの部屋から、脅迫状の下書きが発見される。

サー・バーソロミュー・ストレンジの死は、臨時の執事として雇われたジョン・エリスと言う人物による仕業なのか?


サー・バーソロミュー・ストレンジの急死を受けて、警察がスティーヴン・バビントン牧師の死体を掘り起こして調べたところ、彼もニコチン中毒で死亡したことが判明したのだった。


(40)マティーニのグラスが載ったトレイ(tray of martinis)



サー・チャールズ・カートライトの自宅において、地元のスティーヴン・バビントン牧師が急死たした際、マティーニのカクテルだった。


(41)実験器具 (laboratory equipment)



スティーヴン・バビントン牧師やサー・バーソロミュー・ストレンジ等の毒殺には、犯人が蒸留装置を使って、薔薇に噴霧するための殺虫剤から抽出(蒸留)したニコチンが使用された。


なお、英語版と米国版では、犯人の犯行動機と結末が異なっている。


<犯行動機>

(英語版)英国における当時の離婚法が影響。

(米国版)犯人の精神疾患による病的な誇大妄想


<結末>

(英語版)犯人は逃亡するが、ポワロは「逮捕と自殺のいずれかを選ぶしかないから、急いで追う必要はない。」と告げる。

(米国版)犯人は「自分は法律を超越した偉大な存在であり、逮捕される筈がない。」と豪語するが、結局のところ、その場で警察に逮捕される。


2026年1月17日土曜日

ウィリアム・ホガース(William Hogarth)- その1

ナショナルギャラリー(National Gallery)において所蔵 / 展示されている
ウィリアム・ホガース作「自画像」(1745年) 
(Portrait of the Painter and his Pug)
<筆者撮影>

英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第20話(第2シリーズ)かつアガサ・クリスティー生誕100周年記念スペシャルとして、1990年9月16日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「スタイルズ荘の怪事件The Mysterious Affair at Styles → 2023年12月3日 / 12月6日付ブログで紹介済)」(1920年)の TV ドラマ版において、物語の冒頭、第一次世界大戦(1914年ー1918年)中に負傷したアーサー・ヘイスティングス中尉(Lieutenant Arthur Hastings - アガサ・クリスティーの原作では、大尉(Captain)となっている)が彼の旧友であるジョン・キャヴェンディッシュ(John Cavendish)と再会する場面が、セントバーソロミュー病院(St. Bartholomew's Hospital → 2014年6月14日付ブログで紹介済)の北翼(North Wing → 2025年12月15日 / 12月19日 / 12月21日 / 12月22日付ブログで紹介済)にある「ホガースの階段(Hogarth Staircase → 2025年12月15日付ブログで紹介済)」と呼ばれる吹き抜け階段において撮影されている。


下から「ホガースの階段」と呼ばれる吹き抜け階段を見上げたところ -
アーサー・ヘイスティングス中尉と旧友のジョン・キャヴェンティッシュの2人が
上から降りて来る場面が、この角度で撮影されている。
<筆者撮影>


(1)右側の壁:「善きサマリア人(The Good Samaritan)」(1737年)

サマリア人善意で救命行為を行なっている場面が描かれている。


吹き抜け階段の上から見たウィリアム・ホガース作「善きサマリア人」
<筆者撮影>


(2)左側の壁:「ベテスダの池(The Pool of Bethesda)」(1736年)

万病を治す聖なる池において、病人が傷を癒している場面が描かれている。


吹き抜け階段の上から見たウィリアム・ホガース作「ベテスダの池」
<筆者撮影>


これらの壁画を描いたのは、18世紀の英国画壇を代表する国民的画家のウィリアム・ホガース(William Hogarth:1697年ー1764年)である。


ウィリアム・ホガースは、1697年11月10日、ラテン語学校の教師であるリチャード・ホガース(Richard Hogarth)と母アン・ギボンズ(Anne Gibbons)の長男として、ロンドンのセントバーソロミュー病院の直ぐ近くのバーソロミュークローズ(Bartholomew Close)に出生。

彼の下には、1699年生まれのメアリー(Mary)と1701年生まれのアン(Ann)の妹2人が 居る。


ナショナルギャラリーにおいて所蔵 / 展示されている
ウィリアム・ホガース作「エビ売りの少女 (The Shrimp Girl)
」(1740年ー1745年頃) と
「自画像」(1745年)
<筆者撮影>

成長したウィリアム・ホガースは、当初、レスターフィールズ(Leicester Fields)の銀細工師(engraver)を営むエリス・ギャンブル(Ellis Gamble)の弟子として働き始めたが、ロンドン市内の通りにおける人々の生活に興味を持ち、その世相のスケッチも続けた。

同じ頃、父親のリチャード・ホガースは、セントジョンズゲイト(St. John’s Gate)にコーヒーハウス(coffee house)をオープンしたが、経営がうまくいかず、多額の借金を背負った末に、5年間投獄される。これを恥じた息子のウィリアム・ホガースは、父親の投獄のことを決して口ににしなかった。

その後、父親のリチャード・ホガースは1718年に亡くなるが、その前後に、ウィリアム・ホガースは、版画家となる。


ウィリアム・ホガースは、1720年にピーターコート(Peter Court)にあった絵画学校セントマーティンズレーンアカデミー(St. Martin’s Lane Academy)に入学し、1725年にはコヴェントガーデン(Covent Garden)にある別の絵画学校に入り、本格的に絵画を学ぶ。


なお、コヴェントガーデンの絵画学校は、英国の画家であるサー・ジェイムズ・ソーンヒル(Sir James Thornhill:1675年ー1734年)が1724年に開いたもので、ジェイムズ・ソーンヒルは、1718年に宮廷画家に選ばれ、1720年にはハノーヴァー朝(House of Hanover)の初代国王であるジョージ1世(George I:1660年-1727年 在位期間:1714年-1727年)からサーの称号を受けている。

サー・ジェイムズ・ソーンヒルが開いた絵画学校に1725年に入学してきたウィリアム・ホガースは、彼の娘であるジェーン・ソーンヒル(Jane Thornhill:1709年頃ー1789年)と駆け落ちをして、サー・ジェイムズ・ソーンヒルの反対にもかかわらず、1729年3月23日に正式に結婚すると言うことが起きている。


その後、ウィリアム・ホガースは、芸術家、美術品コレクターや美術品鑑定家のクラブであるローズ&クラウンクラブ(Rose and Crown Club)のメンバーとなった。


2026年1月16日金曜日

アガサ・クリスティー 2026年オフィシャルカレンダー(Agatha Christie Official Calendar 2026)- その5

2025年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
「アガサ・クリスティー 2026年オフィシャルカレンダー」のうち、
2026年3月のカレンダーに描かれている
エルキュール・ポワロシリーズの長編第2作目「ゴルフ場の殺人」(1923年)-

フランス、南ランスのメルランヴィルにあるジュネヴィエーヴ荘に住む

ポール・ルノーの死体が発見されたゴルフ場が、画面に描かれている


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の HarperCollinsPublishers 社から、2026年オフィシャルカレンダーが出ているので、前回に引き続き、順番に紹介したい。


2026年カレンダーの場合、カレンダー用に新たに描き起こされたエルキュール・ポワロシリーズのイラストが使用されており、デザインについては、Diahann Sturge-Cambell が、また、イラストに関しては、Mr. Stephen Millership / Central Illustration Agency が担当している。


4番目は、2026年3月のカレンダーに該る「ゴルフ場の殺人(The Murder on the Links)」(1923年)である。


アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第3作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第2作目に該っている。


1923年のある日、エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)は、朝食の席で郵便物に目を通していたが、名探偵としての彼の興味を引くものは皆無で、残念ながら、取るに足らない陳腐な依頼ばかりであった。その結果、次から次へと、届いた手紙は、彼によって放り投げられることとなった。


エルキュール・ポワロは、
英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に発行されている
「エルキュール・ポワロの世界」と言うジグソーパズルの中央に立っている。
<筆者撮影>


その時、ある手紙に、ポワロは手をとめた。それは、フランス、南ランスのメルランヴィル(Merlinville-sur-Mer)にあるジュネヴィエーヴ荘(Villa Genevieve)に住むポール・ルノー(Paul Renauld)からで、「急ぎのお越しを請う!」という内容だった。手紙によると、彼には、命の危険が迫っているようだったが、絶対に明らかにはできない重大な秘密があるため、フランスの地元警察へは行けず、「ベルギー警察に、その人あり。」と言われたポワロに対して、助けを求めてきたのである。


アーサー・ヘイスティングス大尉は、
英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に発行されている
「エルキュール・ポワロの世界」と言うジグソーパズルの中央に立つ
エルキュール・ポワロの左斜め後ろに居る。

<筆者撮影>


ポール・ルノーからの手紙に興味を覚えたポワロは、急いで出発の準備を整えると、友人で、かつ、相棒でもあるアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings → 2025年10月12日付ブログで紹介済)を伴い、英仏海峡を渡り、英国(ドーヴァー(Dover))からフランス(カレー(Calais))へと向かった。


翌日、ポワロとヘイスティングス大尉の二人は、メルランヴィルのジュヌヴィエーヴ荘に到着するが、別荘の門のところで、地元警察の巡査によって、行く手を遮られる。

驚いたことに、ジュヌヴィエーヴ荘の主人で、南米で富を築いた富豪であるポール・ルノーは、今朝、既に殺害されていたのである。残念なことに、ポワロは間に合わなかったのだ。


2007年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「ゴルフ場の殺人」のグラフィックノベル版
(→ 2022年11月4日付ブログで紹介済)の表紙

(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)-
ポール・ルノーの死体が発見されたゴルフ場に因んで、
ゴルフクラブとゴルフボールがメインに描かれている。
また、右上には、エルキュール・ポワロに対して助けを求める
ポール・ルノーの手紙が加えられている。


ポール・ルノーの妻であるエロイーズ・ルノー(Eloise Renauld)によると、前の晩、二人組の暴漢が夫妻の寝室に侵入して来て、ルノー夫人は、縛り上げられた上に、猿轡(さるぐつわ)をかまされた。そして、彼女の夫(ポール・ルノー)は、下着の上にコートを羽織っただけという格好で、犯人達によって、無理やり戸外へと連れ出された、とのこと。

翌日の早朝、彼女の夫は、短剣で背中を刺されて、ジュネヴィエーヴ荘のすぐ隣りにあるゴルフ場(来月オープン予定)に掘られた墓穴に倒れているのを、ゴルフ場の従業員が発見したのである。二人組の暴漢は、わざわざ、墓穴を掘りながらも、ポール・ルノーの死体を埋めずに、そのまま放置するという非常に不可解な行動をとっていた。


2007年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「ゴルフ場の殺人」のグラフィックノベル版の裏表紙
(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)-
ゴルフ場で発見されたポール・ルノーの死体が描かれている。


間に合わなかったものの、英国からフランスまで遥々やって来たポワロは、自らの手で犯人達を見つけ出すことを誓った。幸いなことに、地元警察のリュシアン・ベー署長(Lucien Bex / Commissionary of Police for Merlinville-sur-Mer)は、彼の到着を歓迎してくれたので、早速、ポワロは捜査を開始する。

まもなく、オート予審判事(Monsieur Hautet / Examining Magistrate)による要請に基づき、パリ警察から名刑事としての呼び声が高いジロー刑事(Monsieur Giraud / Detective of the Paris Surete)が現場に派遣されることになり、ポワロとジロー刑事による推理合戦の火蓋が切って落とされることとなった。


2026年1月15日木曜日

ロンドン セントバーソロミュー・ザ・レス教会(The Hospital Church of St. Bartholomew the Less)- その2

セントバーソロミュー・ザ・レス教会内部の礼拝堂(その1)
<筆者撮影>


ロンドンのスミスフィールド(Smithfield)に所在する病院で、ヨーロッパで最も古い歴史を有するセントバーソロミュー病院(St. Bartholomew's Hospital / 正式名:王立セントバーソロミュー病院(The Royal Hospital of St. Bartholomew)/ 略称:バーツ(Barts))の起源は、以下の通り。


セントバーソロミュー病院博物館(St. Bartholomew's Hospital Museum)内にある
病院の歴史に関する説明資料 -
左側が 
セントバーソロミュー修道院(病院)を設立したラヒアで、
右側が彼の夢の中に現れた聖人セントバーソロミュー。
<筆者撮影>


12世紀のイングランド王であるヘンリー1世碩学王(Henry I Beauclerc:1068年頃ー1135年 在位期間:1100年ー1135年)の寵臣ラヒア(Rahere:?ー1143年)は、ローマ巡礼中に、重い病に倒れたが、彼の神への強い祈りが届いたかのように、奇跡的に病から回復し、彼の夢の中に現れたイエス・キリストの使徒の一人である聖人セントバーソロミュー(Saint Bartholomew)のお告げに従って、イングランドに戻った後、1123年、スミスフィールドの地にセントバーソロミュー修道院(Priory of St. Bartholomew - 現在のセントバーソロミュー・ザ・グレイト教会(The Priory Church of St. Bartholomew the Great)とセントバーソロミュー病院の両方を含む)を設立。


セントバーソロミュー・ザ・レス教会の入口
<筆者撮影>


その際、現在のセントバーソロミュー・ザ・レス教会(The Hospital Church of St. Bartholomew the Less)も、同年に建てられている。なお、建設当時、The Chapel of the Holy Cross と呼ばれていた。


ケンブリッジ大学(University of Cambridge)創立800周年を記念して、
英国の児童文学作家 / イラストレーターである
クェンティン・ブレイク(Quentin Blake:1932年ー)が描いた
ヘンリー8世とキングスカレッジ合唱団の絵葉書
<筆者がケンブリッジのフィッツウィリアム博物館(Fitzwilliam Museum
→ 2024年7月20日 / 7月24日付ブログで紹介済)で購入>


テューダー朝(House of Tudor)の第2代イングランド王であるヘンリー8世(Henry VIII:1491年ー1547年 在位期間:1509年ー1547年 → 2024年7月26日付ブログで紹介済)は、男の世継ぎ(嫡子)が生まれていない王妃キャサリン・オブ・アラゴン(Catherine of Aragon:1487年ー1536年)との離婚とキャサリン王妃の侍女メアリー・ブーリン(Mary Boleyn:1499年 / 1500年頃ー1543年)の妹(諸説あり)であるアン・ブーリン(Anne Boleyn:1501年頃ー1536年)との結婚を画策して、ローマのカトリック教会と対立し、1534年に国王至上法(首長令)を発布の上、自らを英国国教会(Church of England)の長とするとともに、カトリック教会から英国国教会の分離を行う。


ナショナルポートレイトギャラリー(National Portrait Gallery)で販売されている
アン・ブーリンの肖像画の葉書
(Unknown artist / 1535 - 1536年頃 / Oil on panel
543 mm x 416 mm) 


ヘンリー8世が宗教改革の一環として実施した修道院解散(Dissolution of the monasteries:1536年ー1539年)政策に基づき、イングランド国内にあった多くの修道院が解散、そして、財産没収の憂き目に遭った。セントバーソロミュー修道院も例外ではなく、同修道院から分離したセントバーソロミュー病院は、貧民救済病院として生き残る。


ヘンリー8世による修道院解散政策に基づき、セントバーソロミュー修道院の敷地は、英国国教会の小教区として再編されて、セントバーソロミュー病院の敷地内にあったセントバーソロミュー・ザ・レス教会が教区教会(parish church)となった。


セントバーソロミュー・ザ・レス教会の塔と西側の外壁は、15世紀に建てられたもので、今も現存する。


セントバーソロミュー・ザ・レス教会の塔を見上げたところ
<筆者撮影>

1793年に、英国の建築家であるジョージ・ダンス(子)(George Dance the Younger:1741年ー1825年)が八角形の天井を有する礼拝堂を建物内部に建設。



ジョージ・ダンス(子)が住んでいた
ガワーストリート91番地(91 Gower Street)
<筆者撮影>


ガワーストリート91番地の建物外壁には、
ジョージ・ダンス(子)がここに住んでいたことを示すブループラークが掛けられている。
<筆者撮影>


この礼拝堂は木製だったため、直ぐに腐蝕が始まったので、英国の建築家であるトマス・ハードウィック(Thomas Hardwick:1752年ー1829年)が石造りの内装に置き換えた。


セントバーソロミュー・ザ・レス教会内部の礼拝堂(その2)
<筆者撮影>


セントバーソロミュー・ザ・レス教会は、第二次世界大戦(1939年ー1945年)中のロンドン大空襲(The Blitz:1940年ー1941年)により被害を蒙ったが、修復工事を経て、1951年に再オープンを迎えた。

同教会は、再オープン前の1950年1月4日に、グレード II(Grde II listed building)の指定を受けている。


セントバーソロミュー・ザ・レス教会内部の礼拝堂(その3)
<筆者撮影>


2015年6月1日に、セントバーソロミュー・ザ・レス教会は、セントバーソロミュー・ザ・グレイト教会と統合して、セントバーソロミュー・ザ・グレイト教会が教区教会となった。その結果、セントバーソロミュー・ザ・レス教会は、現在、教区教会内の Chapel of Ease と言う位置付けになっている。


2026年1月14日水曜日

アガサ・クリスティー 2026年オフィシャルカレンダー(Agatha Christie Official Calendar 2026)- その4

2025年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
「アガサ・クリスティー 2026年オフィシャルカレンダー」のうち、
2026年2月のカレンダーに描かれている
エルキュール・ポワロシリーズの長編第16作目「死との約束」(1938年)-
ヨルダンの古都ペトラにある遺跡等を見物するため、
ボイントン一家が滞在しているキャンプ地のテントが描かれている。
また、画面中央のテントの中には、
現地の警察署長で、ポワロの旧友でもあるカーバリー大佐から
ボイントン夫人殺害事件の捜査を依頼されたエルキュール。ポワロが居る。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の HarperCollinsPublishers 社から、2026年オフィシャルカレンダーが出ているので、前回に引き続き、順番に紹介したい。


2026年カレンダーの場合、カレンダー用に新たに描き起こされたエルキュール・ポワロシリーズのイラストが使用されており、デザインについては、Diahann Sturge-Cambell が、また、イラストに関しては、Mr. Stephen Millership / Central Illustration Agency が担当している。


3番目は、2026年2月のカレンダーに該る「死との約束(Appointment with Death)」(1938年)である。


アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第23作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第16作目に該っている。

また、本作品は、「メソポタミアの殺人(Murder in Mesopotamia → 2020年11月8日付ブログで紹介済)」(1936年)と「ナイルに死す(Death on the Nile → 2020年10月4日付ブログで紹介済)」(1937年)に続く中近東を舞台にした長編第3作目でもある。


エルキュール・ポワロは、
英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に発行されている
「エルキュール・ポワロの世界」と言うジグソーパズルの中央に立っている。
<筆者撮影>


エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)は、休暇を兼ねて、エルサレム(Jerusalem)のキングソロモンホテル(King Solomon Hotel)に滞在していた。エルサレムは、三大宗教にとっての聖地であり、ユダヤ教文化、キリスト教文化、そして、イスラム教文化が入り混じる魅惑の地であった。


「いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ。(You do see, don’t you, that she’s got to be killed ?)」

ポワロがホテルに宿泊した最初の晩、開け放った窓から、夜の静けさをぬって、男女の危険な囁き声をポワロは耳にした。どこへ行こうとも、彼には、犯罪が付いて回るのだろうか?


同じホテルに滞在しているボイントン一家は、行く先々で皆の注目を集めていた。家族の行動は、全て、母親であるボイントン夫人(Mrs. Boynton)中心に回っていて、全ての面において、彼女は家族の行動を監視するとともに、厳しい批判を行っていた。ボイントン夫人は、残酷な仕打ちそのものに非常な喜びを見出す精神的なサディストであり、可哀想なことに、彼女の家族全員がそのはけ口となっていたのである。


ヨルダン(Jordan)の古都ペトラ(Petra)にある遺跡等を見物するため、ボイントン一家が旅行に出かけた際、彼らが滞在しているキャンプ地において、殺人事件が発生する。家族を見物に行かせて、キャンプ地に一人残ったボイントン夫人が、洞窟の入口近くで、多量のジギトキシンを皮下注射器で投与され、殺害されているのが見つかったのである。


現地の警察署長で、ポワロの旧友でもあるカーバリー大佐(Colonel Carbury)は、偶然にも、現地に居合わせたポワロに助力を求める。


エルキュール・ポワロとカーバリー大佐を除く主な登場人物は、以下の通り。


(1)ボイントン夫人: 一家を支配する金持ちの老婦人

(2)レノックス・ボイントン(Lennox Boynton): ボイントン夫人の(義理の)長男

(3)ネイディーン・ボイントン(Nadine Boynton): レノックスの妻

(4)レイモンド・ボイントン(Raymond Boynton): ボイントン夫人の(義理の)次男

(5)キャロル・ボイントン(Carol Boynton): ボイントン夫人の(義理の)長女

(6)ジネヴラ・ボイントン(Ginevra Boynton): ボイントン夫人の次女

(7)ジェファーソン・コープ(Jefferson Cope): ネイディーンの友人(米国人)

(8)サラ・キング(Sarah King): 女医

(9)テオドール・ジェラール(Theodore Gerard): 心理学者(フランス人)

(10)ウェストホルム卿夫人(Lady Westholme): 英国下院議員

(11)アマベル・ピアス(Amabel Pierce): 保母


アガサ・クリスティーの原作は、2部構成になっており、第一部については、ボイントン夫人が殺害されるまでが、そして、第2部においては、ボイントン夫人が殺害された後の顛末が描かれている。

ポワロは、全編にわたって登場する訳ではなく、キングソロモンホテルにおいて男女の危険な囁き声を耳にするプロローグと第2部のみである。

  

2026年1月13日火曜日

アガサ・クリスティー 2026年オフィシャルカレンダー(Agatha Christie Official Calendar 2026)- その3

2025年に英国の HarperCollinsPublishers 社から出版された
「アガサ・クリスティー 2026年オフィシャルカレンダー」のうち、
2026年1月のカレンダーに描かれている
エルキュール・ポワロシリーズの長編第26作目「ヒッコリーロードの殺人」(1955年)


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)の作品を出版している英国の HarperCollinsPublishers 社から、2026年オフィシャルカレンダーが出ているので、前回に引き続き、順番に紹介したい。


2026年カレンダーの場合、カレンダー用に新たに描き起こされたエルキュール・ポワロシリーズのイラストが使用されており、デザインについては、Diahann Sturge-Cambell が、また、イラストに関しては、Mr. Stephen Millership / Central Illustration Agency が担当している。


2番目は、2026年1月のカレンダーに該る「ヒッコリーロードの殺人(Hickory Dickory Dock)」(1955年)である。


アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第47作目に該り、エルキュール・ポワロシリーズの長編のうち、第26作目に該っている。

なお、「ヒッコリーロードの殺人」の場合、米国版のタイトルは、「Hickory, Dickory, Death」が使用されている。


ミス・フェリシティー・レモンは、
英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に発行されている
「エルキュール・ポワロの世界(The World of Hercule Poirot)」と言う
ジグソーパズル
の中央に立つエルキュール・ポワロの左斜め下に居る。

<筆者撮影>


「ヒッコリーロードの殺人」の場合、有能な秘書フェリシティー・レモン(Miss Felicity Lemon → 2025年10月15日付ブログで紹介済)がタイプした手紙に、エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)が誤字を3つも見つけるところから、その物語が始まる。


エルキュール・ポワロは、
英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に発行されている
「エルキュール・ポワロの世界」と言うジグソーパズルの中央に立っている。
<筆者撮影>


ポワロがミス・レモンに尋ねると、彼女のタイプミスの原因が、彼女の姉で、今はヒッコリーロード26番地(26 Hickory Road)にある学生寮で寮母をしている未亡人のハバード夫人(Mrs. Hubbard)から彼女が相談を受けていたたためであることが判明する。


ミス・レモンによると、姉のハバード夫人が寮母を務めている学生寮では、非常に奇妙なことが連続して発生していたのである。

夜会靴、ブレスレット、聴診器、電球、古いフランネルのズボン、チョコレートが入った箱、硼酸の粉末、浴用塩、料理の本やダイヤモンドの指輪(後に、食事中のスープ皿の中から見つかった)等、全く関連性がないものが次々と紛失していた。更に、それに加えて、ズタズタに切り裂かれた絹のスカーフ、切り刻まれたリュックサック、そして、緑のインクで台無しになった学校のノート等が見つかり、盗難行為だけではなく、野蛮かつ不可解な行為も横行していたのだ。


ここのところ、興味を引く事件がなくて退屈気味だったポワロは、これ以上、ミス・レモンのタイプミスが続くことを避けるべく、彼女への手助けを申し出る。

ポワロは、まずハバード夫人に自分の事務所に来てもらい、更に詳しい事情を尋ねるとともに、学生寮に現在住んでいる学生達の情報についても、彼女からヒアリングする。

ポワロの灰色の脳細胞が、一見平和そうに見える学生寮の内で何か良からぬ企みが秘かに進行していると彼に告げる。そこで、ポワロはハバード夫人と再度話をして、学生寮に住む面々に犯罪捜査にかかる講演を行うという名目で、ヒッコリーロード26番地を訪ねることに決めた。


何ら脈絡がないと思えた盗難事件であったが、学生寮内での恐ろしい連続殺人事件へと発展するのであった。


2026年1月12日月曜日

エルキュール・ポワロの世界 <ジグソーパズル>(The World of Hercule Poirot )- その20A

英国の HarperCollinsPublishers 社から以前に出版されていた
アガサ・クリスティー作「三幕の悲劇」ペーパーバック版の表紙 -
コーンウォール州ルーマスの豪邸「カラスの巣」において、
引退した有名な舞台俳優サー・チャールズ・カートライトが開催した晩餐会の席上、
地元のスティーヴン・バビントン牧師が、
飲みつけないカクテルを口にして、急死する。
表紙には、バビントン牧師が口にしたカクテルのグラスが描かれている。

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に発行されている「エルキュール・ポワロの世界(The World of Hercule Poirot)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているエルキュール・ポワロシリーズの登場人物や各作品に関連した112個の手掛かりについて、引き続き、紹介したい。

前回に引き続き、各作品に出てくる登場人物、建物や手掛かり等が、その対象となる。

ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の完成形
<筆者撮影>

(40)マティーニのグラスが載ったトレイ(tray of martinis)


ジグソーパズルの上段中央近くに立つスコットランドヤードのジェイムズ・ハロルド・ジャップ警部(Inspector James Harold Japp → 2025年10月24日付ブログで紹介済)の右手に居るメイドが、マティーニのグラス7つがのったトレイを両手で持っている。

(41)実験器具 (laboratory equipment)


ジグソーパズルの下段の一番左手にあるテーブルの右端に、実験器具が置かれている。

これらから連想されるのは、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1935年に発表した「三幕の悲劇(Three Act Tradegy)」である。

「三幕の悲劇」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第16作目に、そして、エルキュール・ポワロシリーズの長編としては、第9作目に該っている。

なお、「三幕の悲劇」の場合、米国版のタイトルは、「Murder in Three Acts」が使用されている。


「三幕の悲劇」の物語は、第一幕から第三幕までの3章で構成されている。


<第一幕>

引退して隠遁生活を送る有名な舞台俳優であるサー・チャールズ・カートライト(Sir Charles Cartwight)が住むコーンウォール州(Cornwall)ルーマスの豪邸「カラスの巣」において、晩餐会が開催される。

晩餐会に招待された客は、以下の通り。


(A)サー・バーソロミュー・ストレンジ(Sir Bartholomew Strange - サー・チャールズ・カートライトの友人で、ハーリーストリート(Harley Street → 2015年4月11日付ブログで紹介済)で開業する有名な精神科医)

(B)ハーマイオニー・リットン・ゴア(Hermione Lytton Gore - 魅力的な美しい女性 / 愛称:エッグ(Egg))

(C)レディー・メアリー・リットン・ゴア(Lady Mary Lytton Gore - 上流階級の未亡人で、ハーマイオニー・リットン・ゴアの母親)

(D)アンジェラ・サトクリフ(Angela Sutcliffe - 有名な美人舞台女優)

(E)フレディー・ダクレス大尉(Captain Freddie Dacres - 元騎手)

(F)シンシア・ダクレス(Cynthia Dacres - ダクレス大尉の妻で、婦人服業界の有名ブランドのオーナー)

(G)ミュリエル・ウィルズ(Muriel Wills - アンソニー・アスター(Anthony Astor)と言う名前で知られる女流劇作家)

(H)オリヴァー・マンダース(Oliver Manders - ジャーナリストで、ハーマイオニー・リットン・ゴアの友人)

(I)スティーヴン・バビントン牧師(Reverend Stephen Babbington - ルーマス地元の牧師)

(J)マーガレット・バビントン(Margaret Babbington - スティーヴン・バビントン牧師の妻)

(K)サタースウェイト氏(Mr. Satterthwaite - サー・チャールズ・カートライトの芝居に投資したことが縁で、彼と友人関係にあり)


英国の The Orion Publishing Group Ltd. より2023年に発行された
アガサ・クリスティーをテーマにしたトランプのうち、
2♠️「サタースウェイト氏」


(L)エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)


エルキュール・ポワロは、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。
<筆者撮影>


その晩餐会の席上、飲みつけないカクテルを口にしたスティーヴン・バビントン牧師が急死。

サー・バーソロミュー・ストレンジが「バビントン牧師が口にしたカクテルのグラスを分析したが、毒は検出されなかった。」と告げたため、バビントン牧師の死因は、ある種の発作だと考えられたが、サー・チャールズ・カートライトは、殺人を疑い、調査を主張。ところが、調査の結果、何の証拠も出てこなかった。


その後、晩餐会への出席者達はちりぢりとなり、気落ちしたサー・チャールズ・カートライトは、欧州大陸へと向かった。