2025年7月14日月曜日

ロンドン リッツ ロンドン(The Ritz London)- その2



アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1939年に発表したノンシリーズ作品「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」の場合、1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州(Devon)の沖合いに浮かぶ兵隊島(Soldier Island)に、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれるところから、物語が始まる。

彼らを島で迎えた執事と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人(Mrs. Una Nancy Owen)に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。

ピカデリー通りの反対側から、リッツ ロンドンの建物外壁を見上げたところ(その1)

招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。謎の声による告発を聞いたの10人は戦慄する。

招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と召使夫婦が戦慄する場面
(HarperCollins Publishers 社から2009年に出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋)

雇い主のオーウェン氏から執事のトマス・ロジャーズ(Thomas Rogers)宛の手紙は、ロンドン中心部のピカデリー通り(Piccadilly)沿いで、グリーンパーク(Green Park)に面して建つ高級ホテルの「リッツ ロンドン(The Ritz London)」から出されていた。

ピカデリー通りの反対側から、リッツ ロンドンの建物外壁を見上げたところ(その2)

リッツ ロンドンは、スイスの実業家で、「ホテル王(king of hoteliers)」とも呼ばれたセザール・リッツ( Cesar Ritz:1850年ー1918年)による指揮の下に建設され、1906年5月24日に開業。なお、セザール・リッツは、実業家になる前に、サヴォイホテル(Savoy Hotel → 2016年6月12日付ブログで紹介済)のマネージャーを務める等、修行をしていた。


約8年前の1898年6月1日に開業したパリのリッツホテル(Hotel Ritz Paris)の建築を行ったフランスの建築家 / 設計者であるシャルルーフレデリック・ミューズ(Charles-Frederic Mewes:1858年ー1914年)が、リッツ ロンドンの設計 / 建築も引き続き担当し、英国の建築家であるアーサー・ジョーゼフ・ディヴィス(Arthur Joseph Davis:1878年ー1951年)も建築プロジェクトメンバーに新たに加わった。

リッツ ロンドンは、金箔があしらわれたルイ16世調(Louis XVI style)の内外装に加えて、ホテルとしては世界で初めて全客室に電話が装備され、エレベーターや冷暖房が完備される等、開業当時に最新の手法が用いられた。


アーリントンストリート(Arlington Street)沿いのホテル入口と
リッツ ファイン ジュエリー<Ritz Fine Jewellery>(その1)


1906年の開業以降、リッツ ロンドンは、英国の王室、貴族や上流階級、また、英国を訪れる上流階級が好んで滞在するホテルとして、有名になっていく。

特に、第二次世界大戦(1939年ー1945年)中、リッツ ロンドンは、ドイツやイタリアの枢軸国の占領下に置かれた欧州諸国から亡命 / 避難して来た各国の王族の避難先として、頻繁に使用された。

第二次世界大戦後も、リッツ ロンドンは、各国の王族、上流階級や著名人に愛用され、1999年に公開された英国制作のロマンティックコメディー映画「ノッティングヒルの恋人(Notting Hill → 米国の女優であるジュリア・ロバーツ(Julia Roberts:1967年ー )と英国の俳優であるヒュー・グラント(Hugh Grant:1960年ー)が主演)」等の映画の舞台として、撮影に使用されている。


アーリントンストリート沿いのホテル入口と
リッツ ファイン ジュエリー(その2)

1906年の開業後、数度にわたって、ホテルのオーナーは代わっているが、リッツ ロンドンは、ロンドンのみならず、英国を代表する五つ星の超高級ホテルの一つとしてあり続けている。


チャールズ3世がウェールズ公だった際、70歳の誕生日を記念して、
2018年に英国のロイヤルメール(Royal Mail)から発行された記念切手6種類の1枚

チャールズ3世の全名は、チャールズ・フリップ・アーサー・ジョージ(Charles Philip Arthur George)。


英国のウィンザー朝第5代国王として即位したチャールズ3世(King Charles III:1948年ー 在位期間:2022年ー)がまだウェールズ公(Prince of Wales)だった2002年11月、誕生日パーティーがリッツ ロンドンにおいて開催され、彼の両親であるウィンザー朝第4代女王であるエリザベス2世(Elizabeth II:1926年–2022年 / 在位期間:1952年–2022年)とエディンバラ公爵フィリップ(Prince Philip, Duke of Edinburgh:1921年 –2021年)が臨席した。同年に、チャールズ王太子から御用達指名(Royal Warrant)を受けている。


                                             

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