2021年1月31日日曜日

デイヴィッド・ラッフル作「シャーロック・ホームズとライムレジスの恐怖」(Sherlock Holmes and the Lyme Regis Horror by David Ruffle) - その2

英国の Lighting Source UK Ltd. から出版されている
デイヴィッド・ラッフル作
「シャーロック・ホームズとライムレジスの恐怖」の裏表紙 -
元々は2009年に発表されたが、
2011年に増補版が刊行されている。


ジョン・H・ワトスンの旧友であるゴッドフリー・ジェイコブス医師(Dr. Godfrey Jacobs)から話を聞いたシャーロック・ホームズは、ジェイコブス医師に対して、オルラーナ伯爵(Count Orlana)の所在を尋ねる。ジェイコブス医師によると、オルラーナ伯爵はまだライムレジス(Lyme Regis - 化石が見つかる海岸線で有名)に居る、とのこと。オルラーナ伯爵は、現在、ピーター・ラッテンバリー卿(Sir Peter Rattenbury)のヘイマナー館(Haye Manor)に滞在していると言う。ピーター・ラッテンバリー卿は、秋までイタリアに出かけているらしい。ピーター・ラッテンバリー卿は東ヨーロッパ関係の権威なので、その縁でオルラーナ伯爵と知り合ったのではないかと、ジェイコブス医師は推測していた。


ジェイコブス医師は、自分が座っていた椅子をホームズとワトスンの二人に近づけると、驚くべき話を更に続けた。彼によると、積み荷の箱の件があった以降、ここ2-3週間、ライムレジスの至るところで、この地方に伝わる伝説の「赤い目をした黒い犬(Black Dog of Lyme)」が出没し、村人が多数目撃しているのであった。ジェイコブス医師も、その一人である。患者を往診した帰り道、彼が川沿いの道を歩いていると、彼の目の前に真っ赤な目をした巨大な黒い犬が姿を現した。ジェイコブス医師は、今までにこれ程大きな犬を見たことがなく、驚きのあまり、暫く動けないでいた。すると、その黒い犬は向きを変えると、ピーター・ラッテンバリー卿のヘイマナー館の方向へと去って行った。


一体、ライムレジスで何が起きつつあるのだろうか?残念ながら、ホームズとワトスンには、まだ十分な手掛かりがなく、五里霧中であった。


読後の私的評価(満点=5.0)


(1)事件や背景の設定について ☆☆☆半(3.5)

本作品は、アイルランド人の小説家であるブラム・ストーカー(Bram Stoker)こと、エイブラハム・ストーカー(Abraham Stoker:1847年ー1912年)が創造した吸血鬼ドラキュラ(Count Dracula)対ホームズ / ワトスンの話である。ブラム・ストーカーによる原作「吸血鬼ドラキュラ(Draculaー2017年12月24日付ブログと同年12月26日付ブログで紹介済)」(1897年)で、吸血鬼ドラキュラは英国北部の港町ウィットビー(Whitby)に上陸するが、本作品では、何故か、英国南西部のライムレジスが舞台となる。ホームズやワトスンの保養地としては、英国北部ではなく、英国南西部となるのか知れないが、ブラム・ストーカーの原作に合わせて、ウィットビーを舞台にしてほしかった。


(2)物語の展開について ☆☆☆(3.0)

保養を兼ね、ワトスンがホームズを連れて、旧友ジェイコブス医師を訪ねたライムレジスに上陸した吸血鬼ドラキュラが静かにその魔の手を広げるのに並行して、亡き妻メアリー・モースタン(Mary Morstan)に似ているハイドラー夫人(Mrs. Heidler)とワトスンが親密さを増していく様が描かれていく。ホームズ対吸血鬼ドラキュラの戦いについては、何回か、前哨戦のようなものがあって、最終決戦になるという訳ではなく、物語の後半、いきなりクライマックスという感じで、物語全般を通して、やや盛り上がりに欠ける。


(3)ホームズ/ワトスンの活躍について ☆☆☆(3.0)

残念ながら、物語全般を通りして、ホームズの活躍はあまりなく、クライマックスとも言える吸血鬼ドラキュラとの対決においても、パッとしない。亡き妻メアリー・モースタンに似ているハイドラー夫人を守るために、ワトスンがかなり奮闘しており、吸血鬼ドラキュラとの対決場面では、ホームズよりも活躍している位である。


(4)総合評価 ☆☆☆(3.0)

他の作品でも同様であるが、他の作家が創造した吸血鬼ドラキュラ、フランケンシュタインの怪物、ジキル博士 / ハイド氏やオペラ座の怪人エリック等とホームズ / ワトスンを対決させる場合、相当程度うまくストーリーを練らないと、ホームズ / ワトスンだけでなく、相手側もうまく生きてこない。対決相手としてネームバリューはあるものの、正直ベース、ただ出てくるだけで、物語全体が凡庸な感じになってしまう傾向が多分にある。



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