2021年1月2日土曜日

アンソロジー「非常に残忍なクリスマス」(A Very Murderous Christmas)- その2

英国の Profile Books Ltd. が2018年に出版した
「非常に残忍なクリスマス」のペーパーバック版の裏表紙
(Cover design by Ms. Sandra Cunningham / Arcangel)


「非常に残忍なクリスマス(A Very Murderous Christmas)」は、英国の出版社である Profile Books Ltd. が、クリスマスの時期に合わせて、クリスマスを題材にした短編10作品をまとめ、2018年に出版したアンソロジーである。


(6)「狼のように(Loopy)」

作者は、英国の推理作家であるルース・レンデル(Ruth Rendell:1930年ー2015年)で、彼女の短編集である「女ともだち(The New Girlfriend)」(1985年)に収録されている。彼女の作品において、アダム・ダリグリッシュ警部(Inspector Adam Dalgliesh)が、主に探偵役を務める。

本短編では、舞台「赤ずきん(Red Riding Hood)」において、狼を演じている主人公が、結婚に関して、母親と婚約者の間で板挟みになり、クリスマスの週末、遂に事件が発生する。


(7)「モース警部最大の事件(Morse’s Greatest Mystery)」

作者は、英国の推理作家であるコリン・デクスター(Colin Dexter:1930年ー2017年)で、彼の短編集である「モース警部最大の事件(Morse’s Greatest Mystery)」(1987年)に収録されている。彼の作品において、モース警部(Inspector Morse)が、主に探偵役を務める。


本短編では、クリスマスにもかかわらず、自宅のフラットに迎えに来た部下のルイス(Lewis)部長刑事に連れられて、モース警部は、パブで発生したチャリティー用の募金400ポンドが盗難された事件の捜査へと向かう。非常に心温まる話である。


(8)「生姜の壺(The Jar of Ginger)」(1950年)


作者は、英国の推理作家であるグラディス・ミッチェル(Gladys Mitchell:1901年ー1983年)で、彼女の作品において、ブラッドリー夫人シリーズが代表作である。


(9)「ランポール長らく親しい顔(Rampole and the Old Familiar Faces)」(2003年)


作者は、英国の法廷弁護士、劇作家、脚本家で、作家でもあるサー・ジョン・クリフォード・モーティマー(Sir John Clifford Mortimer:1923年ー2009年)で、彼の作品において、法廷弁護士ホレス・ランポール(Horace Rampole)が、主に探偵役を務める。


(10)「サンタの灯台の謎(The Problem of Santa’s Lighthouse)」(1931年)


作者は、米国の推理作家であるエドワード・デンティンジャー・ホック(Edward Dentinger Hoch:1930年ー2008年)で、東京創元社刊「サム・ホーソーンの事件簿Ⅲ」(2004年)に収録されている。彼の作品において、サム・ホーソーン医師(Dr. Sam Hawthorne)シリーズ、怪盗ニック・ヴェルヴェット(Nick Velvet)シリーズ、レオポルド警部(Captain Leopold)シリーズやサイモン・アーク(Simon Ark)が代表作である。


本短編では、ホーソーン医師が、束の間の休暇で訪れたプリマス(Plymouth)近くにあるサンタの灯台(Santa’s Lighthouse)の展望台において、謎の事件が発生する。観光客が帰って、誰も居なくなった灯台の展望台に一人残っていたハリー・クォイ(Harry Quay)が短剣で刺された後、展望台から転落して死亡する。その際、ホーソーン医師は、ハリーの姉であるリサ・クォイ(Lisa Quay)と一緒に、地上に居たが、灯台内には誰も居らず、正に「密室」状態だった。



2つ目の短編である「赤後家の冒険(The Adventure of the Red Widow)」については、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)の息子であるエイドリアン・コナン・ドイル(Adrian Conan Doyle:1910年ー1970年)と、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれている米国の推理作家で、コナン・ドイルの伝記作家でもあるジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)が共著しているだけあって、コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズシリーズの内容がよく研究されていて、コナン・ドイルによる原作かと思う程、正典らしい展開で、非常に良く出来ている。また、物語の最後も、ホームズらしい事件の解決の仕方になっている。


被害者のジョセリン・コープ卿(Lord Jocelyn Cope)は、ダービーシャー州(Derbyshire)にあるアーンスワース城(Arnsworth Castle)において、ギロチンを用いて惨殺されるが、これは、コナン・ドイル原作の短編「ボヘミアの醜聞(A Scandal in Bohemia)」(1891年)において、「The Arnsworth Castle business」として言及されている「語られざる事件」をベースにしている。


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