2021年1月18日月曜日

アガサ・クリスティー作「茶色の服の男」<グラフィックノベル版>(The Man in the Brown Suit by Agatha Christie

HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「茶色の服の男」のグラフィックノベル版の表紙
(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)-

アン・べディングフェルドが乗船する
ケープタウン行きの客船キルモーデンキャッスル号と
その乗船切符が描かれている。


14番目に紹介するアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)によるグラフィックノベル版は、「茶色の服の男(The Man in the Brown Suit)」(1924年)である。

本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第4作目に該る。エルキュール・ポワロシリーズの「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」(1936年)にも登場するレイス大佐(Colonel Race)が初登場する作品でもある。

HarperCollinsPublishers から出ている
アガサ・クリスティー作「茶色の服の男」のグラフィックノベル版の裏表紙
(Cover Design and Illustration by Ms. Nina Tara)-

ケープタウン行きの客船キルモーデンキャッスル号に乗船した
アン・べディングフェルドが携えた旅行用トランクが描かれている。

本作品のグラフィックノベル版は、元々、作家である Hughot が構成を、そして、イラストレーターである Bairi が作画を担当して、2005年にフランスの Heupe SARL から「L’Homme au complet marron」というタイトルで出版された後、2007年に英国の HarperCollinsPublishers から英訳版が発行されている。

職探しをするアン・べディングフェルドが地下鉄ハイドパークコーナー駅のプラットフォームに居た際、
その事件は発生した。

ネアンデルタール人の権威として有名だった考古学者の父親チャールズ・べディングフェルド教授を亡くして、孤児となったアン・べディングフェルド(Anne Beddingfield)は、「仕事が見つかるまで」という約束で、弁護士のフレミング夫妻に引き取られ、ロンドンへとやって来た。

コートから防虫剤の匂いを漂わせて居た男が、線路上に転落して、死亡する。

1月初めのある日、職探しをするアンは、地下鉄ハイドパークコーナー駅(Hyde Park Corner Tube Station)のプラットフォームにおいて電車を待っていると、コートから防虫剤(ナフタリン)の臭いを漂わせていた男が、アンの背後に居た人物に驚き恐れたかのように、後ずさりをして、線路上に転落し、死亡するという事件に遭遇する。

事件現場に、医者を名乗る茶色の服を着た男性が居合わせるが、
彼が死体を検分する様子を見て、
アン・べディングフェルドは、その男性が医者ではないことを見抜く。

事件現場に居合わせた医者を名乗る茶色の服を着た男性が、線路上で死亡した男を検分したが、それを見ていたアンは、医者を名乗る男性が、心臓がある死体の左胸ではなく、右胸に耳を当てていたため、偽者であることを見抜く。医者を名乗る男性は、死体のポケットから紙切れを抜き取ったものの、立ち去る際にうっかり落として行ってしまった。アンが、防虫剤の臭いが染みついたその紙切れを拾い上げると、そこには、「17.122 キルモーデンキャッスル(17.122 Kilmorden Castle)」と、暗号のような内容が記されていた。


医者を名乗る「茶色の服の男」が、死体のポケットから紙切れを抜き取るものの、
立ち去る際に、うっかりと落としてしまう。

事件の翌朝、アンは、新聞記事から、

(1)地下鉄ハイドパークコーナー駅で死亡した男のポケットから、英国下院議員のサー・ユースタス・ぺドラー(Sir Eustace Pedler)の持ち家(現在は空き家)であるマーロウ(Marlow)のミルハウス(Mill House)への紹介状が入っていたこと

(2)ミルハウスの2階の部屋において、外国人と思われる若い女性の絞殺死体が発見されたこと

(3)ミルハウスには、「茶色の服の男」も、内覧に来ていたこと

等を知る。

「茶色の服の男」が落として、アン・べディングフェルドが拾い上げた紙切れには、
「17.122 キルモーデンキャッスル」という暗号のような内容が記されていた。

亡くなった父親とは異なり、絶えず変化と冒険を求め、勇敢で好奇心に溢れているアンは、「茶色の服の男」がうっかり落として行った紙切れに記された暗号のようなものの解読に取り掛かるが、彼女の推理力を以ってしても、困難を極めた。

彼女が、偶然、ロンドン汽船会社の事務所の前を通った際、「キルモーデンキャッスル」が、地名ではなく、アフリカのケープタウンへと向かう客船名であることを悟った。何故ならば、その客船は、「1922年1月17日」に出航することになっていたからである。


英国下院議員のサー・ユースタス・ペドラーの持ち家であるミルハウス(現在、空き家)において、
内覧に来た外国人と思われる若い女性が、何者かに絞殺される。

事件の謎を解明するべく、アンは、父親が遺してくれた全財産を注ぎ込んで、切符を購入すると、単身、南アフリカ行きの客船に飛び乗った。偶然にも、その客船には、サー・ユースタス・ぺドラーも乗船していた。


英国下院議員のサー・ユースタス・ペドラーの持ち家であるミルハウスにおいて、
外国人と思われる若い女性が絞殺され、「茶色の服の男」が容疑者と目されていることを、
アン・べディングフェルドは、新聞記事で知る。

果たして、アン・べディングフェルドの行くてには、何が待っているのか?

「茶色の服の男」が落とした紙切れに記されていた「キルモーデンキャッスル」が、地名ではなく、
英国サザンプトンから南アフリカのケープタウンへと向かう客船であることが判った。


アガサ・クリスティーによる原作は、(1)アン・べディングフェルドの手記と(2)サー・ユースタス・ぺドラーの日記で構成されており、2人の語り手により、物語が進行する冒険ミステリーとなっている。

ただ、グラフィックノベル版では、原作通りの構成は難しいので、主人公であるアンを軸として、物語が展開する形式へ変更されている。また、後々に判明する南アフリカの鉱山王であるサー・ローレンス・アーズリー(Sir Laurence Eardsley)、彼の息子であるジョン・アーズリー(John Eardsley)、そして、ジョンの親友であるハリー・ルーカス(Harry Lucas)に関する昔の経緯が、物語の最初に組み入れられており、ストーリー的には、読者に判りやすい展開になっているものの、視覚的には、「茶色の服を着た男性」の正体が最初から判明してしまうことになっているのが、47ページという分量上、仕方がないものの、やや残念。

更に言うと、作画的には、他の作品のイラストレーター達と比べると、正直ベース、かなり劣っているように見えるのが、難点である。


0 件のコメント:

コメントを投稿