2015年に英国の Cannongate Books 社から出版された ミッチ・カリン作「ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件」の裏表紙 |
読後の私的評価(満点=5.0)
(1)事件や背景の設定について ☆☆(2.0)
時は、第二次世界大戦(1939年ー1945年)が終結して間もない1947年で、前世紀であるヴィクトリア朝時代から活躍してきたシャーロック・ホームズにとって、実質的な「最後の事件」というのが、本作品である。
本作品において、諮問探偵としての最後の事件と人間としての最後の事件の2つが語られるが、正直に言って、両方とも、本来的な意味での「事件」ではなく、絶対的な知力をベースにして生きてきたホームズが、果たしてこのような事件で諮問探偵から引退するようなことになるのか、個人的には、非常に疑問である。
(2)物語の展開について ☆半(1.5)
同時並行的に進行する3つの話は、本来的な意味での「事件」ではない上に、ホームズには既に結果 / 結論が判っていることであり、謎解き的な面白味は、ほとんどない。後に残されているのは、人間としてどう対応するかであるが、正直に言って、これをホームズ物としてテーマにする必要があるのだろうか?
(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ☆半(1.5)
繰り返しになるが、同時並行的に進行する3つの話は、本来であれば、ホームズが取り扱うような事件ではなく、知力で解決できるものでもない。今まで絶対的な知力で事件を解決してきたホームズに対して、「既に結果 / 結論は判っているが、それに人間として対処してほしい。」という命題を投げかけている訳で、「ミスター・ホームズ 名探偵最後の事件」(Mr Holmes)の著者であるミッチ・カリン(Mitch Cullin)が、ホームズを主役にして、何を達成したかったのか、全く不明である。
なお、ホームズの相棒であるジョン・H・ワトスンは、本作品には登場しない。
(4)総合評価 ☆☆(2.0)
今まで絶対的な知力で事件を解決してきたホームズを諮問探偵から引退させる事件、そして、人生の終盤で人間としての苦悩に追い込む事件ー後者の事件については、まだ多少理解できなくもないが、前者の事件の内容が、果たしてホームズを引退へと追いやるに足るだけのインパクトを彼に与えられるのか、甚だ疑問であり、納得性に欠ける。
今まで人間的な関わりを遠ざけてきたホームズに対して、無理やり人間性を直視させようという感じが非常に強く、読んでいて、全く話に乗れなかった。
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