2015年3月22日日曜日

ロンドン ローンロード3番地/ローンロードフラッツ(3 Lawn Road/Lawn Road Flats)

ローンロードフラッツの全景写真

1934年にアガサ・クリスティーは地下鉄ノッティングヒルゲート駅(Notting Hill Gate Tube Station)の近くにあるシェフィールドテラス58番地(58 Sheffield Terrace)の家を購入したが、第二次世界大戦(1939年ー1945年)が勃発し、ロンドンの中心街がドイツ軍による爆撃を受けるようになり、シェフィールドテラス58番地も被弾して、地下室と3階に大きな被害を受けてしまった。そのため、エジプト学者スティーヴン・グランヴィルの勧めににより、アガサ・クリスティーは1941年に彼が住むロンドン北部ハムステッド(Hampstead)のローンロード(Lawn Road)沿いに建つローンロードフラッツ(Lawn Road Flats)の17号室へ移り住んだ。このフラッツは、設計事務所の名前に因んで、「イソコンビルディング(Isokon building)」と呼ばれている。

ローンロードフラッツ正面の壁に架けられている建物名表示

「イソコン(Isokon)」は、1929年にジャック・プリチャード(Jack Pritchard)とモリー・プリチャード(Molly Pritchard)の夫妻が設立した設計事務所で、近代的な建物(家屋やフラット等)の設計や建設を目的としていた。その他に、家具や内装等のデザインや製造も行っていた。設立当初、設計事務所は「ウェルズ・コーテス・アンド・パートナーズ(Wells Coates and Partners)」と呼ばれていたが、ドイツのワイマールに設立されたデザイン学校「バウハウス(Bauhaus)」が起こした近代建築運動に呼応して、1931年に名前を「イソコン」へと変更した。

地下鉄ベルサイズパーク駅に近い方にあるローンロード入口

ハムステッドヒース駅(Hampstead Heath Station)の南東側に南北に延びるローンロードがあり、その中間辺りにローンロードフラッツが建っている。このフラッツは1934年7月9日にオープンし、
・1寝室フラットー22室
・2寝室フラットー4室
・スタジオフラットー3室
・共同キッチン
・スタッフ用区画
・駐車場
を備えていた。1937年には、共同キッチンがバーに改装され、「イソバー(Isobar)」と呼ばれ、ロンドン北部に住む知識階級の間で有名となり、著名人が集い、賑わったとのこと。

夕陽を背に浴びるローンロードフラッツ

残念ながら、設計事務所イソコンは商業的には全く成功しなかった。1939年に第二次世界大戦が勃発したことに伴い、英国への合板(ベニヤ板)の供給が断たれたため、同年家具の製造ができなくなった。
アガサ・クリスティーは、第二次世界大戦が終わり、世間がやや落ち着く1946年までローンロードフラッツに住んでいたようである。

現在、正面右側にある駐車場が
ギャラリースペースに改装されている

2014年7月にローンロードフラッツの駐車場がギャラリースペースに改装され、フラッツの歴史、著名な住人やイソコン等を紹介する常設展を行っている。

ベルサイズウッド・ネーチャーリザーブでは、
数多くの動植物が保護されている

ローンロードフラッツの右隣りには、ベルサイズウッド・ネーチャーリザーブ(Belsize Wood Nature Reserve)と呼ばれる自然保護森への入口があり、ローンロードフラッツの裏手に広がっている。地下鉄ベルサイズパーク駅(Belsize Park Tube Station)方面からの帰り道のショーットカットとして、付近の住民に使用されたりもしている。

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