ロンバードストリート(Lombard Street)から フェンチャーチストリートを望む。 |
サー・アーサー・コナン・ドイル作「花婿失踪事件(A Case of Identity)」において、メアリー・サザーランド(Mary Sutherland)はベーカーストリート221Bのシャーロック・ホームズの元を訪ね、結婚式のため、教会の前に着いた馬車の中から忽然と姿を消した婚約者ホズマー・エンジェル(Hosmer Angel)の行方を捜してほしいと依頼する。ホームズはメアリーに、ホズマーの職場に加え、彼女の義理の父親であるジェイムズ・ウィンディバンク氏(James Windibank)の職場についても尋ねる。ホームズの質問に対して、メアリーは「義理の父は、フェンチャーチストリートにある大きな赤ワイン輸入業者ウェストハウス&マーバンクで、外交員をしています。(He travels for Westhouse & Marbank, the great claret importers of Fenchurch Street.)」と答える。なお、「クラレット」とは、フランスのボルドー(Bordeaux)地方産の赤ワインを指す。
フェンチャーチストリートは、ロンドンの金融街シティー・オブ・ロンドン(City of Londonー別名:1マイル四方(Square Mile))内の東方面にある通りで、メアリーの婚約者ホズマーが出納係として働いている事務所があるレドンホールストリート(Leadenhall Street)と南北に隣り合っていて、最終的には、東の方で一本の通りに合流する。実は、2つの通りが近接していることに、この事件を解くためのヒントがあり、物語の終盤、ホームズは鮮やかに紐解いてみせる。
「20 フェンチャーチストリート」ビルの玄関口 |
フェンチャーチストリートには、「20 フェンチャーチストリート(20 Fenchurch Streetー別名:The Walkie Talkie)」というビルが最近竣工し、シティー・オブ・ロンドン内の新たなランドマークになっている。このビルは、下層階から上層階にいくに従って、湾曲して大きくなっており、所謂、携帯型の双方向無線機の形に似ていることから、上記のような別名で呼ばれているのである。
このビルの設計者は、建築家のラファエル・ヴィノリー(Rafael Vinoly)で、米国のロサンジェルスでも、似たような形のビルを設計している。
「20 フェンチャーチストリート」ビルを真下から見上げると、 下層階から上層階にいくに従って、歪曲していることが判る。 |
また、ビル自体は、英国の不動産開発会社最大手のランドセキュリティーズ(Land Securities)とカナリーワーフグループ(Canary Wharf Group:ロンドン東部にあるカナリーワーフ地区一帯の再開発を行っている不動産開発会社)がジョイントベンチャーで建設。
レドンホールストリートに建つロイズ保険(Lloyd's of London)の本社ビルとは異なり、外観自体はオーソドックスではあるが、「20 フェンチャーチストリート」ビルは、周囲のビルを遥か下に見下ろすくらいの高さでそびえ立っており、そういった意味では、異彩を放っている。
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