2024年10月9日水曜日

服部まゆみ作「一八八八 切り裂きジャック」(1888 Jack the Ripper by Mayumi Hattori)- その1

日本の出版社である東京創元社から、1996年5月に
「クイーンの13」シリーズとして刊行されている
服部まゆみ作「一八八八 切り裂きジャック」のハードバック版の表紙
                              <装画・装幀> 鈴木 一誌
                <フォーマットデザイン> 小倉 敏夫
                              <ロゴマーク> ひらい たかこ


スコットランドのダンディー(Dundee)出身の学者 / 作家であるロバート・J・ハリス(Robert. J. Harris:1955年ー)が2020年に発表した「深紅色の研究(A Study in Crimson → 2024年5月6日 / 5月12日 / 5月16日付ブログで紹介済)」の場合、第二次世界大戦(1939年-1945年)中の1942年、ロンドンを舞台にして、「切り裂きジャック(Jack the Ripper)」の再来と思われる「血塗れジャック(Crimson Jack)」による女性惨殺事件が連続して発生する。


日本においても、「切り裂きジャック」をテーマにした推理小説が刊行されているので、今回紹介したい。

それは、日本の小説家 / 推理作家 / 恋愛小説家 / 銅版画家である服部まゆみ(Mayumi Hattori:1948年ー2007年)が1996年に発表した「一八八八 切り裂きジャック(1888 Jack the Ripper)」である。


服部まゆみは、現代思潮社美学校を卒業した後、版画家 / 画家である加納光於に弟子入りして、銅版画家となる。

1987年に「時のアラベスク」が第7回横溝正史賞大賞を受賞して、作家デビューし、1998年に「この闇と光」が直木賞候補となった。

2007年、肺癌で亡くなっている。


個人的には、第1作目の「時のアラベスク(→ 日本、ベルギーのブルージュと英国のロンドンを物語の舞台にしている)」(1987年)、第2作目の「罪深き緑の夏」(1988年)、そして、今回紹介する「一八八八 切り裂きジャック」(1996年)がお勧めである。

これらの作品の発表時期が、偶然ではあるものの、20世紀末に該っており、かつ、作品の主な舞台となる欧州において、19世紀末に流行した世紀末思想が、特に「時のアラベスク」には、非常に色濃く出ているからである。


「一八八八 切り裂きジャック」へと話を戻す。

19世紀末(1888年)、ベルリンから「霧の都」と呼ばれるロンドンへと、日本人留学生(医学生)である柏木薫はやって来る。

そして、彼は、ロンドン東部のホワイトチャペル地区(Whitechapel)内に所在するロンドン病院(London Hospital)の研修医として、トリーヴス医師の下で、「エレファントマン(Elephant Man)」と呼ばれるジョン・ケアリー・メリックの治療を始める。

時を同じくして、ロンドン病院の周りのホワイトチャペルチャペル地区内で、売春婦を標的にした猟奇的な殺人事件が、連続して発生する。

それは、「切り裂きジャック」と名乗る人物の犯行だった!


2024年10月8日火曜日

ミス・マープルの世界<ジグソーパズル>(The World of Miss Marple )- その22B

ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)が描く
ミス・マープルシリーズの連作短編集「ミス・マープルと十三の謎
<米題:火曜クラブ>」の一場面


ビル・ブラッグ氏によるイラストには、

ミス・マープルの甥であるレイモンド・ウェスト

(Raymond West → 2024年8月12日付ブログで紹介済)が、

彼女の家を借りて、火曜クラブを主催しているシーンが描かれている。

画面手前の左側の事物がミス・マープルであることは間違いないが、

画面手前の右側の人物がレイモンド・ウェストではないだろうか?

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「ミス・マープルと13の謎<米題:火曜クラブ>」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏によるイラストが、

飲み物のグラスの形に切り取られているものが使用されている。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1932年に発表したミス・マープルシリーズ作品の短編集「ミス・マープルと13の謎(The Thirteen Problems)<米題:火曜クラブ( The Tuesday Club Murders)>」の場合、書籍として出版された順番で言うと、長編第1作目に該る「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage → 2022年10月30日 / 10月31日付ブログで紹介済)」が、ミス・マープルの初登場作品である。

ただし、厳密に言うと、「火曜クラブ/ 火曜ナイトクラブ(The Tuesday Night Club)」を皮切りに、1927年12月から雑誌「スケッチ誌」に掲載された短編の方が、ミス・マープルの初登場作品である。「牧師館の殺人」に遅れること、2年後の1932年に、雑誌「スケッチ誌」に連載された短編12作と加筆された1作の合計13作がまとめられて、短編集「ミス・マープルと13の謎<米題:火曜クラブ>」として出版されている。


短編集「ミス・マープルと13の謎<米題:火曜クラブ>」には、13編が収録されているが、後半に該る「第7話 - 第13話」は、以下の通り。


・第7話:「青いゼラニウム / 青いジェラニウム(The Blue Geranium)」(1929年)

・第8話:「二人の老嬢 / お相手役(The Companion)」(1930年)

・第9話:「四人の容疑者(The Four Suspects)」(1930年)

・第10話:「クリスマスの悲劇(A Christmas Tragedy)」(1930年)

・第11話:「毒草 / 死の草(The Herb of Death)」(1930年)

・第12話:「バンガロー事件(The Affair at the Bungalow)」(1930年)

*・第13話:「溺死(Death by Drowning)」 (1931年)


上記の計7話の場合、第7話から第12話については、(第1話ー第6話から)1年後、セントメアリーミード村内にある邸宅ゴシントンホール(Gossington Hall)で開催されたバントリー夫妻の晩餐会が、物語の舞台となる。火曜クラブ(The Tuesday Night Club)のメンバーであるサー・ヘンリー・クリザリングの依頼により、ミス・マープルが客として招かれている。

第13話に関しては、唯一、現在進行形の事件で、当該短編集刊行の際には加えられた作品である。


登場人物は、以下の6名。


*ミス・マープル

*サー・ヘンリー・クリザリング:スコットランドヤード(ロンドン警視庁)の元警視総監

*アーサー・バントリー大佐:退役軍人で、サー・ヘンリー・クリザリングの友人

*ドリー・バントリー:アーサー・バントリー大佐の妻

*ロイド医師(Dr. Lloyd):セントメアリーミード村で唯一の医者で、ミス・マープルの主治医

*ジェイン・ヘリアー(Jane Helier):人気の舞台女優


上記6名の登場人物が、自分だけが真相を知っている迷宮入り事件、もしくは、それに類するものの内容について、他の5名に対して話をする(第7話:アーサー・バントリー大佐 / 第8話:ロイド医師 / 第9話:サー・ヘンリー・クリザリング / 第10話:ミス・マープル / 第11話:ドリー・バントリー / 第12話:ジェイン・ヘリアー)。そして、話を聞いたメンバーが真相を推理するものの、誰も真相に到達できないが、結局のところ、どの事件に関しても、ミス・マープルだけが、謎を解いてしまうと言う展開になっている。


(60)青いゼラニウム(blue geranium)



第7話「青いゼラニウム / 青いジェラニウム」の場合、アーサー・バントリー大佐が語り手を務める。

彼の友人ジョージ・プリチャード(George Pritchard)の妻プリチャード夫人(Mrs. Pritchard)は、気難しい半病人で、彼女を担当する看護師を次から次へと変えていた。ところが、コプリング看護師(Nurse Copling)は、他の看護師とは異なり、プリチャード夫人にうまく対処していた。

プリチャード夫人は占い好きで、夫のジョージ・プリチャードとコプリング看護師の2人がそれぞれの用事で家を空けた際、ザリダ(Zarida)と名乗る占い師を家の中に入れた。占い師のザリダは、プリチャード夫人に対して、「この家には邪気がただよっている。」(中村妙子訳)とか、「青い花はいけない。青い花は不吉だ。あんたにとっては、命取りだ。」(中村妙子訳)と告げた。

その2日後、プリチャード夫人の元に、「わたしは未来を透視した。手おくれでならぬよう、ご用心のこと。満月の晩が危ない。青いサクラソウは警告、青いタチアオイは危険信号、青いゼラニウムは死の象徴…」と言う手紙が届く。

「青いゼラニウムは、この世にありゃしない。」と、夫のジョージ・プリチャードは言い添えたが、プリチャード夫人は、すっかりと怯え上がってしまい、満月の番になると、夫のジョージ・プリチャードとコプリング看護師の2人を自分の部屋へ呼び付けて、壁紙を点検させた。壁紙のタチアオイの花は桃色や赤色で、青色は一輪もなかったが、翌朝になると、プリチャード夫人の枕元の直ぐ上にある壁紙のタチアオイが一輪、青く変色していたのである。

そして、暫くしたある朝、プリチャード夫人が、ベッドの中で亡くなっているのが発見された。何故か、室内には、微かにガスの臭いが漂っている上に、ベッドの上の壁紙の薄赤いゼラニウムの花が一輪、真っ青に変わっていたのだった。


(61)ブリッジゲーム用のトランプ(game of bridge)



第10話「クリスマスの悲劇」の場合、ミス・マープルが語り手を務める。

クリスマス前にケストン鉱泉水治療院(Keston Spa Hydro)を訪れたミス・マープルは、そこで見かけたサンダース夫妻(ジャック+グラディス - Jack and Gladys Sanders)の様子を観察した結果、夫のジャックが妻のグラディスを殺害する計画を立てていると予見した。

ケストン鉱泉水治療院には、何か妙に不気味な雰囲気が漂よっていて、ポーターのジョージ(George)が気管支炎から肺炎を併発して亡くなり、更に、メイドの一人が指の傷から破傷風に罹り亡くなったのである。

ある日の晩、グラディス・サンダースは、友人のモーティマー夫妻と一緒に、ブリッジをして過ごした後、ケストン鉱泉水治療院へと戻って来たが、妻へのクリスマスプレゼントの件で、ラウンジに居るミス・マープルとミス・トロロプのところへ相談に訪れたジャック・サンダースが、2人を伴って、部屋へ行くと、グラディス・サンダースが床にうつ伏せに倒れて死んでいたのである。彼女の頭の脇には、凶器の砂を詰めた靴下が落ちていた。

ミス・マープルの予想通り、グラディス・サンダースが殺されたが、犯人と目されるジャック・サンダースには、犯行時刻のアリバイが、何故かあったのだ。


(62)キツネノテブクロ(foxglove)



第11話「毒草 / 死の草」の場合、ドリー・バントリーが語り手を務める。

バントリー夫妻は、クロッダラムコート(Clodderham Court)に住むサー・アンブローズ・バーシー(Sir Ambrose Bercy)の元に滞在していた。

ある日の晩餐の料理の鴨の中への詰め物として、サージ(Sage)が必要となったが、誰かが手違いから、ジギタリス(digitalis)が含まれるキツネノテブクロの葉を、セージに混ぜて、沢山摘んでしまったのだ。

その結果、晩餐に出席したみんながひどい中毒を起こして、不幸にも、サー・アンブローズ・バーシーが後見人となっていたシルヴィア・キーン(Sylvia Keene)が死亡しまう。死因は、サージと一緒に、鴨の中に紛れ込んだキツネノテブクロの葉に含まれるジギタリスだと判明したのである。


2024年10月7日月曜日

ミス・マープルの世界<ジグソーパズル>(The World of Miss Marple )- その22A

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2024年に発行されている「ミス・マープルの世界(The World of Miss Marple)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズの登場人物や各作品に関連した68個の手掛かりについて、前回に引き続き、順番に紹介していきたい。


今回も、ミス・マープルが登場する作品に関連する手掛かりの紹介となる。


(60)青いゼラニウム(blue geranium)



青いゼラニウムが、ジズソーパズルの中央のやや下に居るジェイスン・ラフィール(Jason Rafiel → 2024年8月14日付ブログで紹介済)が座るテラス用の椅子の背後にある花壇内で、フロリバンダ(floribunda roses:薔薇の1品種 - polyantha と tea rose の交配種で、大輪 → 2024年9月26日 / 9月30日付ブログで紹介済)の左側に咲いている。


(61)ブリッジゲーム用のトランプ(game of bridge)



ブリッジゲーム用のトランプが、ジズソーパズルの左上に立つスコットランドヤード(ロンドン警視庁)の元警視総監であるサー・ヘンリー・クリザリング(Sir Henry Clithering  → 2024年8月20日付ブログで紹介済)の背後にあるテーブルの真ん中に置かれている。


(62)キツネノテブクロ(foxglove)



キツネノテブクロが、ジズソーパズルの左下に立つドリー・バントリー(Mrs. Dolly Bantry → 2024年8月14日付ブログで紹介済)と夫のアーサー・バントリー大佐(Colonel Arthur Bantry → 2024年8月14日付ブログで紹介済)の背後にある花壇内に咲いている。


これらから連想されるのは、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1932年に発表したミス・マープルシリーズ作品の短編集「ミス・マープルと13の謎(The Thirteen Problems)<米題:火曜クラブ( The Tuesday Club Murders)>」である。

「ミス・マープルと13の謎<米題:火曜クラブ>」は、アガサ・クリスティーによる4番目の短編集で、ミス・マープルが登場する連作短編13作が収録されているが、今回は、短編集の後半に該る「第7話 - 第13話」が対象となる。


ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)が描く
ミス・マープルシリーズの連作短編集「ミス・マープルと十三の謎
<米題:火曜クラブ>」の一場面


ビル・ブラッグ氏によるイラストには、

ミス・マープルの甥であるレイモンド・ウェスト

(Raymond West → 2024年8月12日付ブログで紹介済)が、

彼女の家を借りて、火曜クラブを主催しているシーンが描かれている。

画面手前の左側の事物がミス・マープルであることは間違いないが、

画面手前の右側の人物がレイモンド・ウェストではないだろうか?

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「ミス・マープルと13の謎<米題:火曜クラブ>」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏によるイラストが、

飲み物のグラスの形に切り取られているものが使用されている。


2024年10月3日木曜日

ミス・マープルの世界<ジグソーパズル>(The World of Miss Marple )- その21B

ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)が描く
ミス・マープルシリーズの連作短編集「ミス・マープルと十三の謎
<米題:火曜クラブ>」の一場面


ビル・ブラッグ氏によるイラストには、

ミス・マープルの甥であるレイモンド・ウェスト

(Raymond West → 2024年8月12日付ブログで紹介済)が、

彼女の家を借りて、火曜クラブを主催しているシーンが描かれている。

画面手前の左側の事物がミス・マープルであることは間違いないが、

画面手前の右側の人物がレイモンド・ウェストではないだろうか?

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「ミス・マープルと13の謎<米題:火曜クラブ>」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏によるイラストが、

飲み物のグラスの形に切り取られているものが使用されている。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1932年に発表したミス・マープルシリーズ作品の短編集「ミス・マープルと13の謎(The Thirteen Problems)<米題:火曜クラブ( The Tuesday Club Murders)>」の場合、書籍として出版された順番で言うと、長編第1作目に該る「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage → 2022年10月30日 / 10月31日付ブログで紹介済)」が、ミス・マープルの初登場作品である。

ただし、厳密に言うと、「火曜クラブ/ 火曜ナイトクラブ(The Tuesday Night Club)」を皮切りに、1927年12月から雑誌「スケッチ誌」に掲載された短編の方が、ミス・マープルの初登場作品である。「牧師館の殺人」に遅れること、2年後の1932年に、雑誌「スケッチ誌」に連載された短編12作と加筆された1作の合計13作がまとめられて、短編集「ミス・マープルと13の謎<米題:火曜クラブ>」として出版されている。


短編集「ミス・マープルと13の謎<米題:火曜クラブ>」には、13編が収録されているが、前半に該る「第1話 - 第6話」は、以下の通り。


・第1話「火曜クラブ / 火曜ナイトクラブ(The Tuesday Night Club)」 → 実質的には、本編が、ミス・マープルの初登場作品である。

・第2話「アスタルテの祠 / アスターテの祠(The Idol House of Astarte)」

・第3話「金塊事件 / 金塊(Ingots of Gold)」

・第4話「舗道の血痕 / 血に染まった敷石(The Bloodstained Pavement)」

・第5話「動機対機会(Motive v Opportunity)」

・第6話「聖ペテロの指のあと / 聖ペテロの指の跡(The Thumb Mark of St Peter)」


上記の計6話の場合、セントメアリーミード村(St. Mary Mead)にあるミス・マープルの家を、彼女の甥であるレイモンド・ウェスト(Raymond West → 2024年8月12日付ブログで紹介済)が借りて主催する火曜クラブが、物語の舞台となる。


登場人物は、以下の6名。


*ミス・マープル

*レイモンド・ウェスト:作家で、火曜クラブの発案者

*ジョイス・ランプリエール(Joyce Lempriere):女流画家

*サー・ヘンリー・クリザリング(Sir Henry Clithering → 2024年8月20日付ブログで紹介済):スコットランドヤード(ロンドン警視庁)の元警視総監

*ペンダー博士(Dr. Pender):教区の老牧師

*ペサリック氏(Mr. Petherick):弁護士


上記6名の登場人物が、自分だけが真相を知っている迷宮入り事件、もしくは、それに類するものの内容について、他の5名に対して話をする(第1話:サー・ヘンリー・クリザリング / 第2話:ペンダー博士 / 第3話:レイモンド・ウェスト / 第4話:ジョイス・ランプリエール / 第5話:ペサリック氏 / 第6話:ミス・マープル)。そして、話を聞いたメンバーが真相を推理するものの、誰も真相に到達できないが、結局のところ、どの事件に関しても、ミス・マープルだけが、謎を解いてしまうと言う展開になっている。


(59)トライフル(trifle)



第1話「火曜クラブ / 火曜ナイトクラブ」の場合、ジョーンズ夫妻(Mr. and Mrs. Jones)と夫人のコンパニオン(家政婦を兼ねた話相手)であるミス・クラーク(Miss Clark)の3人が、夕食後に苦しみだし、その後、ジョーンズ夫人が亡くなると言う事件が対象となる。

当初、ジョーンズ夫人の死因は食中毒によるものと思われたが、検死の結果、夫人の体内から、砒素が検出されて、殺人事件へと発展するのである。

夕食に供されたのは、缶詰のエビとサラダ、トライフル、パンとチーズだけであったが、サー・ヘンリー・クリザリングから話を聞いたミス・マープルは、トライフルにのせる飾り砂糖の中に、砒素が混入されたことを見抜く。


(60)アスタルテの像(statue of Astarte)



第2話「アスタルテの祠 / アスターテの祠」の場合、ダートムーア(Dartmoor)の外れにある不吉な噂が付き纏う屋敷を購入したサー・リチャード・ヘイドン(Sir Richard Haydon)の従兄弟であるエリオット・ヘイドン(Elliot Haydon)が、いわく付きのアスタルテの祠(grove of Astarte)において、サー・リチャード・ヘイドンや他の招待客達の面前で、何者かに刺殺されると言う事件が対象となる。

原作によると、アスタルテは、フェニキア人が信仰した月の女神で、三日月形の角を生やして、ライオンに跨がっていると記述されているが、残念ながら、ジズソーパズル上、そのようには描かれていない。


(61)なまの鱈(a fresh haddock)



第6話「聖ペテロの指のあと / 聖ペテロの指の跡」の場合、ミス・マープルの姪であるメイベル(Mabel)に、夫のジェフリー・デンマン(Geoffrey Denman)殺しの噂がたったため、姪の名誉を守るため、ミス・マープルが真相を調べる事件が対象となる。

真相の解明にやや苦戦するミス・マープルだったが、魚屋の店の窓に、一匹のなまの鱈が飾ってあるのを見かけ、「聖ペテロの親指のあと」と言われる鱈の黒い斑点から、真相の解明に至るのである。


                                       

2024年10月2日水曜日

ミス・マープルの世界<ジグソーパズル>(The World of Miss Marple )- その21A

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2024年に発行されている「ミス・マープルの世界(The World of Miss Marple)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているミス・ジェイン・マープル(Miss Jane Marple)シリーズの登場人物や各作品に関連した68個の手掛かりについて、前回に引き続き、順番に紹介していきたい。


今回も、ミス・マープルが登場する作品に関連する手掛かりの紹介となる。


(59)トライフル(trifle)



トライフル(ブドウ酒に浸してたカステラ菓子)が載った器が、ジズソーパズルの左下に立つドリー・バントリー(Mrs. Dolly Bantry → 2024年8月14日付ブログで紹介済)と夫のアーサー・バントリー大佐(Colonel Arthur Bantry → 2024年8月14日付ブログで紹介済)の右手前にあるテーブルの上、真ん中に置かれている。


(60)アスタルテの像(statue of Astarte)



アスタルテの像が、ジズソーパズルの中央上部に設置されている煉瓦塀の前に置かれている。


(61)なまの鱈(a fresh haddock)



ジズソーパズルの下に立つレイコック(Laycock:ミス・マープルの庭を剪定する年配の庭師 → 2024年8月10日付ブログで紹介済)が、鱈を両手に抱えている。


これらから連想されるのは、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1932年に発表したミス・マープルシリーズ作品の短編集「ミス・マープルと13の謎(The Thirteen Problems)<米題:火曜クラブ( The Tuesday Club Murders)>」である。

「ミス・マープルと13の謎<米題:火曜クラブ>」は、アガサ・クリスティーによる4番目の短編集で、ミス・マープルが登場する連作短編13作が収録されているが、今回は、短編集の前半に該る「第1話 - 第6話」が対象となる。


ビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)が描く
ミス・マープルシリーズの連作短編集「ミス・マープルと十三の謎
<米題:火曜クラブ>」の一場面


ビル・ブラッグ氏によるイラストには、

ミス・マープルの甥であるレイモンド・ウェスト

(Raymond West → 2024年8月12日付ブログで紹介済)が、

彼女の家を借りて、火曜クラブを主催しているシーンが描かれている。

画面手前の左側の事物がミス・マープルであることは間違いないが、

画面手前の右側の人物がレイモンド・ウェストではないだろうか?

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「ミス・マープルと13の謎<米題:火曜クラブ>」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏によるイラストが、

飲み物のグラスの形に切り取られているものが使用されている。


                       

2024年10月1日火曜日

ジョスリン・バーバラ・ヘップワース(Jocelyn Barbara Hepworth)- その1

テイト・ブリテン美術館(Tate Britain → 2018年2月18日付ブログで紹介済)で購入した
ジョスリン・バーバラ・ヘップワースの写真
「Barbara Hepworth in her Mall Studio, London」(1933年)
The de Laszlo Collection of Paul Laib Negatives /
Witt Library / The Courtauld Institute of Art, London /
The Hepworth Photograph Collection /
David Lambert and Rod Tidnam / Tate Photography


今回は、英国の芸術家 / 彫刻家であるジョスリン・バーバラ・ヘップワース(JocelynBarbara Hepworth:1903年ー1975年)について、紹介したい。

彼女は、英国コンウォール州(Cornwall)にあるセントアイヴス(St. Ives)に住む芸術家のコミュニティーにおいて、主導的な役割を果たした人物である。


ジョスリン・バーバラ・ヘップワースは、土木技師(civil engineer)である父ハーバート・ヘップワース(Herbert Hepworth)と母ガートルード・ヘップワース(Gertrude Hepworth)の長子(長女)として、1903年1月10日、ヨークシャー州(Yorkshire)のウェイクフィールド(Wakefield)に出生。

彼女は、ウェイクフィールド女子高等学校(Wakefield Girls’ High School)で学んだ後、奨学金を得て、1920年からリーズ美術学校(Leeds School of Art)へ通った。ここで、彼女は、将来、20世紀の英国を代表する芸術家 / 彫刻家となるヘンリー・スペンサー・ムーア(Henry Spencer Moore:1898年ー1986年)と同窓になる。2人は友人となり、友好的なライバル関係は、長年にわたって続くことになる。

男性優位な環境下にもかかわらず、彼女は、再度、奨学金を得ると、1921年からロンドンの王立美術カレッジ(Royal College of Art (RCA))で学び、1924年に学位を取得している。


王立美術カレッジの学位取得後、ジョスリン・バーバラ・ヘップワースは、留学奨学金を得て、1924年にイタリアのフィレンツェ(Florence)へ向かった。

留学先のフィレンツェにおいて、彼女は、ローマ賞(Prix-de-Rome)の次点になったが、優勝は、英国の彫刻家であるジョン・ラッテンベリー・スキーピング(John Rattenbury Skeaping:1901年ー1980年)が手にした。

2人は、シエナ(Sienna)とローマ(Rome)を一緒に旅行した後、フィレンツェに戻り、1925年5月13日に結婚する。

結婚後、彼女は、同地において、彫刻家であるジョヴァンニ・アルディーニ(Giovanni Ardini)に師事して、大理石彫刻を学んだ。


ジョスリン・バーバラ・ヘップワースとジョン・ラッテンベリー・スキーピングの2人は、1926年に英国へ戻り、ロンドンのフラットに住居を構えると、そこで共同個展を開催。

そして、1929年には、2人の間に、長男のポール(Paul)が生まれた。


1931年に、ジョスリン・バーバラ・ヘップワースは、英国の抽象画家であるベンジャミン・ローダー・ニコルスン(Benjamin Lauder Nicholson:1894年ー1982年)と出会い、不倫関係となるが、ジョン・ラッテンベリー・スキーピングとの婚姻関係はそのまま維持。

ただ、その2年後の1933年に、彼女は、ジョン・ラッテンベリー・スキーピングに対して、離婚を申し出て、同年3月に離婚するのである。


                               

2024年9月30日月曜日

ミス・マープルの世界<ジグソーパズル>(The World of Miss Marple )- その20B

ビル・ブラッグ氏Mr. Bill Braggが描く
ミス・マープルシリーズの長編第12作目で、最後の作品である
「スリーピングマーダー」の一場面


ビル・ブラッグ氏によるイラストには、

画面奥から、ヒルサイド荘、グエンダ・ハリディー・リード、

そして、テラスの先にある庭に埋められたヘレン・ハリディーの死体が、

斜めに結ばれるように描かれている。

Harper Collins Publishers 社から出版されている

「スリーピングマーダー」のペーパーバック版の表紙には、

ビル・ブラッグ氏によるイラストが、

毒薬が入った瓶の形に切り取られているものが使用されている。


新婚のグエンダ・ハリデイー・リード(Gwenda Halliday Reed - 21歳)は、夫のジャイルズ(Giles Reed)より一足先に、ニュージーランドを出発して、英国を訪れると、イングランドの南海岸で新居探しを始めた。

まもなく、ディルマス(Dillmouth)においてヴィクトリア朝風のヒルサイド荘(Hillside)を見つけて、一目で気に入った彼女は、早速、その家を購入すると、業者を呼んで、改装工事を進めた。改装工事の間、彼女は、子供部屋だった場所で寝起きをした。

グエンダにとって、ヒルサイド荘は初めての家の筈にもかかわらず、何故か、家の隅々まで全て知り尽くしているような感じがして、次第に不安の思いに囚われていく。更に、業者が古い戸棚を開けると、そこには、彼女が思っていたような模様の壁紙が現れたのである。


その後、夫ジャイルズの従兄弟で、ロンドンに住むレイモンド・ウェスト(Raymond West → 2024年8月12日付ブログで紹介済)夫妻からの招待に応じて、グエンダはロンドンへと出向く。

彼女は、ウェスト夫妻とレイモンドの伯母であるミス・マープルと一緒に、芝居「モルフィ公爵夫人」の観劇に出かけた際、劇中で「女の顔を覆え。目が眩む。彼女は、若くして亡くなった。(Cover her face; mine eyes dzzle; she died young)」と言う台詞を聞いた途端、グエンダは、悲鳴を上げると、劇場から逃げ出してしまう。

自分が狂ったのではないかと思い悩むグエンダは、ミス・マープルに対して、これまでに起きたことを全て、正直に打ち明けた。何故ならば、彼女は、芝居「モルフィ公爵夫人」の台詞を聞いた際、ヒルサイド荘において、ある男が、ヘレン(Helen)と言う名前の金髪の女性の首を締めながら、同じ言葉を漏らしていたことを思い出したのである。


グエンダは、元々、父親が駐在していたインドで生まれたが、母親が亡くなったため、幼い頃から、ニュージーランドに居る母方の伯母に預けられ、育てられた。父親は、母親が無くなった数年後に、他界していた。

グエンダからの話を聞いたミス・マープルは、グエンダが、父親と彼の後妻と一緒に、英国に住んでいたのではないかと示唆して、それが事実であることを突き止める。グエンダの母親の死後、インドから英国へと戻る途中、父親はヘレン・ハリディー(Helen Halliday - 旧姓:ケネディー(Kennedy))と出会い、船上でのロマンスを経て、英国到着後に結婚し、二人は、ヘレンが生まれ育ったディルマスに家(ヒルサイド荘)を借りて住んでいた。グエンダは、18年前のまだ幼い頃、ヒルサイド荘を訪れたことがあったのである。


グエンダは、自分の頭に浮かぶ恐怖のイメージと劇の台詞について、考え込む。果たして、ヘレンを絞殺する男のイメージは、本当の記憶なのだろうか?


彼女の夫であるジャイルズが、ニュージーランドから英国に到着したので、グエンダは、彼と一緒に、この謎を更に調べていこうと決心したのであった。


(55)「モルフィ公爵夫人」のプログラム(playbill for The Duchess of Malfi)



(55)「モルフィ公爵夫人」のプログラム(playbill for The Duchess of Malfi)


夫ジャイルズ・リードの従兄弟に該るレイモンド・ウェスト夫妻からの招待に応じて、ロンドンへと出向いたグエンダ・ハリデイー・リードは、ウェスト夫妻とレイモンドの伯母であるミス・マープルと一緒に、芝居「モルフィ公爵夫人」の観劇に出かけた。

劇中、出演者が「女の顔を覆え。目が眩む。彼女は、若くして亡くなった。」と言うのを聞いた途端、グエンダは、悲鳴を上げて、劇場から逃げ出してしまった。

それは、芝居「モルフィ公爵夫人」中の台詞を聞いた際、ヒルサイド荘において、ある男が、ヘレンと言う名前の金髪の女性の首を締めながら、同じ言葉を漏らしていたことを、彼女が思い出したからであった。


「モルフィ公爵夫人」は、英国のテューダー朝(House of Tudor)末期からステュアート朝(House of Stuart)にかけて活動した劇作家であるジョン・ウェブスター(John Webster:1580年ー1634年)が1614年頃に執筆した悲劇で、彼の代表作の一つである。


(56)青いヤグルマギクの壁紙(wallpaper with blue cornflower)



ジャイルズ・リードと結婚し、夫より一足先に、ニュージーランドを出て、イングランドの南海岸で新居探しを始めたグエンダ・ハリデイー・リードは、ディルマスにおいて、ヴィクトリア朝風のヒルサイド荘を見つけて、一目で気に入ってしまう。

グエンダは、早速、その家を購入すると、業者を呼んで、改装工事を始めた。彼女にとって、ヒルサイド荘は初めての家の筈にもかかわらず、何故か、家の隅々まで全て知り尽くしているような感じがしてならない。業者が古い戸棚を開けると、そこには、何故か、彼女が思っていたような青いヤグルマギクの壁紙が現れたのだ。


(57)庭用噴霧器(garden syringe)



ヘレン・ハリディーの死体を発見するために、警察がヒルサイド荘のテラスの先にある庭を掘り起こしている間、グエンダ・ハリデイー・リードが室内に一人で居ると、真犯人が彼女に近づいて来て、彼女を毒殺しようとする。彼女の毒殺に失敗した真犯人は、次の手段として、首を絞めて、殺害しようとした。

そこへ、石鹸駅が入った庭用噴霧器(花や葉に水を霧状にして散布する機器)を持ったミス・マープルが姿を現して、真犯人の目に向け、噴霧器を噴射し、真犯人の企てを阻止したのである。


(58)サンシキヒルガオ(bindweed)



ヘレン・ハリディーの死体が埋められたヒルサイド荘のテラスの先にある庭には、サンシキヒルガオが咲いている。