英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第47話(第7シリーズ)として、2000年1月19日に放映されたアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「エッジウェア卿の死(Lord Edgware Dies)」(1933年)のTV ドラマ版の場合、原作対比、以下のような差異が見受けられる。
(10)
<原作>
エルキュール・ポワロ、アーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings)とスコットランドヤードのジャップ警部(Inspector Japp)の3人は、サヴォイホテル(Savoy Hotel → 2016年6月12日付ブログで紹介済)へ向かい、同ホテルの3階の部屋に宿泊しているジェーン・ウィルキンスン(Jane Wilkinson - 米国出身の舞台女優)から、事件当夜のことを聴取する。
なお、ジェーン・ウィルキンスンの弁護士であるミスター・モクスンも、事情聴取に同席する。
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サヴォイホテルの正面玄関 |
<英国 TV ドラマ版>
ポワロ、ヘイスティングス大尉とスコットランドヤードのジャップ主任警部(Chief Inspector Japp)の3人は、ジェーン・ウィルキンスンが住むフラットへ赴き、彼女から事件当夜のことを聴取する。
なお、ジェーン・ウィルキンスンの弁護士であるミスター・モクスンは、事情聴取に同席しない。
(11)
<原作>
ジェーン・ウィルキンスンによる事件当夜の説明は、以下の通り。
*午後8時:サヴォイホテルを出発
*途中、ピカデリーパレスホテル(Piccadilly Palace Hotel)に寄り、米国へ帰る友人のヴァン・デューセン夫人(Mrs. Van Dusen)に対して、別れの挨拶をする。
*午後8時45分頃:テムズ河(River Thames)畔のチジック地区(Chiswick → 2016年7月23日付ブログで紹介済)にあるサー・モンタギュー・コーナー(Sir Montague Corner)邸に到着し、晩餐会に出席。
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筆者がチジックハウス(Chiswick House)で購入した イングリッシュヘリテージ(English Heritage)のガイドブック |
*午後11時半頃:サー・モンタギュー・コーナー邸を出て、サヴォイホテルに戻る。
なお、上記の移動については、彼女が雇っているダイムラー社の車を使用。
<英国 TV ドラマ版>
ジェーン・ウィルキンスンによる事件当夜の説明は、以下の通り。
*午後7時頃:サヴォイホテルを出発
*途中、ピカデリーパレスホテルに寄り、米国人のヴァン・デューセン夫人(174号室)と会い、20分程会談。ヴァン・デューセン夫人には、舞台劇を執筆してもらったが、あまり出来は良くなかった、との話も挿入されている。
*午後7時半:ピカデリーパレスホテルを出て、ホルボーン地区(Holborn)にあるサー・モンタギュー・コーナー(Sir Montague Corner)邸に到着し、晩餐会に出席。
*午後12時過ぎ:サー・モンタギュー・コーナー邸を出て、自分のフラットに戻る。
なお、上記の移動に関しては、タクシーを使用している。
(12)
<原作>
上記の事情聴取の際、ジェーン・ウィルキンスンは、ポワロ達に対して、サー・モンタギュー・コーナーが開催した晩餐会の時、若い俳優であるドナルド・ロス(Donald Ross)が自分の向かい側に座っていたことは話していない。
<英国 TV ドラマ版>
上記の事情聴取の際、ジェーン・ウィルキンスンは、ポワロ達に対して、サー・モンタギュー・コーナーが開催した晩餐会の時、若い劇作家であるドナルド・ロスが自分の向かい側に座っていたことを語っている。
(13)
<原作>
物語の冒頭、ジェーン・ウィルキンスンは、ポワロとヘイスティングス大尉の2人を自分が宿泊しているサヴォイホテルの3階の部屋へ誘い、そこで夫のエッジウェア卿(Lord Edgware)との離婚の段取りを依頼するとともに、マートン公爵(Duke of Merton)との再婚についても、既に言及している。
<英国 TV ドラマ版>
ポワロ、ヘイスティングス大尉とジャップ主任警部の3人が、ホルボーン地区にあるサー・モンタギュー・コーナー邸を訪れた際、サー・モンタギュー・コーナー、同夫人やロナルド・ロスから、ジェーン・ウィルキンスンとマートン公爵の結婚話を初めて聞く。
(14)
<原作>
ジェーン・ウィルキンスンが、ポワロとヘイスティングス大尉の2人を自分が宿泊しているサヴォイホテルの3階の部屋へ誘い、そこで夫のエッジウェア卿との離婚の段取りを依頼した2-3日後、映画俳優のブライアン・マーティン(Bryan Martin)がポワロの元を訪れており、その後も、数回やって来ている。
<英国 TV ドラマ版>
ポワロ、ヘイスティングス大尉とジャップ主任警部の3人がサー・モンタギュー・コーナー邸を訪れた後、ブライアン・マーティンは、ポワロの元を初めて訪れている。
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アッパーアディソンガーデンズ(Upper Addison Gardens)から見た アディスランドコート |
(15)
<原作>
ポワロとヘイスティングス大尉の2人は、女芸人であるカーロッタ・アダムズ(Carlotta Adams)が住むスローンスクエア(Sloane Square)のローズデューマンションに駆け付けたところ、彼女は、ヴェロナール(Veronal)の過剰摂取により死亡していた。
なお、カーロッタ・アダムズは、2階にあることが言及されている。
<英国 TV ドラマ版>
カーロッタ・アダムズが住むフラットが、スローンスクエアに所在しているかどうかについては、言及されていない。
彼女が住むフラット名として、「アディスランドコート(Addisland Court → 2016年2月7日付ブログで紹介済)」が画面上に表示される。なお、「アディスランドコート」は実在するフラットで、ケンジントン&チェルシー王立区(Royal Borugh of Kensington and Chelsea)のケンジントン地区(Kensington)の高級住宅街内に所在している。
また、彼女の部屋は、「25号室」と画面上に表示される。
アディスランドコートの入口 |
