2025年12月10日水曜日

エルキュール・ポワロの世界 <ジグソーパズル>(The World of Hercule Poirot )- その17A

英国の Harper Collins Publishers 社から以前に出版されていた
アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」の
ペーパーバック版の表紙 -

ニック・バックリーが住む古びた屋敷であるエンドハウスを

イメージしているものと思われる。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2023年に発行されている「エルキュール・ポワロの世界(The World of Hercule Poirot)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているエルキュール・ポワロシリーズの登場人物や各作品に関連した112個の手掛かりについて、引き続き、紹介したい。

前回に引き続き、各作品に出てくる登場人物、建物や手掛かり等が、その対象となる。


ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の完成形
<筆者撮影>


(32)腕時計(wristwatch)



ジグソーパズルの下段中央の左手にあるテーブルの左端に、腕時計が置かれている。


(33) 遺言書(will)



ジグソーパズルの中段の一番左手にあるテーブルの上に、遺言書が一番下に置かれている。


これらから連想されるのは、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1932年に発表した「エンドハウスの怪事件(Peril at End House → 2024年7月13日 / 7月21日 / 7月25日付ブログで紹介済)」である。

「青列車の謎」は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては、第12作目に、そして、エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot → 2025年10月11日付ブログで紹介済)シリーズの長編としては、第6作目に該っている。

なお、「エンドハウスの怪事件」の場合、出版社によっては、「邪悪の家」という邦題を使用しているケースあり。


ちなみに、作者のアガサ・クリスティーは、自伝において、「『エンドハウスの怪事件』もまた、まるで印象に残っていない長編で、それを書いていた時のことさえ思い出せない。」と綴っている。


「エンドハウスの怪事件」は、「コーニッシュ リヴィエラ(Cornish Riviera)」と呼ばれるコンウォール州(Cornwall)のセントルー村(St. Loo - 架空の場所)が、舞台となる。


セントルー村に近いマジェスティックホテル(Majestic Hotel)のテラスにおいて、エルキュール・ポワロは、相棒で、友人でもあるアーサー・ヘイスティングス大尉(Captain Arthur Hastings → 2025年10月12日付ブログで紹介済)と一緒に、優雅な休暇を楽しんでいた。


エルキュール・ポワロは、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立っている。
<筆者撮影>


アーサー・ヘイスティングス大尉は、
ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の中央に立つ
エルキュール・ポワロの左斜め後ろに居る。

<筆者撮影>


なお、マジェスティックホテルについても、架空のホテルで、実際には、デヴォン州(Devon)のトーキー(Torquay → 2023年9月1日 / 9月4日付ブログで紹介済)内に所在するインペリアルホテル(Imperial Hotel → 2015年1月10日付ブログで紹介済)が、そのモデルとなっている。


インペリアルホテルの建物正面外観
<筆者撮影>


インペリアルホテルの下にある展望台から見たトーベイ湾(Torbay)
<筆者撮影>


一方、新聞では、世界一周飛行に挑戦中の飛行家であるマイケル・シートン大尉( Captain Michael Seton)が、太平洋上で行方不明になっていることを伝えていた。


画面右手前が、ポワロとヘイスティングス大尉が宿泊しているホテル マジェスティックで、
画面左手奥に、ニック・バックリーが住むエンドハウスが建っている。
-

Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」の
グラフィックノベル版(→ 2020年12月6日付ブログで紹介済)から抜粋。


テラスから庭へと通じる階段でポワロが足を踏み外したところ、丁度運良くそこに通りかかったニック・バックリー(Nick Buckley - 本名:マグダラ・バックリー(Magdala Buckley))に助けられ、事なきを得る。

彼女は、ホテルからほんの目と鼻の先にある岬の突端に立つやや古びた屋敷エンドハウス(End House)の若き女主人であった。

また、彼女は、父のフィリップ(Philip)と母のエイミー(Amy)を早くに亡くしており、祖父のサー・ニコラス・バックリー(Sir Nicholas Buckley)に育てられた。そのため、祖父が「Old Nick」、そして、彼女自身が「Young Nick」と呼ばれ、彼女は、「ニック」と言う愛称を得たのである。


ホテル マジェスティックにおいて出会ったニックから、
ポワロとヘイスティングス大尉は、彼女が3日間に3度も命拾いをしたことを聞く。
-

Harper Collins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「エンドハウスの怪事件」のグラフィックノベル版から抜粋。


ニック・バックリーがポワロを助けた後、蜂か何かが彼女の頭の方に飛んで来たようで、彼女はそれを追い払う仕草をする。

ポワロ達と少し話をした後、ニック・バックリーはエンドハウスへと帰ったが、彼女はそれまでかぶっていた日除け帽子をテラスのテーブルの上に忘れて行った。ポワロが残された帽子を手に取ってみると、帽子のつばには穴があいており、その上、近くには弾丸が落ちていたのである。と言うことは、ニック・バックリーが蜂による一刺しだと思ったのは、実際には、銃による狙撃だったのだ!


2025年12月9日火曜日

そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その21

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。


ジグソーパズルの下段の中央に、
首の後ろに右手を当てているエドワード・ジョージ・アームストロング医師が、赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>

赤枠で囲まれたエドワード・ジョージ・アームストロング医師の右斜め上には、
兵隊島に建つ邸宅の玄関から外へと出て、テラスを降りた後、
彼が走り去る姿が見られる。
<筆者撮影>


エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong / ロンドン・ハーリーストリート(Harley Street → 2015年4月11日付ブログで紹介済)の開業医  → 2025年10月31日付ブログで紹介済)に関連した3個の手掛かりが、その対象となる。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)


(34)割れた窓ガラス(A broken window)


兵隊島(Soldier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)に建つ邸宅の1階にある食堂の隣室に、
招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発するレコードがセットされた蓄音機が置かれている。
そして、蓄音機が置かれている部屋の窓ガラスが割れている。

アガサ・クリスティーの原作によると、
蓄音機が置かれていたのは、厳密には、応接間の隣室である。
また、割れていたのは、食堂の窓ガラスである。
<筆者撮影>


応接間において、裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていたローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave / 高名な元判事) → 2025年10月20日付ブログで紹介済)が発見された日の夜中、エドワード・ジョージ・アームストロングが自分の部屋から姿を消してしまう。

フィリップ・ロンバード(Philip Lombard / 元陸軍中尉 → 2025年10月28日付ブログで紹介済)とウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore / 元警部(Detective Inspector)→ 2025年11月2日付ブログで紹介済)の2人が、エドワード・ジョージ・アームストロングの行方を捜索するため、邸宅の外へ向かったものの、彼を発見することはできなかった。彼ら2人が見つけたのは、食堂の窓ガラスが1枚割れていたことと、テーブルの上の子供の兵隊人形(china soldier figurines → 2025年11月16日付ブログで紹介済)が3個に減っていたことだった。


ようやく足音は廊下に移ってきた。ロンバードの声がした。

「ヴェラ、大丈夫かい」

「ええ、どうでした」

「中に入れてもらえますか」と、ブロアの声が言った。

ヴェラはドアに行った。イスを動かしてカギを開け、掛け金をはずす。ドアを開けた。男性二人は荒い息づかいをしていた。足とズボンのすそがぐっしょり濡れている。

「どうでした」と、ヴェラは同じことをきいた。

ロンバードが答えた。

「アームストロングが消えた …」


「なんですって」ヴェラは大きな声を出した。

「島から、きれいさっぱり消えてしまった」と、ロンバード。

ブロアも同じことを言った。

「消えた - そう、そのとおり! まるで奇術だ」

ヴェラはじれったそうに言った。

「そんなばかな! どこかに隠れているのよ」

ブロアが言った。

「いや、ちがうね! この島には、隠れる場所なんてない。手のひらのようにつるりとして、なにもないところだ。外は月明かりで明るい。昼間みたいですよ。なのに、見つからない」

「家にもどってきたんでしょう」と、ヴェラ。

「われわれも、そう思った。屋敷の中も捜しました。音が聞こえたでしょう。ここにはいませんよ。いなくなった - あとかたもなく消えた、トンズラしちゃったんです」

「わたしには信じられないわ」

「本当なんだ」と、ロンバードが言った。

彼はちょっと言葉を切ってから、先を続けた。

「ちょっとしたことだけど、ほかにももう一つ。ダイニングルームの窓ガラスが、一枚割れていた - そしてテーブルの上の小さな兵隊さんが、三個になっている」

(青木 久惠訳)


(36)燻製の鰊(ニシン)(A red herring)


赤枠で囲まれたエドワード・ジョージ・アームストロング医師の右斜め下には、
兵隊島の海岸に打ち上げる波の名から、ニシンが姿を見せている
<筆者撮影>


エドワード・ジョージ・アームストロングは、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年11月15日付ブログで紹介済)」のうち、燻製の鰊(ニシン)が出てくる歌詞に準えて、溺死させられる。


なお、「red herring」とは、本来の問題点から皆の注意を他に逸らして、論点をすり替える論理的誤謬を指す用語で、推理小説においては、登場人物(警察や探偵等を含む)や読者を誤った結論へと導くために使用される虚偽の証拠や情報等のことを言う。


つまり、夜中に、エドワード・ジョージ・アームストロングが部屋から抜け出して、外へ出て行ったため、フィリップ・ロンバードとウィリアム・ヘンリー・ブロアの2人が、「エドワード・ジョージ・アームストロングが、一連の殺人を行った犯人だ。」と考えて、彼の後を追うが、これは、登場人物である彼らと読者を誤った結論へと導いていることを、作者であるアガサ・クリスティーが「red herring」と言う用語を使って、匂わせているものと思われる。


(43)エドワード・ジョージ・アームストロング医師のスーツケース(A doctor’s suitcase)


兵隊島に建つ邸宅の1階の一番右端が居間で、
招待客の一人であるアンソニー・ジェイムズ・マーストンが、
ソファーにリラックして座り、酒を楽しんでいる。
この居間の窓に、真っ赤なオイルシルクのカーテンが掛けられている。
厳密に言うと、原作の場合、
このカーテンが掛かっていたのは、居間ではなく、浴室である。
このカーテンの下の床に、
エドワード・ジョージ・アームストロング医師のスーツケースが置かれている。
<筆者撮影>


食堂において、エミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent / 信仰心の厚い老婦人 → 2025年10月29日付ブログで紹介済)が、青酸カリが入った皮下注射器を首筋に刺されて、5番目の犠牲者となった後、残された人達は、エドワード・ジョージ・アームストロング医師が持って来た注射器が使用されたのではないかと疑い、彼のスーツケースを調べるのであった。


「われわれにはまだ、筋道をたてて、ものを考える力があるんじゃないかな。この家に注射器を持ってきたものはいるだろうか」と、判事が静かに言った。

アームストロング医師が、身体を起こした。

「わたしは持ってきましたよ」と、彼は不安そうな声で答えた。

四対の目が、医者をじっと見つめた。敵意のこもった疑り深い視線を受けて、アームストロングは身体をこわばらせた。

「旅行にはいつも持っていくんです。医者なら、当たり前だ」

ウォーグレイヴ判事が、静かに言った。

「たしかに、そのとおりだな。先生、あんたの注射器は今どこにあるだろう」

「部屋に置いてあるスーツケースに入っていますよ」

「それを確かめようじゃないか」と、ウォーグレイヴ。

五人は、無言でぞろぞろと二階に上がっていった。

スーツケースの中身が出されて、床に並べられた。

注射器はなかった。


アームストロングが声を尖らせた。

「盗まれたんだ!」

誰もなにも言わなかった。

(青木 久惠訳)


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州の沖合いに浮かぶ兵隊島に、エドワード・ジョージ・アームストロングを含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた執事と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。

エドワード・ジョージ・アームストロングは、アルコールを摂取した後、患者のルイーザ・メアリー・クリース(Louisa Mary Clees)の手術を執刀して、死に至らせたと告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が戦慄する場面 -

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
グラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊」に準えて、エドワード・ジョージ・アームストロングは、6番目の被害者となる。


兵隊島に建つ邸宅の2階にある
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の壁(画面左側)には、
童謡「10人の子供の兵隊」が書かれた額が掛けられている。
<筆者撮影>


Four little soldier boys going out to sea; A red herring swallowed one and then there were Three.

(4人の子供の兵隊さんが、海へ出かけた。一人が燻製の鰊(ニシン)に呑みれて、残りは3人になった。)


原作の場合、

夜中、邸宅から外へ出て行ったエドワード・ジョージ・アームストロングの追跡が失敗に終わり、

屋敷に戻って来たフィリップ・ロンバードとウィリアム・ヘンリー・ブロアの2人は、

食堂へ行って、兵隊人形の数が3個に減っていることを確認。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


*被害者:エドワード・ジョージ・アームストロング

*告発された罪状:アルコールを摂取した後、患者のルイーザ・メアリー・クリースの手術を執刀して、死に至らせたと告発された。

*犯罪発生時期:1925年3月14日

*死因:溺死


原作の場合、海岸の二つの岩の間に、
エドワード・ジョージ・アームストロングの溺死体が挟まれているのが、
フィリップ・ロンバードとヴェラ・エリザベス・クレイソーンの2人によって発見されている。
エドワード・ジョージ・アームストロングの溺死体は、満ち潮で打ち上げられたのである。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


2025年12月8日月曜日

アガサ・クリスティー作「スタイルズ荘の怪事件」<英国 TV ドラマ版>(The Mysterious Affair at Styles by Agatha Christie )- その1

第20話「スタイルズ荘の怪事件」が収録された
エルキュール・ポワロシリーズの DVD コレクション No. 2 の表紙


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「スタイルズ荘の怪事件The Mysterious Affair at Styles → 2023年12月3日 / 12月6日付ブログで紹介済)」(1920年)の TV ドラマ版が、英国の TV 会社 ITV 社による制作の下、「Agatha Christie’s Poirot」の第20話(第2シリーズ)かつアガサ・クリスティー生誕100周年記念スペシャルとして、1990年9月16日に放映されている。英国の俳優であるサー・デヴィッド・スーシェ(Sir David Suchet:1946年ー)が、名探偵エルキュール・ポワロを演じている。ちなみに、日本における最初の放映日は、1990年11月24日である。


2022年に英国の HarperCollins Publishers 社から出版された
アガサ・クリスティー作「スタイルズ荘の怪事件」の
愛蔵版(ハードカバー版)の表紙
(Cover design by Holly Macdonald /
Illustrations by Shutterstock.com) 


英国 TV ドラマ版における主な登場人物(エルキュール・ポワロを除く)と出演者は、以下の通り。


(1)アーサー・ヘイスティングス中尉(Lieutenant Arthur Hastings):Hugh Fraser

(2)ジェイムズ・ジャップ警部(Inspector James Japp):Philip Jackson


ジグソーパズル「エルキュール・ポワロの世界」の右下に設置されているガラスケース内の後列右端に、
スタイルズ荘の模型が置かれている。
<筆者撮影>


(3)エミリー・イングルソープ(Emily Inglethrop / スタイルズ荘(Styles Court)の持ち主):Gilian Barge

(4)アルフレッド・イングルソープ(Alfred Inglethrop / エミリー・イングルソープが再婚した年下の夫):Michael Cronin

(5)ジョン・キャヴェンディッシュ(John Cavendish / エミリー・イングルソープの義理の息子(兄)で、アーサー・ヘイスティングスの旧友):David Rintoul

(6)メアリー・キャヴェンディッシュ(Mary Cavendish / ジョン・キャヴェンディッシュの妻):Beatie Edney

(7)ローレンス・キャヴェンディッシュ(Lawrence Cavendish / エミリー・イングルソープの義理の息子(弟)):Anthony Calf

(8)シンシア・マードック(Cynthia Murdoch / エミリー・イングルソープの友人の孤児で、現在は、彼女の養子になっている。薬剤師として勤務。):Allie Byrne

(9)エヴィー・ハワード(Evie Howard  / エミリー・イングルソープの話相手(住み込みの婦人)):Joanna McCallum

(10)ドーカス(Dorcas / エミリー・イングルソープに忠実なメイド):Lala Lloyd


(11)ウィルキンズ医師(Dr. Wilkins / エミリー・イングルソープの主治医で、毒物のの研究家):Michael Godley

(12)レイクス夫人(Mrs. Raikes / 近所の農場に住む未亡人で、メアリー・キャヴェンディッシュから、夫のジョンと不倫していると疑われている):Penelope Beaumont


アガサ・クリスティーの原作に比べると、英国 TV ドラマ版における登場人物には、以下の違いが見受けられる。


(1)

<原作> 陸軍におけるアーサー・ヘイスティングスの階級については、特に言及されていない。

<英国 TV ドラマ版> 陸軍におけるアーサー・ヘイスティングスの階級に関して、「中尉」となっている。後に、「大尉(Captain)」となると思われる。


(7)

<原作> ローレンス・キャヴェンディッシュは、優れた医師と言う設定になっている。

<英国 TV ドラマ版> ローレンス・キャヴェンディッシュの職業については、特に言及されていない。


(9)

<原作> ミス・ハワードの正式な名前は、エヴリン(Evelyn)となっている。

<英国 TV ドラマ版> 物語を通して、エヴィー(Evie)の愛称で呼ばれている。


アガサ・クリスティーの原作の場合、スタイルズ荘の近くに住む著名な毒理学(toxicologist)で、メアリー・キャヴェンディッシュの友人であるバウアスタイン博士(Dr. Bauerstein)が登場するが、英国 TV ドラマ版の場合、ウィルキンズ医師と役柄が重複するためなのか、割愛されている。


また、アガサ・クリスティーの原作の場合、アルフレッド・イングルソープがストリキニーネ(strychnine)を購入したとされている薬局の店員として、アルバート・メース(Albert Mace)が登場するが、英国 TV ドラマ版の場合、名前に関しては、メース氏(Mr. Mace)とのみ言及されている。


2025年12月7日日曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その20

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。


ロンドンのパディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)から
オークブリッジ駅(Oakbridge Station)へと向かう列車の一等喫煙車内において、
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ元判事は、右手に持った葉巻を燻らせ、
コンスタンス・カルミントンと署名された手紙を左手に持ち、その内容を読んでいる。
<筆者撮影>

ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ元判事は、
兵隊島に建つ邸宅の玄関右脇のテラスにおいて、
左手に眼鏡を持ち、椅子に腰掛けている。
<筆者撮影>


ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave / 高名な元判事) → 2025年10月20日付ブログで紹介済)に関連した3個の手掛かりが、その対象となる。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)


(41)グレーの毛糸の玉2つ(Two skeins of grey knitting-wool)


兵隊島に建つ邸宅の1階の一番右端が居間で、
ソファーにリラックして座り、酒を楽しむアンソニー・ジェイムズ・マーストン
(Anthony James Marston → 2025年11月1日付ブログで紹介済)の前の床の上に、
グレーの毛糸の玉が2つ落ちている
<筆者撮影>


編み物好きなエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent / 信仰心の厚い老婦人 → 2025年10月29日付ブログで紹介済)は、物語の中盤、グレーの毛糸の玉2つを何者かに盗まれてしまう。

その後、応接間において、裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていたローレンス・ジョン・ウォーグレイヴの頭には、カツラが被せられていた。この裁判官が被るカツラは、エミリー・キャロライン・ブレントが失くしたグレーの毛糸からできていたのである。


ヴェラ・クレイソーンが言った。

「ブレントさん、お茶をついでいただけますか」

「あなたがついでくださいな。あのティーポット、ひどく重いんですよ。それにわたし、グレーの毛糸の玉を二つなくしてしまってね。頭にくるったら、ないの」

(青木 久惠訳)


応接間の入り口で、アームストロングの足がピタッと止まった。ほかの三人は後ろにむらがって、医者の肩の上からのぞきこんだ。

誰かが叫び声を上げた。

ウォーグレイヴ判事は、部屋の奥に置かれた背もたれの高いイスに座っていた。両脇でローソクが燃えている。だが、四人が驚きショックを受けたのは、判事が真っ赤なガウンをまとい、裁判官のかぶるカツラをかぶっていたからだ …。

アームストロング医師がほかの三人に、近づかないように合図した。そして酔っぱらいのような、ちょっとふらつく足で、目を見開いたまま静かに座る判事に近づいた。

医者はかがみこんで、動かない顔をのぞきこんだ。そしてカツラをひょいと持ちあげた。カツラは床に転がり、禿げあがった額が現われた。額の真ん中が丸く汚れて、そこから何かが滴っている。

アームストロングはグニャリと力の抜けた手をとって脈をみた。そして三人のほうに顔を上げた。

まるで感情のこもらない、ぼんやりとした声で医者は言った。

「撃たれているよ …」

「なんだって - あのピストルか!」と、ブロアが言った。

医者は、やはり気の抜けた声で言った。

「頭を撃ち抜かれている。即死だ」

ヴェラがかがんで、転がっているカツラを見た。

「ブレントさんがなくした、グレーの毛糸 …」と、声をふるわせて、ヴェラは言った。

「それに、浴室から消えた、真っ赤なカーテンじゃないか …」と、ブロア。

「盗んだのは、これが目的だったのね」ヴェラがつぶやいた。

(青木 久惠訳)


(42)真っ赤なオイルシルクのカーテン(A scarlet oilskin curtain)


兵隊島に建つ邸宅の1階の一番右端が居間で、
招待客の一人であるアンソニー・ジェイムズ・マーストンが、
ソファーにリラックして座り、酒を楽しんでいる。
この居間の窓に、真っ赤なオイルシルクのカーテンが掛けられている。
厳密に言うと、原作の場合、
このカーテンが掛かっていたのは、居間ではなく、浴室である。
<筆者撮影>


応接間において、裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていたローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、赤いガウンを纏っていた。彼が身体に纏っている真っ赤なガウンは、トマス・ロジャーズ(Thomas Rogers / 執事 → 2025年11月3日付ブログで紹介済)が「浴室から無くなった。」と言っていた真っ赤なカーテンで代用されていた。


お茶! 毎日なにげなく飲む、午後のお茶。ああ、なんてありがたい! フィリップ・ロンバードが楽しい話題をもちだして、ブロアもそれにのった。アームストロング医師は、滑稽な話で笑いを誘った。いつもはお茶ぎらいのウォーグレイヴ判事まで、カップに口をつけている。

そんなふうにくつろいでいるところに、ロジャーズが入ってきた。

ロジャーズはあわてていた。彼はおろおろ声で言った。

「失礼いたします。あのう、どなたか、浴室のカーテンがどうなったか、ご存じではないでしょうか」

ロンバードがピクッと顔を上げて、ロジャーズを見た。

「浴室のカーテンだって? いったい、どういうことだい」

「なくなったのです。消えました。カーテンを閉めてまわっておりました。すると、浴室のがないのです」

「今朝はあったのか」ウォーグレイヴ判事が尋ねた。

「ございました」

「どんなカーテンだい」と、ブロア。

「真っ赤なオイルシルクでございます。赤いタイルとマッチする色でした」

「それがなくなったのか」ロンバードがきいた。

「なくなりました」

六人は顔を見あわせた。

(青木 久惠訳)


(45)裁判官が被るカツラ(A judge’s wig)


兵隊島に建つ邸宅の玄関の右側にある階段の前で、
正装して、ファイティングポーズをとるウィリアム・ヘンリー・ブロアの姿が見られる。
階段の左側に置かれているコート掛けには、
黒い帽子と青い傘の他に、裁判官が被る白いカツラも掛けられている。
<筆者撮影>


応接間において、裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていたローレンス・ジョン・ウォーグレイヴの頭には、カツラが被せられていた。この裁判官が被るカツラは、エミリー・キャロライン・ブレントが失くしたグレーの毛糸からできていたのである。


同上

(青木 久惠訳)


1930年代後半の8月のこと、英国デヴォン州(Devon)の沖合いに浮かぶ兵隊島(Soldier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)に、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ判事を含め、年齢も職業も異なる8人の男女が招かれる。彼らを島で迎えた執事と料理人の夫婦は、エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人(Mrs. Una Nancy Owen)に自分達は雇われていると招待客に告げる。しかし、彼らの招待主で、この島の所有者であるオーウェン夫妻は、いつまで待っても、姿を現さないままだった。


兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。
<筆者撮影>


招待客が自分達の招待主や招待状の話をし始めると、皆の説明が全く噛み合なかった。その結果、招待状が虚偽のものであることが、彼らには判ってきた。招待客の不安がつのる中、晩餐会が始まるが、その最中、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発する謎の声が室内に響き渡る。

ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、皆が無実の被告だと確信していたエドワード・シートン(Edward Seton)に対して、陪審員達を巧みに誘導し、不当な死刑判決出したと告発されたのである。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が戦慄する場面 -

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」の
グラフィックノベル版(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


そして、物語が進み、童謡「10人の子供の兵隊(Ten Little Soldiers → 2025年11月15日付ブログで紹介済)」に準えて、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴは、6番目の被害者となる。


兵隊島に建つ邸宅の2階にある
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の壁(画面左側)には、
童謡「10人の子供の兵隊」が書かれた額が掛けられている。
<筆者撮影>

Five little soldier boys going in for law; One got in chancery and then there were Four.

(5人の子供の兵隊さんが、法律を志した。一人が大法官府(裁判所)に入って、残りは4人になった。)


厳密に言うと、原作の場合、

ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが見つかったのは、応接間(1階)で、

兵隊人形が置かれているのは、食堂(1階)なので、この場面は正しくない。-

HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋


*被害者:ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ

*告発された罪状:皆が無実の被告だと確信していたエドワード・シートンに対して、陪審員達を巧みに誘導し、不当な死刑判決出したと告発された。

*犯罪発生時期:1930年6月10日

*死因:裁判官の服装をして、額に銃弾を受けていた。なお、裁判官が被るカツラは、エミリー・キャロライン・ブレントが失くしたグレーの毛糸からできており、また、身体に纏っている真っ赤なガウンは、トマス・ロジャーズが「浴室から無くなった。」と言っていた真っ赤なカーテンで代用されていた。


画面左側から、エドワード・ジョージ・アームストロング、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ、
フィリップ・ロンバード、ウィリアム・ヘンリー・ブロア、
そして、
ヴェラ・エリザベス・クレイソーン。
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HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。