2025年11月20日木曜日

ガストン・ルルー作「オペラ座の怪人」<小説版>(The Phantom of the Opera by Gaston Leroux )- その3

ズ・マジェスティーズ劇場(His Majesty’s Theatre)において上演されている
ミュージカル「オペラ座の怪人」-
「オペラ座の怪人」であるエリックが、
ドレッシングルームから攫った
若きスウェーデン人ソプラノ歌手であるクリスティーヌ・ダーエを、
パリ・オペラ座の地下室へと連れて行く場面が写っている。
<筆者撮影>


ガラ公演(gala performance)が行われてから数日後、パリ・オペラ座であるガルニエ宮(Palais Garnier)において、オペラ「ファウスト(Faust)」が上演される。

オペラ座の怪人(The Phantom of the Opera / Opera Ghost)」と呼ばれる謎の怪人は、パリ・オペラ座の支配人に対して、若く美しいスウェーデン人ソプラノ歌手(Swedish soprano)であるクリスティーヌ・ダーエ(Christine Daae)を主役に据えるよう要求したが、謎の怪人の望みに反して、リードソプラノ歌手(lead soprano)のカルロッタ(Carlotta)が、主役を演じることになった。

舞台に登場したカルロッタであったが、上演中、突然、声を失い、そして、豪華で巨大なシャンデリアが客席に落下する。

それに乗じて、謎の怪人は、ドレッシングルームからクリスティーヌ・ダーエを攫い出すと、自身が住むパリ・オペラ座の地下室へ連れて行った。そして、そこで謎の怪人は、彼女に対して、エリック(Erik)と名乗った。


クリスティーヌ・ダーエは、その後も、自分の楽屋の裏から聞こえる「音楽の天使 / 天使の声(Angel of Music)」に導かれて、若きソプラノ歌手として頭角を現していく。

それに嫉妬を覚えた彼女の幼馴染であるラウル・ド・シャニュイ子爵(Vicomte Raoul de Chagny)は、「音楽の天使 / 天使の声」の正体を明らかにしようと奔走。


ガルニエ宮の屋根の上で、ラウル・ド・シャニュイ子爵は、クリスティーヌ・ダーエから、謎の人怪人エリックに攫われたことを打ち明けられる。

このエリックこそが、「音楽の天使 / 天使の声」の正体であり、パリ・オペラ座の地下に広がっている広大な空間に住みついた怪人であることが、ラウル・ド・シャニュイ子爵には判った

ラウル・ド・シャニュイ子爵は、クリスティーヌ・ダーエに対して、エリックが彼女を二度と見つけられないように対処すると約束すると、彼女もこれに同意。しかし、クリスティーヌ・ダーエは、心の中では、「オペラ座の怪人」であるエリックのことを哀れみ、彼のために心からの歌を捧げるまで、パリ・オペラ座から出ていかない決心を固めていた。

2人の会話をエリックが物陰から盗み聞きして、強い嫉妬心を募らせていたことを、2人は全く知らなかったのである。


ヘイマーケット通り(Haymarket → 2025年9月30日 / 10月14日付ブログで消化済)の東側から
ヒズ・マジェスティーズ劇場を見上げたところ
<筆者撮影>


翌日の夜、ガルニエ宮において、クリスティーヌ・ダーエを主役に据えた「ファウスト」が上演されることになった。

その最中、エリックは、クリスティーヌ・ダーエを誘拐すると、パリ・オペラ座の地下へと姿を消す。彼は、彼女との結婚を強引に決行するつもりだった。

結婚を拒否した場合、地下室に仕掛けた爆弾により、パリ・オペラ座を爆破すると言って、エリックはクリスティーヌ・ダーエを脅すが、彼女は結婚を拒否。

クリスティーヌ・ダーエを攫われたラウル・ド・シャニュイ子爵は、エリックから彼女を鳥もどsため、謎のペルシア人と一緒に、パリ・オペラ座の地下にあるエリックの隠れ家へと潜入するのだった。


2025年11月19日水曜日

カーター・ディクスン作「爬虫類館の殺人」(He Wouldn’t Kill Patience by Carter Dickson)- その2



京創元社が発行する創元推理文庫「爬虫類館の殺人」の表紙(部分)
    カバーイラスト:ヤマモト マサアキ
カバーデザイン:折原 若緒
  カバーフォーマット:本山 木犀

第2次世界大戦(1939年-1945年)下の首都ロンドン、ケンジントンガーデンズ(Kensington Gardens)内にあるロイヤルアルバート動物園(Royal Albert Zoological Gardens)は、世界の蛇、蜥蜴や毒蜘蛛等を集めた爬虫類館で人気を集めていた。ところが、ドイツ軍の爆撃による空襲の脅威下、国家安全保証省(Department of Home Secuirty)からの要請により、閉園の危機を迎える。

園長のエドワード・ベントン(Edward Benton)は、なんとかして、ロイヤルアルバート動物園閉園の危機を乗り越えようといろいろと手を尽くしたものの、閉園の撤回は非常に難しい状況だった。

ロイヤルアルバート動物園閉園の危機を迎えて、気落ちする父エドワード・ベントンを元気づけるため、娘のルイーズ・ベントンは、曾祖父の代から対立している2つの奇術師一家の若き後継者であるケアリー・クイント(Carey Quint - 奇術師の青年)とマッジ・パリサー(Madge Palliser - 奇術師の女性)の2人に手品を披露してもらうべく、1940年9月6日(金)の夕食会に招待した。また、陸軍省の御意見番で、手品を得意とするヘンリー・メリヴェール卿(Sir Henry Merrivale)も、同じく招待されたのである。


空襲警報が鳴り響く中、ケアリー・クイント、マッジ・パリサーとヘンリー・メリヴェール卿の3人は、午後8時半頃、ロイヤルアルバート動物園内にある園長の家に到着。

玄関のドアには、鍵がかかっておらず、廊下の突き当たりにある園長エドワード・ベントンの書斎のドアには、「入室無用」の札が掛かっていた。また、ドアは閉じたままで、その下から光は漏れていなかった。

廊下の突き当たりにある園長の書斎を除くと、右の部屋も左の部屋も、ドアが開けっ放しで、夕食会の用意が為されていたものの、誰もいなかった。

ヘンリー・メリヴェール卿とマッジ・パリサーが、夕食を焦がしている臭いを嗅ぎつけると、3人は食堂へと急いだ。食堂内の閉じたオーブンの中では、ロースト料理が焦げていた。誰かが、全部のガスを全開にしていたのである。

慌ててオーブンのスイッチを切る3人であったが、何故か、食堂から廊下へ通じるドアに、鍵がかかっていた。3人以外に、園長の家内に居る誰かに、彼らは食堂内に閉じ込められてしまったのだ。


建物の外壁に刻まれた「セントバーソロミュー病院」の文字
<筆者撮影>


ケアリー・クイントが奇術用の小道具を使い、ドアの鍵を解錠して、廊下へ出ると、丁度、飼育員のマイク・パーソンズとセントバーソロミュー病院(St. Bartholomew's Hospital → 2014年6月14日付ブログで紹介済)の医師で、ルイーズ・ベントンの恋人のジャック・リヴァーズが玄関のドアから入って来た。

ジャック・リヴァーズによると、午後7時に、園長のエドワード・ベントン本人から、「夕食会は中止になった」旨の電話連絡があった、とのこと。園長の声の様子に不自然さを感じたジャック・リヴァーズは、病院から駆け付けたのであった。


ヘンリー・メリヴェール卿を含めた5人は、廊下の突き当たりにある園長の書斎のドアを開けようとしたが、鍵がかかっていた。また、中から鍵穴に何かが貼り付けてあるようだった。


廊下に面したドアは、全て、同じ鍵を使っていることを知っているジャック・リヴァーズは、食堂のドアから鍵を抜くと、ヘンリー・メリヴェール卿に手渡した。

ヘンリー・メリヴェール卿が書斎の鍵を解錠して、ドアを開けると、園長のエドワード・ベントンが、一匹の蛇と一緒に、ガス中毒により死亡しているのを発見する。

書斎のドアと窓の全てが内側から厳重に目張りされた「密室(sealed room)」状態で、状況的には、ロイヤルアルバート動物園の閉園を苦にしての自殺としか思えなかった。


そんな最中、園長の娘であるルイーズ・ベントンが戻って来る。


ホルボーン高架橋通り(西側) / ニューゲートストリート(東側)方面から
ギルップールストリートを北へ眺めたところ –
画面右手前のビルには Bank of America Merrill Lynch が入居しており、
画面右手奥にはセントバーソロミュー病院がある。
<筆者撮影>


彼女によると、午後7時頃、夕食の支度を始めようとした際、男性の声で電話があり、「ジャック・リヴァーズが乗った車が、病院近くのギルップールストリート(Giltspur Street → 2018年6月9日 / 6月16日 / 6月23日付ブログで紹介済)で大型トラックに衝突して、本人は大怪我を負った。とのことだったので、メイドのローズマリーに夕食の支度を任せ、彼女は慌てて病院へと向かったのだった。



ところが、メイドのローズマリーも、その後、同じ声の電話で「ルイーズ・ベントンが、ジャック・リヴァーズの看護を手伝ってほしい。」との連絡があったため、同じく、病院へと駆け付けた結果、園長の家は不在となっていたのである。


自殺だと思われる状況ではあったが、ルイーズ・ベントンは、「爬虫類の研究に生涯を捧げた父が、大事にしていた蛇のペイシェンスを道連れにする筈がない。」と言って、他殺を主張する。


園長エドワード・ベントンのガス中毒による死亡は、状況通り、自殺なのか、それとも、他殺なのか?

仮に他殺だったとして、犯人は、一体どのようにして、糊付けした紙で目張りされた書斎から抜け出すことができたのか?


日本において、本作品は、「爬虫類館の殺人」というタイトルで通っているが、作者のジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年 / 筆名:カーター・ディクスン(Carter Dickson))による原題は、「He Wouldn’t Kill Patience」となっている。

これは、ロイヤルアルバート動物園の園長エドワード・ベントンの娘であるルイーズ・ベントンがヘンリー・メリヴェール卿に対して放った「父がペイシェンスを殺す筈がない。(He wouldn’t kill Patience.)」が、そのまま原題として使用されているのである。


米国の推理作家 / 推理雑誌編集者で、アマチュア奇術師でもあったクレイトン・ロースン(Clayton Rawson:1906年ー1971年)は、ジョン・ディクスン・カーと親交が深く、奇術趣味同士と言うこともあり、推理小説の分野において、お互いに影響を与え合った。

クレイトン・ロースンが出した「ドアや窓を目張りした部屋における密室殺人」と言う主題に基づいて、彼とジョン・ディクスン・カーの2人は、競作を行う。

ジョン・ディクスン・カーは、1944年にヘンリー・メリヴェール卿シリーズの長編第14作目「爬虫類館の殺人」で、また、クレイトン・ロースンは、1948年に短編「この世の外から(Out of this World)」により、それぞれ全く異なる解決を導き出している。


           

2025年11月18日火曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その15

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。

英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)


(26)夕食の席に着く招待客(All the guests at dinner)

兵隊島(Soldier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)に建つ邸宅の1階にある食堂において、
招待客の8人が夕食をとるテーブルの中央に、10人の子供の兵隊人形が置かれている。
アガサ・クリスティーの原作の場合、丸いテーブルとなっているが、
ジグソーパズルの場合、四角い長テーブルとなっている。
なお、テーブルの左側には、手前から、
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ、
ヴェラ・エリザベス・クレイソーン、
エドワード・ジョージ・アームストロング、そして、ウィリアム・ヘンリー・ブロアが座り、
テーブルの右側には、手前から、
ジョン・ゴードン・マッカーサー、エミリー・キャロライン・ブレント、
アンソニー・ジェイムズ・マーストン、そして、フィリップ・ロンバードが着席している。
画面中央奥には、執事のトマス・ロジャーズが、給仕するために控えている。
また、画面右端には、招待客が待つテーブルへ料理を運ぶ
料理人のエセル・ロジャーズの姿が見られる。
<筆者撮影>


午後8時から始まった夕食が終わり、体育教師(games mistress)のヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne / 体育教師(games mistress)→ 2025年10月21日付ブログで紹介済)とエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent / 信仰心の厚い老婦人 → 2025年10月29日付ブログで紹介済)の女性陣が、まず最初に、食堂から応接間へ移動。少しして、男性陣の6人も、応接間に入って来た。

執事のトマス・ロジャーズ(Thomas Rogers → 2025年11月3日付ブログで紹介済)が、熱々のブラックコーヒーを皆に配る。


時計の針が午後9時20分を指したとき、応接間の静けさを破って、突然、「声」が響いた。

その謎の声は、招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発する。謎の声による告発を聞いた彼ら10人は戦慄した。


(A)エドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong / 医師 → 2025年10月31日付ブログで紹介済)

1925年3月14日に、ルイーザ・メアリー・クリース(Louisa Mary Clees / 患者)をしに至らせたと告発された。


(B)エミリー・キャロライン・ブレント

1931年11月5日に、ビアトリス・テイラー(Beatrice Taylor / 使用人の娘)を死に追いやったと告発された。


(C)ウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore / 元警部(Detective Inspector)→ 2025年11月2日付ブログで紹介済 )

1928年10月10日に、ジェイムズ・スティーヴン・ランドー(James Stephen Landor / 無実の人間)を死に至らせたと告発された。


(D)ヴェラ・エリザベス・クレイソーン

1935年8月11日に、シリル・オギルヴィー・ハミルトン(Cyril Ogilvie Hamilton / 家庭教師をしていた子供)を殺害したと告発された。


(E)フィリップ・ロンバード(Philip Lombard / 元陸軍中尉 → 2025年10月28日付ブログで紹介済)

1932年2月のある日、東アフリカにおいて先住民族21人(21 men, members of an East African tribe)を死に追いやったと告発された。


招待客が兵隊島に到着した日の晩餐会において、
謎の声(オーウェン氏)による告発により、招待客8人と使用人夫婦が戦慄する場面-
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版
(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


(F)ジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon MacArthur / 退役した老将軍(General)→ 2025年10月30日付ブログで紹介済)

1917年1月14日に、アーサー・リッチモンド(Arthur Richmond / 妻レスリー(Lesley)の愛人だった部下)を故意に死地へ赴かせたと告発された。


(G)アンソニー・ジェイムズ・マーストン(Anthony James Marston / 遊び好きの上、生意気な青年 → 2025年11月1日付ブログで紹介済)

去年の11月14日に、ジョン・クームズ(John Coombes)とルーシー・クームズ(Lucy Coombes)と言う二人の子供)を殺害したと告発された。


(H)トマス・ロジャーズ

(I)エセル・ロジャーズ(Ethel Rogers → 2025年11月4日付ブログで紹介済)

1929年5月6日に、ジェニファー・ブレイディー(Jennifer Brady / 仕えていた老女)を死に至らせたと告発された。


(J)ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave / 高名な元判事 → 2025年10月20日付ブログで紹介済)

1930年6月10日に、エドワード・シートン(Edward Seton / 皆が無実と確信していた被告)を殺害したと告発された。


謎の声による告発を受けて、茫然自失する10人。

執事のトマス・ロジャーズは、思わず、コーヒーの盆を落としてしまい、凄まじい音が響き渡る。

応接間のドアの外で、料理人のエセル・ロジャーズが丸くなって、床の上に倒れこんだ。フィリップ・ロンバードが、アンソニー・ジェイムズ・マーストンに声を掛けて、2人でエセル・ロジャーズを応接間内に運び込み、ソファーに寝かせる。エドワード・ジョージ・アームストロング医師が、彼女を介抱する。


(13)蓄音機(gramophone)


兵隊島に建つ邸宅の1階にある食堂の隣室に、
招待客8人と執事 / 料理人夫婦が過去に犯した罪を告発するレコードがセットされた
蓄音機が置かれている。
アガサ・クリスティーの原作によると、
蓄音機が置かれているのは、厳密には、応接間の隣室である。
<筆者撮影>


その後、フィリップ・ロンバードが、応接間の隣室に通じるドアを開けると、応接間との境の壁にピッタリ寄せられるように、テーブルが置かれていた。

そして、テーブルの上には、蓄音機が載っており、ラッパ形の大きな拡声器が付いていた。

この蓄音機にセットされていたレコードが、謎の声による告発を発したのだった。


ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ元判事に質問された執事のトマス・ロジャーズは、慌てて弁明する。


「判事さま、わたくしは、お指図に従っただけでございます」

「誰の指図だ」

「オーエンさまでございます」

「そこのところを、くわしく説明してもらおうか。オーエンさんの指図とは - 正確に言って、どういうものだったのか」

「レコードをかけるように、ということでした。レコードは引き出しに入っているからと。わたくしがコーヒーを持って、応接間に入ったところで、家内がレコードを回すことになっておりました」

「なんとも、驚いた話じゃないか」と、判事はつぶやいた。

ロジャーズは叫んだ。

「判事さま、本当でございます。神かけて、うそではございません。あれがどんなものか、わたくしは存じませんでした - これっぽっちも。レコードには、ラベルがついておりました - ですから、音楽だとばかり」

ウォーグレイヴはロンバードを見た。

「曲名が書いてあったのか」

ロンバードはうなずいた。彼は突然、白いとがった歯を見せて、ニヤッと笑った。

「ええ、ありましたよ。<白鳥の歌(Swan Song)>って」

(青木 久惠訳)


2025年11月17日月曜日

カーター・ディクスン作「爬虫類館の殺人」(He Wouldn’t Kill Patience by Carter Dickson)- その1

京創元社が発行する創元推理文庫「爬虫類館の殺人」の表紙
    カバーイラスト:ヤマモト マサアキ
カバーデザイン:折原 若緒
  カバーフォーマット:本山 木犀


爬虫類館の殺人He Wouldn’t Kill Patience)」は、米国のペンシルヴェニア州(Pennsylvania)に出生して、英国人のクラリス・クルーヴス(Clarice Cleaves)との結婚後、1932年から1946年にかけて英国のブリストル(Bristol)に居を構えていた米国の推理作家で、「不可能犯罪の巨匠」とも呼ばれているジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)が、カーター・ディクスン(Carter Dickson)という別名義で1944年に発表した推理小説で、ヘンリー・メリヴェール卿(Sir Henry Merrivale)シリーズの長編第14作目に該る。

米国では、1944年にモロー社(Morrow)から、そして、英国では、同年にハイネマン社(Heinemann)から出版された。


ヘンリー・メリヴェール卿シリーズについては、


*長編第1作目「黒死荘の殺人(The Plague Court Murders → 2018年5月6日 / 5月12日付ブログで紹介済)」(1934年)


東京創元社が発行する創元推理文庫「黒死荘の殺人」の表紙
カバーデザイン:本山 木犀
    カバーイラスト:ヤマモト マサアキ


*長編第2作目「白い僧院の殺人(The White Priory Murders → 2019年9月28日 / 10月5日 / 10月12日 / 10月20日付ブログで紹介済)」(1934年)


東京創元社が発行する創元推理文庫「白い僧院の殺人」の表紙
    カバーイラスト:ヤマモト マサアキ
カバーデザイン:折原 若緒
  カバーフォーマット:本山 木犀


*長編第7作目「ユダの窓(The Judas Window → 2018年7月21日 / 7月28日付ブログで紹介済)」(1938年)


東京創元社から出版されている創元推理文庫「ユダの窓」の表紙
       カバーイラスト:ヤマモト マサアキ 
カバーデザイン:折原 若緒 
  カバーフォーマット:本山 木犀 


*長編第10作目「かくして殺人へ(And So to Murder → 2019年6月16日 / 6月26日 / 7月7日付ブログで紹介済)」(1940年)


東京創元社が発行する創元推理文庫「かくして殺人へ」の表紙
    カバーイラスト:ヤマモト マサアキ
カバーデザイン:折原 若緒
  カバーフォーマット:本山 木犀


*長編第11作目「九人と死で十人だ(Nine-and Death Makes Ten → 2019年2月17日 / 3月3日 / 6月2日付ブログで紹介済)」(1940年)


東京創元社が発行する創元推理文庫「九人と死で十人だ」の表紙
   カバーイラスト:ヤマモト マサアキ
カバーデザイン:折原 若緒
  カバーフォーマット:本山 木犀


*長編第12作目「殺人者と恐喝者(Seeing is Believing → 2019年1月26日 / 2月2日 / 2月9日付ブログで紹介済)」(1941年)


東京創元社が発行する創元推理文庫「殺人者と恐喝者」の表紙
    カバーイラスト:ヤマモト マサアキ
カバーデザイン:折原 若緒
  カバーフォーマット:本山 木犀


*長編第14作目「貴婦人として死す(She Died a Lady → 2019年7月14日 / 7月20日 / 7月27日付ブログで紹介済)」(1943年)


東京創元社が発行する創元推理文庫「貴婦人として死す」の表紙
    カバーイラスト:ヤマモト マサアキ
カバーデザイン:折原 若緒
  カバーフォーマット:本山 木犀


も紹介しているので、御参照願います。


爬虫類館の殺人」の舞台は、第2次世界大戦(1939年-1945年)下の首都ロンドン。


ケンジントンガーデンズ(Kensington Gardens)内にあるロイヤルアルバート動物園(Royal Albert Zoological Gardens)は、園長であるエドワード・ベントン(Edward Benton)によって運営されていた。

ロイヤルアルバート動物園の中でも、世界の蛇、蜥蜴や毒蜘蛛等を集めた爬虫類館は、その名物で、人気を集めていた。


そんなロイヤルアルバート動物園であったが、ドイツ軍の爆撃による空襲の脅威下、閉園危機を迎える。

ドイツ軍の爆撃による空襲により、毒蛇、毒蜥蜴や毒蜘蛛、更に、毒のある昆虫等が逃げ出して、サウスケンジントン中を這い回るリスクを抱えていたからである。


1940年9月6日(金)の午後、爬虫類館内において、長年にわたって反目している奇術師の両家に属するケアリー・クイント(Carey Quint - 奇術師の青年)とマッジ・パリサー(Madge Palliser - 奇術師の女性)の2人は、飼育員のマイク・パーソンズと一騒動を起こして、保管用のガラスケースを壊してしまい、大蜥蜴(ジャイアントグリーンアミーバ)とアメリカドクトカゲが逃げ出す要因をつくってしまった。

そして、そこに偶々居合わせた陸軍省の御意見番であるヘンリー・メリヴェール卿は、危うく2匹の蜥蜴に噛まれるところだった。


園長エドワード・ベントンが不在だったため、彼の娘であるルイーズ・ベントンに対して、ケアリー・クイントとマッジ・パリサーの2人は謝罪する。

ロイヤルアルバート動物園閉園の危機を迎えて、気落ちする父エドワード・ベントンを元気づけるため、ルイーズ・ベントンは、ケアリー・クイントとマッジ・パリサーの2人に手品を披露してもらうべく、当日の夕食会に招待した。手品を得意とするヘンリー・メリヴェール卿も、同じく招待されたのである。


           

2025年11月16日日曜日

「そして誰もいなくなった」の世界 <ジグソーパズル>(The World of ‘And Then There Were None’ )- その14

兵隊島に建つ邸宅の1階にある食堂において、
招待客の8人が夕食をとるテーブルの中央に、10人の子供の兵隊人形が置かれている。
アガサ・クリスティーの原作の場合、丸いテーブルとなっているが、
ジグソーパズルの場合、四角い長テーブルとなっている。
なお、テーブルの左側には、手前から、
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ、
ヴェラ・エリザベス・クレイソーン、
エドワード・ジョージ・アームストロング、そして、ウィリアム・ヘンリー・ブロアが座り、
テーブルの右側には、手前から、
ジョン・ゴードン・マッカーサー、エミリー・キャロライン・ブレント、
アンソニー・ジェイムズ・マーストン、そして、フィリップ・ロンバードが着席している。
画面中央奥には、執事のトマス・ロジャーズが、給仕するために控えている。
<筆者撮影>


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に発行されている「「そして誰もいなくなった」の世界(The World of ‘And Then There Were None’)」と言うジグソーパズル内に散りばめられているアガサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「そして誰もいなくなった(And Then There Were None)」(1939年)の登場人物や同作品に関連した47個にわたる手掛かりについて、引き続き、紹介したい。


英国の Orion Publishing Group Ltd. から2025年に出ている
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」(1000ピース)


(12)10人の子供の兵隊人形(ten china soldier figurines)


エリック・ノーマン・オーウェン氏(Mr. Ulick Norman Owen)とユナ・ナンシー・オーウェン夫人(Mrs. Una Nancy Owen)に招待されて、兵隊島(Solidier Island → 2025年10月19日付ブログで紹介済)へのボート発着所であるデヴォン州(Devon)スティクルヘイヴン村(兵隊島へのボート発着所)に着いた


兵隊島は、
ジグソーパズル「「そして誰もいなくなった」の世界」の左下の角に置かれている。
<筆者撮影>


*高名な元判事のローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(Lawrence John Wargrave → 2025年10月20日付ブログで紹介済)


パディントン駅(Paddington Station → 2014年8月3日付ブログで紹介済)から
オークブリッジ駅へと向かう列車の一等喫煙車内において、
ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ元判事は、右手に持った葉巻を燻らせ、
コンスタンス・カルミントンと署名された手紙を左手に持ち、その内容を読んでいる。
<筆者撮影>


*体育教師(games mistress)のヴェラ・エリザベス・クレイソーン(Vera Elizabeth Claythorne → 2025年10月21日付ブログで紹介済)


ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、
赤地に白い斑点があるスカーフを頭に巻き、サングラスをかけて、水着姿で砂浜に座っている。
<筆者撮影>


*元陸軍中尉(Lieutenant)のフィリップ・ロンバード(Philip Lombard → 2025年10月28日付ブログで紹介済)


ジグソーパズルの上部のやや左側に、
正装したフィリップ・ロンバードが左手に拳銃を構えている場面が、赤枠で配置されている。
<筆者撮影>


*信仰心の厚い老婦人のエミリー・キャロライン・ブレント(Emily Caroline Brent → 2025年10月29日付ブログで紹介済)


ジグソーパズルの上部のやや右側に、
赤い服を着た正装したエミリー・キャロライン・ブレントが顔の前で両手を合わせている場面が、
赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>


*退役した老将軍(General)のジョン・ゴードン・マッカーサー(John Gordon Macarthur → 2025年10月30日付ブログで紹介済)


ジグソーパズルの中段の一番左端に、
愛する妻レスリー(Lesley)に思いを馳せるジョン・ゴードン・マッカーサーが、
赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>


*遊び好きで、生意気な青年のアンソニー・ジェイムズ・マーストン(Anthony James Marston → 2025年11月1日付ブログで紹介済)


ジグソーパズルの中段の右端に、サングラスをかけて、
大型スポーツカーのダルメインを運転するアンソニー・ジェイムズ・マーストンが、赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>


*元警部(Detective Inspector)のウィリアム・ヘンリー・ブロア(William Henry Blore → 2025年11月2日付ブログで紹介済)


ジグソーパズルの下段のやや右側に、
ファイティングポーズをとる正装姿のウィリアム・ヘンリー・ブロアが、赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>


の7人は、フレッド・ナラコット(Fred Narracott - 漁師)のボートに乗り、沖合いの兵隊島に上陸する。その7人を執事のトマス・ロジャーズ(Thomas Rogers → 2025年11月3日付ブログで紹介済)が出迎えた。


ジグソーパズルの上段のやや左側に、
料理人で、妻のエセル・ロジャーズに対して、何かを言い含めている夫のトマス・ロジャーズが、
赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>


なお、医師のエドワード・ジョージ・アームストロング(Edward George Armstrong → 2025年10月31日付ブログで紹介済)は、7人に遅れて、後から兵隊島に到着。


ジグソーパズルの下段の中央に、
首の後ろに右手を当てているエドワード・ジョージ・アームストロング医師が、赤枠で囲まれている。
<筆者撮影>


そして、招待主であるオーウェン夫妻が居ないまま、トマス・ロジャーズと執事の妻で、料理人のエセル・ロジャーズ(Ethel Rogers → 2025年11月4日付ブログで紹介済)の給仕を受けて、招待客8人は、食堂で夕食をとった。


食事も、そろそろ終わりだった。

料理はすばらしかったし、ワインも申し分なかった。ロジャーズの給仕も行き届いていた。

全員、機嫌がよくなっていた。前よりも気軽に言葉を交わして、会話がはずんでいる。


<中略>


突然、アンソニー・マーストンが言った。

「おかしなものがあるなあ」

丸いテーブルの中央に、ガラスの丸い台が置いてあり、それに小さな陶器の人形が並べてあった。

「兵隊か」と、アンソニーは言った。「兵隊島だからってことかな」

ヴェラが、前に乗り出した。

「もしかして - いくつあるのかしら。十個?」

「そう、十個ですね」

ヴェラは大きな声で言った。

「あら、おもしろい! これ、童謡に出てくる、十人の小さな兵隊さんじゃありませんか。わたしの部屋のマントルピースの上に、童謡が額に入れてかざってあるんですよ」

「ぼくの部屋にもですよ」と、ロンバードが言った。

「わたしの部屋にも」

「わたしのところにもです」

全員が声をそろえた。

「おもしろいアイデアじゃありません?」と、ヴェラは言った。

ウォーグレイヴ判事が、うめくようにつぶやいた。

「大人のすることとは、とても思えん」そして、自分のグラスにポートワインをついだ。

(青木 久惠訳)


食堂のテーブルの上には、
当初、10人の兵隊人形が置かれていた。 -
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版
(→ 2020年9月13日付ブログで紹介済)から抜粋。


童謡「10人の子供の兵隊」(nursery rhyme → 2025年11月14日付ブログで紹介済)の調べにのって、一人また一人と、招待客の8人と執事 / 料理人の夫婦が正体不明の何者かに殺害されていく。それに伴って、食堂のテーブルの上にある兵隊人形の数も減っていく。



兵隊島に建つ邸宅の2階にある
ヴェラ・エリザベス・クレイソーンの部屋の壁(画面左側)には、
童謡「10人の子供の兵隊」が書かれた額が掛けられている。
<筆者撮影>


Ten little soldier boys went out to dine; One choked his little self and then there were Nine.

(10人の子供の兵隊さんが、ご飯を食べに出かけた。一人が喉を詰まらせて、残りは9人になった。)


アンソニー・ジェイムズ・マーストンがブランデーが入ったグラスに投与された青酸カリによる中毒死した夜、
執事のトマス・ロジャーズが、食堂の後片付けをしていた際、
テーブルの上に置かれた兵隊の人形の数が10個から9個へと減っていることに気付く。-

HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


Nine little soldier boys sat up very late; One overslept himself and then there were Eight.

(9人の子供の兵隊さんが、夜更かしをした。一人が寝坊をして、残りは8人になった。)


妻のエセル・ロジャーズが亡くなった後、一人で朝食の準備を行ったトマス・ロジャーズは、
朝食を終えて、ゲスト達が席を立った後、食堂の後片付けをしていた際、
テーブルの上に置かれた兵隊の人形の数が9個から8個へと減っていることに気付き、
医師のエドワード・ジョージ・アームストロングに報告する-
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


Eight little soldier boys travelling in Devon; One said he’d stay and then there were Seven.

(8人の子供の兵隊さんが、デヴォン州を旅した。一人がそこに住むと言って、残りは7人になった。)


ジョン・ゴードン・マッカーサーの死亡に伴い
テーブルの上に置かれた兵隊の人形の数が8個から7個へと減っていた。-
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


Seven little soldier boys chopping up sticks; One chopped himself in halves and then there were Six.

(7人の子供の兵隊さんが、薪割りをした。一人が自分を真っ二つに割って、残りは6人になった。)


トマス・ロジャーズの死亡に伴い、
テーブルの上に置かれた兵隊の人形の数が7個から6個へと減っていた。-
HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


Six little soldier boys playing with a hive; A bumble-bee stung one and then there were Five.

(6人の子供の兵隊さんが、蜂の巣に悪戯をした。一人が蜂に刺されて、残りは5人になった。)


エミリー・キャロライン・ブレントの死亡に伴い、
テーブルの上に置かれた兵隊の人形の数が6個から5個へと減っていた。
画面左側から、ヴェラ・エリザベス・クレイソーン(秘書)、フィリップ・ロンバード(元陸軍中尉)、
ウィリアム・ヘンリー・ブロア(元警部)、エドワード・ジョージ・アームストロング(医師)、
そして、ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴ(元判事)
の5人
が立っている。-

HarperCollins Publishers 社から出ている
アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


Five little soldier boys going in for law; One got in chancery and then there were Four.

(5人の子供の兵隊さんが、法律を志した。一人が大法官府(裁判所)に入って、残りは4人になった。)


厳密に言うと、原作の場合、

ローレンス・ジョン・ウォーグレイヴが見つかったのは、応接間(1階)で、

兵隊人形が置かれているのは、食堂(1階)なので、この場面は正しくない。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


Four little soldier boys going out to sea; A red herring swallowed one and then there were Three.

(4人の子供の兵隊さんが、海へ出かけた。一人が燻製の鰊(ニシン)に呑みれて、残りは3人になった。)


原作の場合、

夜中、屋敷から外へ出て行ったエドワード・ジョージ・アームストロングの追跡が失敗に終わり、

屋敷に戻って来たフィリップ・・ロンバードとウィリアム・ヘンリー・ブロアの2人は、

食堂へ行って、兵隊人形の数が3個に減っていることを確認。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


Three little soldier boys walking in the zoo; A big bear hugged one and then there were Two.

(3人の子供の兵隊さんが、動物園内を歩いていた。一人が大きな熊に抱き締められて、残りは2人になった。)


Two little soldier boys sitting in the sun; One got frizzled up and then there was One.

(2人の子供の兵隊さんが、日光浴をしていた。一人が焼け焦げになって、残りは1人になった。)


原作の場合、フィリップ・ロンバードを射殺した後、

屋敷に戻ったヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、食堂に立ち寄り、

テーブルの上に置かれた3体の人形のうち、2体を取って、窓から外へ放り投げる。

そして、3体目の人形を手に取る。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


One little soldier boy left all alone; He went and hanged himself … And then there were None.

(1人の子供の兵隊さんが、後に残された。彼は自分で首を括って、そして、誰もいなくなった。)


原作の場合、ヴェラ・エリザベス・クレイソーンは、天井のフックからぶら下がっているロープの輪で、

自ら首を括って、自殺を遂げる。その際、最後の人形が、彼女の手から落ちる。-

HarperCollins Publishers 社から出ている

アガサ・クリスティー作「そして誰もいなくなった」のグラフィックノベル版から抜粋。


彼らを兵隊島へ招待したオーウェン夫妻とは一体何者なのか?

オーウェン夫妻であるエリック・ノーマン・オーウェン氏とユナ・ナンシー・オーウェン夫人の名前を略すと、どちらも「U. N. Owen」、つまり、「UNKOWN(招正体不明の者)」となる。

オーウェン夫妻が正体不明の殺人犯で、残された人の中に居るのか?それとも、屋敷内のどこか、あるいは、兵隊島のどこかに隠れ潜んでいるのだろうか?

恐怖が満ちる中、また一人、残された人と兵隊人形が減っていくのであった。