読後の私的評価(満点=5.0)
(1)事件や背景の設定について ☆(1.0)
本作「白蛇伝説(The White Worm)」(2016年)は、前作の「グリムスウェルの呪い(The Grimswell Curse → 2021年9月12日、9月19日および9月26日付ブログで紹介済)」(2013年)と同様に、地方に残る伝説を背景にして、それに翻弄される恋人達、そして、彼らを助けようとするシャーロック・ホームズと彼の相棒を務める彼の従兄弟で、友人でもあるヘンリー・ヴェルニール医師(Dr. Henry Vernier)という図式であるが、前回既に使用したパターンの使い回しで、2回連続して見せられても、正直、興醒めである。
前回は、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)作「バスカヴィル家の犬(The Hound of the Baskervilles)」(1901年ー1902年)と同じような舞台設定だったが、今回は、コナン・ドイル作品を彷彿とさせる要素が、全くない。
本作は、アイルランド人の小説家であるブラム・ストーカー(Bram Stoker)こと、エイブラハム・ストーカー(Abraham Stoker:1847年ー1912年)が執筆したホラー小説「白蛇の巣(The Lair of the White Worm)」(1911年)をベースにしているとのこと。ただ、事件の舞台となる英国北部の港町ウィットビー(Whitby)は、ブラム・ストーカー作「吸血鬼ドラキュラ(Draculaー2017年12月24日付ブログと同年12月26日付ブログで紹介済)」(1897年)において、ドラキュラ伯爵(Count Dracula)が英国で最初に上陸した場所として、非常に有名であり、ブラム・ストーカーの話をベースにするのであれば、ドラキュラをストーリーに絡ませた方が、まだ良かったのではないかと思う。
(2)物語の展開について 半(0.5)
前作の「グリムスウェルの呪い」とは異なり、事件の依頼を受けてから、割合と早く、ホームズとヘンリー医師の二人は、現地のウィットビーへと赴くが、そこからは、前作と全く同様に、現地に伝わる呪い / 言い伝えに苦しめられるダイアナ・マーシュ(Diana Marsh)、それにオロオロとするばかりの恋人のアダム・セルトン(Adam Selton)、そして、彼らの周りで手をこまねいているだけのホームズとヘンリー医師という図式が延々と繰り返されるだけで、事件を推理して解決するという肝心要なところが、全くない。
(3)ホームズ / ヘンリー医師の活躍について 半(0.5)
物語全般にわたって、現地に伝わる呪い / 言い伝えに苦しむヒロインとそれにオロオロするだけの情けない恋人の二人をどうすることもできないまま、ホームズとヘンリー医師は、ただただ手をこまねいているだけで、前作の「グリムスウェルの呪い」と同様に、事件の背後に潜む真相を明らかにしようとする試みが、全く見られない。
(4)総合評価 半(0.5)
物語を読み始めて直ぐに、「以前に何処かで読んだストーリーに、非常によく似ている。」と感じたが、それが、同じ作者による前作の「グリムスウェルの呪い」なのである。物語の舞台を、単にダートムーア(Dartmoor)からウィットビー(Whitby)へと変えただけ、それ以外は、基本的に、ストーリーラインはほとんど変わらない。
前作において、全く駄目駄目だった話を、懲りもせず、物語の舞台だけを変えただけで、300ページ以上に渡って、延々とくりかえす訳で、作者の意図、そして、出版社の方針について、疑わざるを得ない。
前作の「グリムスウェルの呪い」は、物語の舞台をダートムーアに置いていたため、コナン・ドイル作「バスカヴィル家の犬」を思わせる設定で、読者に対して、あらぬ期待を抱かせたが、本作には、それがなく、話が単に長いだけで、全く面白味を感じられない。
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