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「13人の招待客(Thirteen Guests)」は、英国の推理作家で、戯曲家 / 脚本家でもあったジョーゼフ・ジェファーソン・ファージョン(Joseph Jefferson Farjeon:1883年ー1955年)が1936年に発表した推理小説である。
ジョーゼフ・ジェファーソン・ファージョンは、1883年6月4日、ロンドンのハムステッド地区(Hampstead→2018年8月26日付ブログで紹介済)内に出生。彼は、母方の祖父に該る米国人の俳優であるジョーゼフ・ジェファーソン(Joseph Jefferson)から、名前をもらっている。彼の父親であるベンジャミン・レオポルド・ファージョン(Benjamin Leopold Farjeon:1838年ー1903年)は、ロンドンのホワイトチャペル地区(Whitechapel)出身の小説家、戯曲家、画家、ジャーナリストで、俳優でもあった。
ジョーゼフ・ジェファーソン・ファージョンは、新聞社 / 出版社に10年程勤務した後、フリーになり、1920年代から1950年代にかけて、60作を超える推理小説を発表している。
彼の作品のうち、特に有名なのは、戯曲「ナンバー17(Number 17)」(1925年)で、1932年に、英国の映画監督 / プロデューサーであるサー・アルフレッド・ジョーゼフ・ヒッチコック(Sir Alfred Joseph Hitchcock:1899年ー1980年)により、「Number Seventeen」として映画化されている。
大英図書館(British Library)が発行する British Library Crime Classics の一つに加えられている ジョーゼフ・ジェファーソン・ファージョン作「13人の招待客」の裏表紙 |
秋のある晴れた金曜日の午後、フレンシャム駅(Flensham Station)に午後3時28分着の列車から、若き未亡人のネイディーン・レヴァリッジ(Nadine Leveridge)がプラットフォームに降り立った。第5代男爵で、保守党の政治家でもあるアヴェリング卿(Lord Aveling)が週末に鹿狩りを行う予定で、彼が所有する邸であるブラグリーコート(Bragley Court)へと招待されていた。
同じ列車に乗っていた若き男性のジョン・フォス(John Foss)は、網棚からスーツケースを取り、降車しようとしていたが、目的の駅に到着したことに彼が気付くのが遅かったため、生憎と、列車は駅から出発すべく、既に動き出していた。ジョン・フォスは、持っていたスーツケースを駅のプラットフォームへと放り投げたが、自分自身の着地がうまくいかず、足をひどく捻って、負傷してしまう。
事の一部始終を見ていたネイディーン・レヴァリッジは、駅まで彼女を出迎えに来ていたアヴェリング卿の運転手アーサー(Arthur)に頼んで、負傷したジョン・フォスを地元のL・G・プウドロウ(Dr. L. G. Pudrow)の診療所へと搬送したものの、プウドロウ医師は、アヴェリング卿の妻レディー・アヴェリング(Lady Aveling)の母親であるモリス夫人(Mrs. Morris)の診察のため、ブラグリーコートへと赴いていることが判り、ネイディーン・レヴァリッジは、再度、アーサーに依頼して、自分の行き先であるブラグリーコートへ、ジョン・フォスを運んでもらう。
ネイディーン・レヴァリッジが事情を説明した結果、アヴェリング卿の快諾の下、ブラグリーコートへと運ばれたジョン・フォスは、プウドロウ医師による手当を受けた後、週末の招待がないにもかかわらず、負傷からの静養を兼ねて、週末、同邸に滞在できる運びとなった。
ブラグリーコートには、
(1)アヴェリング卿
(2)レディー・アヴェリング
(3)アン・アヴェリング(Anne Avelingーアヴェリング卿夫妻の娘で、乗馬好き)
(4)モリス夫人(病気療養中なるも、あまり思わしくない)
が暮らしていた。
当初、ブラグリーコートには、以下の12名がアヴェリング卿によって招待されていた。
(1)ハロルド・タヴァリー(Harold Taverley:サセックス州(Sussex)出身のクリケット選手で、ネイディーン・レヴァリッジの亡くなった夫の友人)
(2)レスター・プラット(Leicester Pratt:画家)
(3)ロウ氏(Mr. Rowe:引退した商人)
(4)ロウ夫人(Mrs. Rowe)
(5)ルース・ロウ(Ruth Rowe:ロウ夫妻の娘)
(6)エディス・フェルモイ=ジョーンズ(Edyth Fermoy-Jones:推理作家)
(7)サー・ジェイムズ・アーンショウ(Sir James Earnshaw:自由党の政治家)
(8)ゼナ・ワイルディング(Zena Wilding:女優)
(9)ライオネル・ボルディン(Lionel Baldin:コラムニスト)
(10)チャター氏(Mr. Chater:サー・ジェイムズ・アーンショウの知り合いで、後援者)
(11)チャター夫人(Mrs. Chater)
(12)ネイディーン・レヴァリッジ
上記の12名の招待客に、ジョン・フォスが突然加わったため、招待客の数が不吉な13名となってしまった。
それに呼応するように、画家のレスター・プラットが描いたアン・アヴェリングの肖像画が何者かにナイフで切り裂かれ、アヴェリング卿の飼い犬であるヘイグ(Haig)が何者かにナイフで刺し殺されるという謎の事件が続く。
そして、翌日、ブラグリーコートの近くで、身元不明の男性の絞殺死体が発見される。どうも、この男性は、昨日、フレシャム駅に到着した女優のゼネ・ワイルディングにプラットフォームで話しかけていた人物らしいことが判った。
ブラグリーコートへ、スコットランドヤード CID (犯罪捜査課)のケンダル警部(Inspector Kendall)が派遣される。早速、ケンダル警部は、絞殺死体で発見された身元不明の男性とブラグリーコートに滞在している招待客との関連性を調べ始めるが、今度は、週末の鹿狩りの際、招待客の一人が殺害されるという事件まで発生するのであった。
物語の前半、割合と、ジョン・フォスとネイディーン・レヴァリッジを中心にして、話が進み、それにブラグリーコートの住人や招待客が入れ替わり関与していくので、彼ら二人が探偵役を務めるのかと思った。ところが、いろいろと事件が起き、身元不明の男性の絞殺死体が発見されて、ケンダル警部が現場に派遣されてくると、彼ら二人はあまり表舞台には登場せず、物語の後半、影が薄くなってしまった。そうかと言って、物語の後半、ケンダル警部が劇的に活躍する訳でもない。それに加えて、登場人物の数が非常に多いので、物語全般が散漫になってしまい、初期設定の割りには、物語の後半、話が躍動せず、あまりパッとしない印象が強い。
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