2020年11月22日日曜日

アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人」<グラフィックノベル版>(Murder on the Orient Express by Agatha Christie ) - その2

物語の終盤、ポワロが容疑者全員を集めて、犯人を指摘する。


オリエント急行がイスタンブールを出発して、被害者のラチェットこと、カセッティが何者かに滅多刺しにされて殺害されるまでの前段は、青色、紫色や黄色等を主体としたややパステル調のカラーリングで物語が進むが、意外に、これらの色彩がストーリーに合っていると、個人的に思う。


ラチェットの死体が発見された中段から後段にかけて、ポワロによる10人を超える容疑者の尋問が続く。本作品おの場合、降雪のため、動けないオリエント急行の車輌内が舞台となる上に、尋問がずーっと続くため、アガサ・クリスティーの原作、映画や TV ドラマ等を含めて、大きな展開がないので、どうしても物語が停滞しがちである。

グラフィックノベル版の場合、車輌の内だけではなく、外から見たシーンも所々挿入して、視点を変えた場面を繰り返すことで、停滞しがちな物語を割合とうまく進めている。

ただ、容疑者の数が非常に多い関係上、また、ページ数(46ページ)の制約上、各人の尋問が1ページ、もしくは、2ページで作画されているのが、やや残念である。場合によっては、半ページ程度の尋問で済ませられている容疑者も居る。


物語の終盤、ポワロが容疑者全員を集めて、犯人を指摘する場面があるが、ここで数々の作画上のミスが多発しており、大きな不満が残る。正直ベース、全面的な修正をお願いしたい。


(1)画面右手前から、ピエール車掌、アンドレニ伯爵夫人(Countess Andrenyi)、ハバード夫人(Mrs Hubbard)、そして、アンドレニ伯爵(Count Andrenyi)と並んで座っているが、その後、ピエール車掌とアンドレニ伯爵夫人が居なくなり、何故か、その場所にテーブルが急に出現している。更に、何も置いてなかったテーブルの上に、証拠品らしきものも出現する。更に、ハバード夫人の横に、アンドレニ伯爵夫人は戻るものの、ピエール車掌が座っていた場所は、テーブルに置き換わったままである。最後には、アンドレニ伯爵夫人が、再度姿を消してしまう。

当初は、画面右手前から、ピエール車掌、アンドレニ伯爵夫人、ハバード夫人、
そして、アンドレニ伯爵と並んで座っている。


シーンの途中で、
ピエール車掌とアンドレニ伯爵夫人の二人が姿を消して、
そこにテーブルが出現する。


ピエール車掌とアンドレニ伯爵夫人の二人が姿を消した後に
出現したテーブルの上に、証拠品等が急に現れる。


その後、ハバード夫人の横に、アンドレニ伯爵夫人は戻ってくるが、
ピエール車掌が座っていた場所には、テーブルが残ったままである。


ハバード夫人の横に戻ってきたアンドレニ伯爵夫人は、最後には、再度、姿を消してしまう。


(2)画面右手奥には、ドラゴミロフ公爵夫人(Princess Dragomiroff)が座り、彼女の右後ろには、アントニオ・フォスカレリ(Antonio Foscarelli)が、彼女の左後ろには、ヒルデガード・シュミット(Hildegarde Schmidt)が立っている。ドラゴミロフ公爵夫人が座るテーブルの一つ前のテーブルの上には、数々の証拠品が並べられ、ポワロがそれらについて説明している。シーンが進むと、証拠品が置かれたテーブルには、椅子がないにもかかわらず、フォスカレリが急に着席している。シーンの最後には、彼は再度ドラゴミロフ公爵夫人の右後ろに立っている。更に、テーブルの上に置かれた証拠品が、場面によっては、全て消えたり、数が急に増えたりしている。


当初は、画面右手奥には、ドラゴミロフ公爵夫人が座り、
彼女の右後ろには、アントニオ・フォスカレリが、
彼女の左後ろには、ヒルデガード・シュミットが立っている。


シーンの途中で、ドラゴミロフ公爵夫人が座っているテーブルの一つ前のテーブルに、
椅子がないにもかかわらず、
アントニオ・フォスカレリが移動して、座っている。
その上、そのテーブルの上にあった証拠品がなくなっている。


その後、そのテーブルの上に、証拠品が戻ってくるが、
数が大幅に増えている。


最後には、アントニオ・フォスカレリは、再度、
ドラゴミロフ公爵夫人の右後ろに戻って、立っている。


(3)画面左手奥には、左手からエドワード・ヘンリー・マスターマン執事(Edward Henry Masterman)、そして、ブック氏(Mr Bouc)が立っているが、途中で、マスターマン執事が急に姿を消してしまい、その後、再度現したりする。


当初は、画面左手奥には、
左手からエドワード・ヘンリー・マスターマン執事、
そして、ブック氏が立っている。


シーンの途中で、エドワード・ヘンリー・マスターマン執事が、姿を消してしまう。


最後には、エドワード・ヘンリー・マスターマン執事は、元に戻ってくる。


(4)画面左手中央には、奥から、テーブル、グレタ・オルソン(Greta Ohisson)、テーブル、そして、メアリー・デベナム(Mary Debenham)と並んでいる。途中で、一番奥のテーブルが消え失せたり、彼女達が座る椅子の背が消失している。また、メアリー・デベナムの椅子の後ろには、アーバスノット大佐(Colonel Arbuthnot)が立ち、彼女の肩の上に手を置いているが、途中、アーバスノット大佐がコンスタンティン医師(Dr Constantine)に変わり、更に、テーブルとテーブルの間に挟まれていて、物理的に移動不可能なグレタ・オルソンの椅子の後ろへと、アーバスノット大佐に戻った上で移動して、彼女の肩の上に手を置いている。そして、最終的には、アーバスノット大佐は、彼女達2人の後ろから姿を消してしまい、画面上、どこにも居なくなっている。更に、グレタ・オルソンとメアリー・デベナムの間にあるテーブルも、途中で姿を消した後、最後には、元に戻っている。


当初は、画面左手中央には、
奥から、テーブル、グレタ・オルソン、テーブル、
そして、メアリー・デベナムと並んでいる。


当初は、メアリー・デベナムが座っている椅子の後ろに、
アーバスノット大佐が立っている。


途中で、メアリー・デベナムが座っている椅子の後ろに
立っている人物が、
アーバスノット大佐から
コンスタンティン医師へと変わる。
また、グレタ・オルソンの奥にあったテーブルと、
メアリー・デベナムの手前にあったテーブルの両方が、姿を消している。


更に、コンスタンティン医師からアーバスノット大佐に戻った人物が、
メアリー・デベナムが座っている椅子の後ろから、
何故か、グレタ・オルソンの椅子の後ろへと移動している。


最後には、アーバスノット大佐が、完全に姿を消してしまう。


(5)画面左手前には、ヘクター・マックイーン(Hector MacQueen)が座っている。彼は、黄色 / オレンジ色のスーツを着ているが、途中でポワロに話しかけるシーンでは、緑色のスーツに変わっている。最後には、黄色 / オレンジ色のスーツに戻っているが、黒い蝶ネクタイがなくなっている。


画面左手前に座っているヘクター・マックイーンは、
当初、黄色 / オレンジ色のスーツを着ている。


ところが、シーンの途中で、ヘクター・マックイーンが着ているスーツの色が、
黄色 / オレンジ色から緑色へと変わる。


最後には、黄色 / オレンジ色のスーツに戻っているが、黒い蝶ネクタイがなくなっている。


(6)サイラス・ハードマン(Cyrus Hardman)は、ポワロが容疑者全員を集めて、犯人を指摘する場面において、ほとんど姿を見せない。多分、彼は、画面左手前に座っているヘクター・マックイーンの手前の窓際に立っているものと思われる。一度だけ、その人物の頭だけが、シーンに出てくる。サイラス・ハードマンは、白髪であるにもかかわらず、この人物の髪の毛は黒いのである。これは、コンスタンティン医師なのだろうか?ただし、コンスタンティン医師は、画面右手の一番前に、立っているように見える。 


ヘクター・マックイーンの左手前に立っている人物が、
当該場面において、ほとんど姿を見せないサイラス・ハードマンと思われる。


ところが、サイラス・ハードマンは、白髪であって、黒髪ではない。


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