2019年12月14日土曜日

北原尚彦作「シャーロック・ホームズの蒐集」(’The Collection of Sherlock Holmes’ by Naohiko Kitahara)–その2

「シャーロック・ホームズの蒐集」の創元推理文庫版の表紙
カバーイラスト: 鈴木 康士氏
           カバーデザイン: 岩郷 重力氏+K.K

日本のミステリー/SF/ホラー小説家、翻訳家で、古書研究家でもある北原尚彦氏(1962年ー)は、「シャーロック・ホームズの蒐集(The Collection of Sherlock Holmes)」を執筆する際、「シャーロック・ホームズの功績(The Exploits of Sherlock Holmes)」を一番手本にしたと語っている。

「シャーロック・ホームズの功績」は、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)の息子(三男)で、レーサー、探検家、そして、作家でもあったエイドリアン・マルコム・コナン・ドイル(Adrian Malcolm Conan Doyle:1910年ー1970年)とサー・アーサー・コナン・ドイルに傾倒して、彼の評伝「コナン・ドイル」を執筆し、1950年に MWA 賞を特別賞を受賞した米国の推理作家で、アンリ・バンコラン(Henri Bencolin)シリーズ、ギディオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)シリーズやヘンリー・メリヴェール卿(Sir Henry Merrivale)シリーズ等で知られるジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)の二人が合作して、1954年に刊行したシャーロック・ホームズのパスティーシュである。

エイドリアン・コナン・ドイルとジョン・ディクスン・カーは、サー・アーサー・コナン・ドイルの正典において言及されていた「語られざる事件」の中から12編を選び、正典を仔細に研究し、詳細な設定をした上で、1952年から1953年にかけて執筆を行なった。
ただし、ジョン・ディクスン・カーが途中でエイドリアン・コナン・ドイルと執筆方針で喧嘩をした挙句、彼が当時患っていた病気により体調が芳しくなかったため、12編のうち、6編が完成した段階で、執筆から降りてしまった。そのため、残りの6編については、エイドリアン・コナン・ドイルが単独で書き上げている。

上記のような経緯はあったものの、「シャーロック・ホームズの功績」は、正典の記録者であるジョン・H・ワトスンによる筆致そのままの上質なパスティーシュと、一般に評価されている。

0 件のコメント:

コメントを投稿