2019年12月28日土曜日

山本周五郎作「シャーロック・ホームズ」–その3

地下鉄ベーカーストリート駅(Baker Street Tube Station)内の
ジュビリーライン(Jubilee Line)のプラットフォームの壁に描かれた
シャーロック・ホームズシリーズ7作品のうちの一つである「四つの署名」

初出:リピンコット・マンスリー・マガジン(米)1890年2月
事件の発生:1888年9月
収録:四つの署名

「樅の木は残った」(1954年ー1958年)、「赤ひげ診療譚」(1958年)、「五辯の椿」(1959年)、「青べか物語」(1960年)や「季節のない街」(1962年)等の作品(特に、時代小説ー市井に生きる
庶民や名もなき流れ者を書いた作品)で知られる日本の小説家である山本周五郎(本名:清水三十六 1903年ー1967年)が、新少年」の1935年12月別冊附録に発表した「シャーロック・ホームズ」というホームズのパスティーシュでは、

・異民族が残した莫大な財宝をめぐって、殺人事件が起きること
・その財宝の隠し場所について、四人の人物が関与していること
・物語内で発生する殺人事件において、異民族が使う毒矢が使用されていること

等があり、サー・アーサー・イグナティウス・コナン・ドイル(Sir Arthur Ignatius Conan Doyle:1859年ー1930年)によるシャーロック・ホームズシリーズの長編第2作である「四つの署名(The Sign of the Four→2017年8月12日付ブログで紹介済)」(1890年)を、物語の基本設定にそのまま使っている。

1993年10月12日に、英国のロイヤルメール(Royal Mail)が発行した
「シャーロック・ホームズ生還100周年記念切手」
5種類のうちの一つである「最後の事件」

初出:「ストランドマガジン」(英)1893年12月
事件の発生:1891年4月–1891年5月
収録:シャーロック・ホームズの回想

物語の中盤過ぎ、ロンドン警視庁(スコットランドヤード)のお尋ね者であるディック・ドノバンの奸計にはまったシャーロック・ホームズは、真田男爵の別荘がある軽井沢の滝壺へ転落して、一時死亡したものと見做されるが、これは、同じく、「最後の事件(The Final Problem→「シャーロック・ホームズの回想(The Memoir of Sherlock Holmes)」(1893年)に収録)」をベースにしている。
スイスのライヘンバッハの滝が日本の軽井沢の滝に、そして、ホームズと一緒に滝壺へは転落しないものの、犯罪界のナポレオンであるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)が英国の犯罪王であるディック・ドノバンに置き換えられている。

また、物語の中盤の後半において、本牧の岬でホームズと凡太郎が乗る船舶が敵側の船舶を追撃する場面があるが、これは、前述の「四つの署名」のクライマックスシーンに該るテムズ河(River Thames)での船舶同士のチェイスが再現されている。

地下鉄ベーカーストリート駅(Baker Street Tube Station)内の
ジュビリーライン(Jubilee Line)のプラットフォームの壁に描かれた
シャーロック・ホームズシリーズ7作品のうちの一つである「まだらの紐」

初出:ストランドマガジン(英)1892年2月
事件の発生:1883年4月
収録:シャーロック・ホームズの冒険

そして、物語の終盤には、ホームズシリーズの中でも最も有名な短編の一つである「まだらの紐(The Speckled Band→「シャーロック・ホームズの冒険(The Adventures of Sherlock Holmes)」(1892年)に収録)」のストーリーが、ほぼ全て取り入れられているのである。

忘れてはいけないのは、今回、ホームズの助手となって活躍するホームレスの少年である凡太郎は、少年向けの物語であることに加えて、コナン・ドイル原作の「ベーカーストリート遊撃隊(Baker Street Irregulars)」の設定を踏まえていると言える。

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