2019年7月5日金曜日

<第500回> シャーロック・ホームズ最後の事件(The Last Sherlock Holmes Story)–その3

シャーロック・ホームズ最後の事件
(The Last Sherlock Holmes Story)

著者: Michael Dibdin 1978年
出版: Faber and Faber Limited 1990年
(Cover design : Faber)
(Cover image : RPS / Science & Society Picture Library)

<読後の私的評価(満点=5.0)>

(1)事件や背景の設定について ☆☆☆☆☆(5.0)

シャーロック・ホームズは架空の人物で、切り裂きジャック(未だに正体は不明なるも)は実在の人物という違いはあるが、ホームズが諮問探偵として活躍した時代と切り裂きジャックが凶行を働いた1888年は、世紀末のロンドンを介して、オーバーラップしている。推理作家であれば、そして、ホームズファンであれば、誰でも一度は自分で実現させたい「ホームズ対切り裂きジャック」という一大テーマである。また、ホームズは、切り裂きジャックの正体を「ロンドン市内の犯罪者達を背後から操るだけでは飽き足らなくなって、遂に自ら犯罪に手を染めることになった」あのジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)と考えており、ホームズが挑む事件としては、申し分ないと言える。

(2)物語の展開について ☆☆☆☆(4.0)

ロンドンのホワイトチャペル地区(Whitechapel)を恐怖のどん底に落とし入れたモリアーティー教授 / 切り裂きジャックの正体は、一体誰なのか?物語の最後というか、後半以降、ホームズファンにとって、悪夢のような話が展開する。物語の登場人物が極めて限定されており、物語の大部分は、ホームズとJ・H・ワトスンを主軸に進んでいく。それ故に、物語を読み進んでいく過程で、気持ち的に、非常に息苦しい感じを覚える。

シャーロック・ホームズ最後の事件
(The Last Sherlock Holmes Story)

著者: Michael Dibdin 1978年
出版: Oxford University Press 2008年
(Cover image : Arcangel Images)

(3)ホームズ / ワトスンの活躍について ?(判定不能)

物語の最後に待ち構えているのは、ホームズファンにとっては、あまりにも衝撃的で、尚且つ、その内容は、たった一度限りの禁じ手である。よって、ホームズとワトスンの活躍度を評価するのは、今回は不可能と言える。

(4)総合評価 ☆☆☆☆(4.0)

正直ベース、本作品がホームズファンに受け入れられるか否か、非常に疑問である。物語の最後があまりにも衝撃的過ぎるからである。たった一度限りの禁じ手ではあるが、エドワード・B・ハナ(Edward B. Hanna)が1992年に執筆した「ホワイトチャペルの恐怖(The Whitechapel Horrors→2014年4月20日付ブログで紹介済)」に比べれば、物語を説明がつく結末にキチンと導いているので、それなりに評価したいと思う。物語の終盤、ある人物が発する「君を傷つけさせない。彼に君への手出しをさせはしない。(You shall not be hurt. I shallnot let him hurt you.)」というセリフがあるが、読後に何度思い返しても、あまりにも切ない言葉である。

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