2番目に紹介するシャーロック・ホームズ生還100周年記念切手は、「ギリシア語通訳(The Greek Interpreter)」である。「ギリシア語通訳」は、56あるホームズシリーズの短編のうち、サー・アーサー・コナン・ドイルが22番目に発表した作品で、英国では「ストランドマガジン(The Strand Magazine)」の1893年9月号に、また、米国では「ハーパーズ ウィークリー(Harper's Weekly)」の1893年9月10日号に掲載された。その後、同作品は、同年に出版された第2短編集となる「シャーロック・ホームズの回想(The Memoirs of Sherlock Holmes)」に収録されている。
本作品において、ホームズシリーズの記録者であるジョン・H・ワトスンが、シャーロック・ホームズの兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)に初めて出会うのである。
ある水曜日の夕刻、シャーロック・ホームズとジョン・ワトスンの二人は、パル・マル通り(Pall Mallー2016年4月30日付ブログで紹介済)にある「ディオゲネスクラブ(Diogenes Club)」を訪れる。そこで兄のマイクロフト・ホームズに会ったシャーロックは、兄の隣人で、主にギリシア語通訳を生活の糧にしているメラス氏(Mr Melas)を紹介された。メラス氏によると、2日前、つまり、月曜日の夜に非常に恐ろしい体験をして、その件でシャーロックに捜査をお願いしたいと言う。
メラス氏の説明によると、当夜、彼は上流階級風の身なりをした青年ラティマー氏(Mr Latimer)から通訳の依頼を受け、ラティマー氏が戸口に待たせていた辻馬車に一緒に乗って、パル・マル通りからケンジントン(Kensington)へと出発した。ところが、辻馬車はチャリングクロス交差点(Charing Crossー2016年5月25日付ブログで紹介済)を抜けて、シャフツベリーアベニュー(Shaftesbury Avenueー2016年5月15日付ブログで紹介済)経由、オックスフォードストリート(Oxford Streetー2016年5月28日付ブログで紹介済)へと達する。これでは、ロンドンの西部に位置するケンジントンとは反対方向へ、辻馬車は進んでいることになってしまう。メラス氏が胸の内で生じた疑念を吐露すると、ラティマー氏は鉛の入った棍棒を急に取り出し、メラス氏を脅すのであった。そして、メラス氏は、2時間近く馬車に乗せられたまま、秘密の場所へ連れて行かれた。そこで、メラス氏は、やせ衰えて口に大きな絆創膏を貼られたギリシア人紳士に対して、何かの書類へのサインを強要する通訳をさせられることになった。その途中、ドアが開いて、背の高い黒髪の女性が部屋に入って来た。お互いをポール・クラティデス(Paul Kratides)とソフィー(Sophy)と呼ぶ二人は、謎の青年ラティマー氏達に誘拐されて、身柄を拘束されているようである。その直後、全く事情が判らないメラス氏は再度馬車に乗せられ、見知らぬ場所で降ろされたのであった。
その後の進展を尋ねるシャーロックに対して、マイクロフトは「ポール・クラティデスとソフィーの居処を照会する新聞広告を既に手配した。」と答える。シャーロックとワトスンの二人はディオゲネスクラブを出て、本件について話をしながら、歩いてベーカーストリート221Bに戻ったところ、部屋の中にはマイクロフトが既に居て、肘掛け椅子で煙草を吹かしていた。
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