2016年2月21日日曜日

ロンドン デベナムハウス(Debenham House)

デベナムハウス外観ー青色や緑色のレンガが鮮やかに輝いている

アガサ・クリスティー作「ひらいたトランプ(Cards on the Table)」(1936年)は、エルキュール・ポワロが謎多き裕福な蒐集家であるシャイタナ氏(Mr Shaitana)からブリッジパーティーへの招待を受けるところから、物語が始まる。「まだ告発されていない殺人犯を招いた上でのパーティーだ。」と言うシャイタナ氏の趣旨に興味を覚えたポワロは、パーティーへの参加を決める。


シャイタナ氏の自宅で行われたパーティーに招待されたのは、以下の8人だった。
(1)探偵組
*エルキュール・ポワロ
*バトル警視(Superintendent Battle)ースコットランドヤードの警察官
*レイス大佐(Colonel Race)ー秘密情報局の情報部員
*アリアドニ・オリヴァー夫人(Mrs Ariadne Oliver)ー女流推理作家
(2)容疑者組
*ロバーツ医師(Dr Roberts)ー成功をおさめた中年の医師
*ロリマー夫人(Mrs Lorrimer)ーブリッジ好きな初老の女性
*デスパード少佐(Major Despard)ー未開地を探索する探検家
*アン・メレディス(Anne Meredith)ー内気で若く麗しい女性


食事の最中、シャイタナ氏はパーティーの出席者に対して、謎めいた告発を行う。そして、食事が済むと、容疑者組の4人はメインルーム(客間)で、また、探偵組の4人は別の部屋でブリッジを始めることとなった。シャイタナ氏はメインルームの暖炉の側に置かれた椅子を自分の居場所として、ブリッジへの参加を辞退する。
ブリッジが終わり、ポワロとレイス大佐がシャイタナ氏に暇を告げようとした際、彼らはシャイタナ氏が彼の蒐集品であるナイフで胸を刺されて死んでいるのを発見する。


果たして、シャイタナ氏が謎めいた告発をした対象の人物は誰だったのか?そして、その人物がシャイタナ氏を刺殺したのだろうか?
名探偵、警察官や情報部員等が同席しているパーティーの最中、大胆にも行われた犯行を解き明かすべく、ポワロの灰色の脳細胞が、ブリッジの点数表の内容にその糸口を見いだすのであった。


英国のTV会社ITV1で放映されたポワロシリーズ「Agatha Christie's Poirot」の「ひらいたトランプ」(2006年)の回では、シャイタナ氏が住む屋敷ピーコックハウス(Peacock House)として、ケンジントン&チェルシー王立区(Royal Borough of Kensington and Chelsea)内にある「デベナムハウス(Debenham House)」が撮影に使用されている。

デベナムハウスの入口
(アディソンロード8番地)

デベナムハウスは、北側は地下鉄ホーランドパーク駅(Holland Park Tube Station)経由、地下鉄ノッティングヒルゲート駅(Notting Hill Gate Tube Station)と地下鉄シェファーズブッシュ駅(Shepherd's Bush Tube Station)を結ぶホーランドパークアベニュー(Holland Park Avenue)に、東側はホーランドパーク(Holland Park)に、南側は地下鉄ハイストリートケンジントン駅(High Street Kensington Tube Station)と地下鉄ハマースミス駅(Hammersmith Tube Station)を結ぶケンジントンハイストリート(Kensington High Street)に、そして、西側はホーランドロード(Holland Road)に囲まれた一帯内に位置しており、ホーランドロードの東側に並行して南北に延びるアディソンロード(Addison Road)沿いに建っている。具体的な住所は、アディソンロード8番地(8 Addison Road)である。

オックスフォードストリート(Oxford Street)沿いに建つ
デベナムデパート

デベナムハウスは、デベナム(Debenham)デパートのオーナーであるサー・アーネスト・リドリー・デベナム(Sir Ernest Ridley Debenham:1865年ー1952年)の依頼に基づいて、英国の建築家ホールジー・リカルド(Halsey Ricardo:1854年ー1928年)により1905年から1907年のかけて建設された。
建物の外観はイタリア式に、そして、内装はウィリアム・モリス(William Morris:1834年ー1896年)が主導したアーツ・アンド・クラフト運動(Arts and Craft Movement:美術工芸運動)式で施工されている。建物の外観を覆う青色や緑色のレンガが鮮やかに輝いており、周辺の住宅の中でも、ひと際目立っている。


サー・アーネスト・リドリー・デベナムの死後、この建物は売却されたが、以前の持ち主に因んで、「デベナムハウス」と呼ばれるようになった。

現在、建物を囲う門や塀等が改装中のため、ポワロシリーズのような写真をお見せできないのが残念である。ただし、外観のレンガは未だに顕在である。

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