2015年9月27日日曜日

ロンドン アンバサダーズ劇場(Ambassadors Theatre)

アンバサダーズ劇場の全景—現在、「ストンプ」の公演がロングランを続けている

現在、63年目のロングランに入っているアガサ・クリスティー作の戯曲版「ねずみとり(The Mousetrap)」が上演されている場所としては、セントマーティンズ劇場(St. Martin's Theatre)が有名であるが、「ねずみとり」が初演されたのは、セントマーティンズ劇場ではなく、その隣に建つアンバサダーズ劇場(Ambassadors Theatre)である。

アンバサダーズ劇場とセントマーティンズ劇場の間の小道
タワーコート(Tower Court)

アンバサダーズ劇場は、ロンドン中心部のシティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)のソーホー地区(Soho)内にあり、ウェストストリート(West Street)沿いに建っている。その収容人数は約450名で、ウェストエンド内でも規模が小さい劇場の一つである。
アンバサダーズ劇場は、隣に建つセントマーティンズ劇場と一緒に、劇場の設計者であるウィリアム・ジョージ・ロバート・スプラーグ(William George Robert Sprague:1863年ー1933年)によって建設され、1913年6月5日にオープンした。一方、セントマーティンズ劇場の場合、第一次世界大戦(1914年ー1918年)の勃発により工事が遅延して、オープンを迎えたのは、約3年半後の1916年11月23日であった。

タワーコートを間にして、アンバサダーズ劇場と
セントマーティンズ劇場は隣り合っている

1939年の映画「風と共に去りぬ(Gone with the Wind)」のケイティー・スカーレット・オハラ(Katie Scarlett O'Hara)役で有名な英国女優のヴィヴィアン・リー(Vivien Leigh:1913年ー1967年)は、アンバサダーズ劇場で上演された「美徳の仮面(The Mask of Virtue)」(1935年)に出演して、ウェストエンドでのデビューを果たしている。この演技が、彼女の後の夫となるローレンス・オリヴィエ(Laurence Olivier:1907年ー1989年)の目に留まり、賞賛を受けている。
アガサ・クリスティー作の戯曲版「ねずみとり」は、アンバサダーズ劇場において、1952年11月25日に初演され、1974年11月3月23日(土)までの21年間強にわたり、公演が行われた。翌週の同年3月25日(月)からは、隣のセントマーティンズ劇場へと、「ねずみとり」はその公演の場を移したのである。公演の場が移った理由としては、「ねずみとり」がロングランを続け、アンバサダーズ劇場よりも収容人数が多いセントマーティンズ劇場が選ばれたようである。
その後、アンバサダーズ劇場において、各種の演目が行われ、現在は、本来楽器ではないものを使って行うアクロバティクなコンサート「ストンプ(Stomp)」が2007年10月4日からのロングランを続けている。

ウェストストリートを南側から見たところ—
右手前がセントマーティンズ劇場、その奥がアンバサダーズ劇場、
また、左手奥が有名なレストラン「The Ivy」

アンバサダーズ劇場は、1975年3月にイングリッシュヘリテージ(English Heritage)によって「グレードⅡ(Grade Ⅱ)」の指定を受け、建物保護の対象となっている。

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