2015年9月12日土曜日

ロンドン カーゾンストリート(Curzon Street)

カーゾンストリートの中間辺りから西側を望む—
右側の通りはクイーンストリート(Queen Street)

発表時期で言うと、一番最後のシャーロック・ホームズ物語となるサー・アーサー・コナン・ドイル作「ショスコム オールドプレイス(Shoscombe Old Place)」の冒頭、シャーロック・ホームズは、ジョン・ワトスンにサー・ロバート・ノーバートン(Sir Rober Norberton)のことを尋ねる。


彼(ホームズ)は、イライラしながら、自分の時計に目をやった。「新しい依頼者が来ることになっているんだが、遅れているようだな。ところで、ワトスン、君は競馬のことには明るいかい?」
「当たり前さ。何故なら、傷痍年金の半分位を競馬につぎ込んでいるからね。」
「それでは、君に僕の『競馬案内』になってもらおう。サー・ロバート・ノーバートンとは、何者なんだい?この名前を聞いて、何か思い当たることはあるかい?」
「ああ、知っているよ。彼はショスコムオールドプレイスに住んでいる。僕は、夏の間、そこで一度過ごしたこおtがあるから、その土地のことはよく知っているんだ。ノーバートンは、一度あやうく君の担当領域に足を踏み入れかけたのさ。」
「どんな風にだい?」
「彼はニューマーケットヒースでサム・ブルーワーを馬の鞭でしたたかに打ち据えたんだ。サム・ブルーワーは、有名なカーゾンストリートの金貸しだ。彼はもう少しでサム・ブルーワーを殺すところだったよ。」
「成る程、面白そうな男だな!」

カーゾンストリート沿いに置かれた植栽
カーゾンストリート沿いに建つサウジアラビア大使館の裏側

He looked impatiently at his watch. 'I had a new client calling, but he is overdue. By the way, Watson, you know something of racing?'
'I ought to. I pay for it with about half my wound pension.'
'Then I'll make you my Handy Guide to the Turf. What about Sir Robert Norberton? Does the name recall anything?'
'Well, I should say so. He lives at Shoscombe Old Place, and I know it well, for my summer quarters were down there once. Norberton near came within your province once.'
'How was that ?'
'It was when he horsewhipped Sam Brewer, the well-known Curzon Street moneylender, on Newmarket Heath. He nearly killed the man.'
'Ah, he sounds interesting!'

ハーフムーンストリート(Half Moon Street)が
カーゾンストリートに交差したところから西側を望む
ハーフムーンストリートから見た
カーゾンストリート沿いに建つ
Third Church of Christ Scientist

サー・ロバート・ノーバートンに馬の鞭で打ち据えられた金貸しサム・ブルーワー(Sam Brewer)の店があったカーゾンストリート(Curzon Street)は、ロンドン中心部のシティー・オブ・ウェストミンスター区(City of Westminster)の高級地区メイフェア(Mayfair)内に位置している。カーゾンストリートは、ピカデリーサーカス(Piccadilly Circus)から地下鉄グリーンパーク駅(Green Park Tube Station)の前を通りハイドパークコーナー(Hyde Park Corner)へ向かって西に延びるピカデリー通り(Piccadilly)の北側に並行して走っており、東側はバークリースクエア(Berkeley Squareー「高名な依頼人(The Illustrious Client)」で紹介済)から始まり、西側はパークレーン(Park Laneー「空き家の冒険(The Empty House)」で紹介済)で終わる通りである。

ハーフムーンストリートが
カーゾンストリートに交差したところから東側を望む
ボルトンストリート(Bolton Street)が
カーゾンストリートに交差したところから東側を望む

カーゾンストリートは、当初、メイフェアロウ(Mayfair Row)と呼ばれ、貴族階級が多く住んでいた。第3代ハウ子爵(3rd Viscount Howe)で、のちの第2代ハウ伯爵ジョージ・オーガスタス・フレデリック・ルイス・カーゾン・ハウ(George Augustus Frederick Louis Curzon-Howe, 2nd Earl Howe:1821年ー1876年)の名前を採って、のちにカーゾンストリートと名付けられたと言われている。

カーゾンストリートとハートフォードストリート(Hertford Street)が交差した角に建つ
カーゾンメイフェア映画館(Curzon Mayfair Cinema)

現在は、立地上、ホテル、クラブや高級フラット等の他、映画館、レストランや製本屋等が建ち並んでいるが、他の通りにあるようなチェーン店舗はほとんどなく、高級地区内にあるため、非常に落ち着いた通りである。

カーゾンストリート沿いの建物に入居している製本屋「シェファーズ(Shepherds)」
製本屋の窓には、通りの反対側に建つ
建物が映り込んでいる

なお、金貸しサム・ブルーワーの店があった場所については、コナン・ドイルの原作上、明確になっていない。

また、アガサ・クリスティー作「青列車の秘密(The Mystery of the Blue Train)」において、青列車内で殺害される米国富豪の娘ルース・ケタリング(Ruth Kettering)と容疑者として疑われる別居中の夫デレック・ケタリング(Derek Kettering)も、カーゾンストリートに住んでいるという設定になっている。

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