2023年9月23日土曜日

デヴォン州(Devon) ベリーポメロイ城(Berry Pomeroy Castle)- その2

1600年頃に建てられたシーモア家の邸宅の廃墟(その3)
<筆者撮影>


1547年に、テューダー朝の第3代イングランド王として、エドワード6世(Edward VI:1537年ー1553年 在位期間:1547年ー1553年)が即位すると、エドワード・シーモア(Edward Seymour:1506年頃ー1552年)摂政・護国卿に就任するとともに、サマセット公爵(Duke of Somerset)に叙せられた。

しかしながら、1549年にウォーリック伯爵ジョン・ダドリー(John Dudley, Earl of Warwick:1502年ー1553年)との権力闘争に敗れた結果、失脚に追いやられて、1552年に大逆罪処刑された。その結果、ウォーリック伯爵ジョン・ダドリーは、国政を主導する立場となり、初代ノーサンバランド公爵(1st Duke of Northumberland)に叙せられた。


1600年頃に建てられたシーモア家の邸宅の廃墟(その4)
<筆者撮影>

初代サマセット公爵エドワード・シーモアの処刑後、短期間ではあるものの、ベリーポメロイ城は、イングランド政府による所有に帰していたが、基本的には、ポメロイ家により所有され続けた。

ただし、ポメロイ家が居住地をデヴォン州からウィルトシャー州(Wiltshire)へと変えたため、ベリーポメロイ城は、1688年から1701年の間に打ち捨てられた。


1600年頃に建てられたシーモア家の邸宅の廃墟(その5)
<筆者撮影>


その後、ベリーポメロイ城は、廃虚のままとなっていたが、19世紀に入ると、絵画のように美しいとの評判により、人気の観光名所となる。


ベリーポメロイ城内の敷地から gatehouse を望む
<筆者撮影>

ベリーポメロイ城は、現在、第19代サマセット公爵ジョン・マイケル・エドワード・シーモア(John Michael Edward Seymour, 19th Duke of Somerset:1952年ー)が所有しているが、イングリッシュヘリテージ(English Heritage)により管理され、一般に開放されている。

また、ベリーポメロイ城は、「Grade I listed building」に指定されている。


2023年9月22日金曜日

映画「名探偵ポワロ:ヴェネチアの亡霊」(A Haunting in Venice)- その3

イタリアのヴェネツィアの運河に浮かぶゴンドラの上に、
サー・ケネス・ブラナーが演じる名探偵エルキュール・ポワロが立っている。
<筆者撮影>


英国の俳優 / 映画監督 / 脚本家 / プロデューサーであるサー・ケネス・ブラナー(Sir Kenneth Branagh:1960年ー)が監督と主演を務め、2023年9月15日に公開された映画「名探偵ポワロ:ヴェネチアの亡霊(A Haunting in Venice)」のストーリーは、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1969年に発表したエルキュール・ポワロシリーズの長編「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」をベースにしているが、原作の内容とは、大きく異なっているので、引き続き紹介したい。


(4)

イタリアのヴェネツィア(Venice)にある元オペラ歌手のロウィーナ・ドレイク(Rowena Drake)の屋敷において、大勢の子供達を招いたハロウィーンパーティーが終わった。その後、「私は、死者の声を話せる。」と断言する謎めいた霊能者のジョイス・レイノルズ(Joyce Reynolds)による降霊会(seance)が開催されることになった。

超常現象を全否定するエルキュール・ポワロは、降霊会に参加して、霊能者ジョイス・レイノルズのトリックを見破ることになった。


<注9>

原作の場合、このような展開はない。

ロウィーナ・ドレイクについては、原作の場合、ルウェリン=スマイス夫人(Mrs. Llewellyn-Smythe - 富豪の未亡人)の姪で、ウッドリーコモン(Woodleigh Common)の中心的な存在である。なお、子供は居ない。一方、映画版の場合、元オペラ歌手で、アリシアと言う娘が居たと言う設定に変更されている。


(5)

霊能者のジョイス・レイノルズが開催した降霊会に参加したポワロは、彼女がロウィーナ・ドレイクの娘アリシア・ドレイク(Alicia Drake)の声で「自分はバルコニーから投げ落とされた」ことを話し始める前に、煙突内に隠れていたアシスタントの2人である姉のデズデモーナ・ホーランド(Desdemona Holland)と弟のニコラス・ホーランド(Nicholas Holland)を見つけ出して、降霊会の参加者達に明らかにした。


<注10>

映画版のデズデモーナ・ホーランド(姉)は、原作の場合、デズモンド・ホーランド(Desmond Holland)と言う名前で、 ロウィーナ・ドレイクが催したハロウィーンパーティーに参加した16歳の少年である。また、映画版のニコラス・ホーランド(弟)は、原作の場合、ニコラス・ランサム(Nicholas Ransom)と言う名前で、 ロウィーナ・ドレイクが催したハロウィーンパーティーに参加した18歳の少年である。


(6)

ポワロに降霊会のトリックを見破られたため、アリシア・ドレイクをバルコニーから投げ落とした人物の名前を特定することができなかったジョイス・レイノルズは、降霊会を中止せざるを得なかった。

ジョイス・レイノルズは、後にバルコニーから転落して、中庭の像に身体を串刺しにされて、死亡する。


<注11>

原作の場合、ジョイス・レイノルズは、ウッドリーコモンに住む13歳の少女で、ロウィーナ・ドレイクの家で開催されたハロウィーンパーティーの準備をしている際に、「以前、殺人事件を見たことがある。」と言い出す。そして、ハロウィーンパーティーが終わった後、ロウィーナ・ドレイクの家の図書室において、リンゴが浮かべられたバケツに頭を入れた溺死体で発見される。


(7)

嵐が近づき、ロウィーナ・ドレイクの屋敷が外界から孤立する中、ポワロは、屋敷の玄関扉を閉ざすと、降霊会に参加した面々の尋問を開始する。

元軍医で、現在は、ドレイク家の主治医を務めているレスリー・フェリアー医師(Dr. Leslie Ferrier)の息子であるレオポルド・フェリアー(Leopold Ferrier - 10歳)は、ポワロに対して、「黒死病(ペスト)がヴェネツィアを襲った際、この屋敷内に閉じ込められて亡くなった子供達の亡霊の声が聞こえる。」と告げる。

それに呼応するように、ポワロも、1年前に亡くなったアリシア・ドレイクの亡霊を何度も見かけるようになった。そして、ハロウィーンパーティーの後、そのまま残されていた洗面器に入った水に浮かべられていたリンゴを、ポワロが口で咥えて持ち上げようとしていた際、黒い覆いを被った何者かによって、突然、背後から顔を洗面器の水の中に押し付けられて、危うく殺されそうになった。


<注12>

原作とは大きく異なり、次第にオカルトめいた場面が増えてくる。

レオポルド・フェリアーは、原作の場合、ロウィーナ・ドレイクの家の図書室において、リンゴが浮かべられたバケツに頭を入れた溺死体で発見されたジョイス・レイノルズの弟(レオポルド・レイノルズ / Leopold Reynolds)で、何故か、金回りが良くなっていた彼も、後に何者かに殺害される。一方、映画版の場合、レスリー・フェリアー医師の10歳の息で、非常に賢く、父親想いで、子供ながらに、精神的に不安定な父親を一所懸命支えていると言う設定に変更されている。


(8)

降霊会に参加した面々を尋問する過程で、ポワロは、旧友のミステリー作家であるアリアドニ・オリヴァー(Ariadne Oliver)と元警察官で、現在は、ポワロのボディーガードを務めるヴィターレ・ポルトフォリオ(Vitale Portfoglio)の2人も、降霊会のトリックに深く関与していたことを明らかにする。

ヴィターレ・ポルトフォリオは、ジョイス・レイノルズに対して、アリシア・ドレイクが亡くなった事件の情報を渡していたのである。一方、アリアドニ・オリヴァーは、ポワロが降霊会のトリックを見破ることができないものと期待しており、このことを自分の次の推理小説に使おうとしていた。何故かと言うと、彼女が直近で出版した3作の評判が今一つで、次回作でなんとかそれから脱却したいと考えていたのである。


<注13>

当然のことながら、原作の場合、このような展開はない。

アリアドニ・オリヴァーについては、原作と映画版で、人物設定自体の差異はないが、原作では、映画版のように、ポワロを落とし入れるようなことはしない。

また、ヴィターレ・ポルトフォリオに関しては、原作上、登場していない。


(9)

そんな最中、レスリー・フェリアー医師が、ロウィーナ・ドレイクの屋敷内にある音楽室において、背中から刺されて、死亡しているのが発見される。

精神的に不安定な彼は、マキシム・ジェラード(Maxime Gerard - 若きシェフで、亡くなったアリシア・ドレイクと婚約していた)と諍いになり、マキシム・ジェラードを殴りつけて、怪我を負わせたため、気持ちが落ち着くまでの間、音楽室に閉じ込めていたのである。しかも、音楽室の鍵は、ポワロ自身が保管していたのであった。


<注14>

レスリー・フェリアー医師については、原作の場合、ウッドリーコモンにある法律事務所の事務員として働いていたが、何者かに背中を刺されて死亡している。一方、映画版の場合、軍医として従軍した結果、心を病み、ロウィーナ・ドレイクに請われて、現在は、ドレイク家の主治医を務めていると言う設定に変更されている。


(10)

果たして、ジョイス・レイノルズの転落死は、事故なのか、それとも、殺人なのか?

また、密室状況でレスリー・フェリアー医師を殺害したのは、人間なのか、それとも、謎めいたロウィーナ・ドレイクの屋敷内に巣食う亡霊なのか?

更に、1年前に起きたアリシア・ドレイクの死は、ヴェネツィア警察が判断を下した通りの自殺なのか、それとも、殺人なのか?

ポワロが何度も目撃するようになったアリシア・ドレイクの亡霊は、本当に存在しているのか?


水上の都市ヴェネツィアを舞台にして、名探偵ポワロが、超常現象の謎に挑む。


2023年9月21日木曜日

くまのパディントン65周年記念切手(65th Anniversary of Paddington Bear)- その3

2013年9月5日に英国のロイヤルメールが発行している
くまのパディントン65周年記念切手(その7)-
Paddington reaching for a marmalade sandwich
(Paddington and Company Limited)

くまのパディントンは、マーマレードが大好きである。


英国の作家であるマイケル・ボンド(Michael Bond:1926年-2017年)は、児童文学「くまのパディントン(Paddington Bear)」シリーズの第1作目となる「くまのパディング(A Bear Called Paddington)」を、1958年10月13日に William Collins & Sons 社から発表した後、メインシリーズの短編集全15作やメインシリーズ外の短編集全2作に加えて、多くの絵本が出版されている。


2013年9月5日に英国のロイヤルメールが発行している
くまのパディントン65周年記念切手(その8)-
Paddington and Mr. Gruber having elevenses
(Paddington and Company Limited)

サミュエル・グルーバー氏(Mr. Samuel Gruber)は、ハンガリーからの移民で、
くまのパディントンが居候しているブラウン一家が住む
ウィンザーガーデンズ32番地(32 Windsor Gardens)の近くにある
ポートベローロード(Portobello Road)の商店街において、
骨董屋を営んでいる。
サミュエル・グルーバー氏は、パディントンの親友で、
毎日、パディントンと一緒に、お茶 / おやつ(elevenses)をとることを習慣としている。

<メインシリーズの短編集>

・第1作「くまのパディントン(A Bear Called Paddington)」(1958年)

・第2作「パディントンのクリスマス(More About Paddington)」(1959年)

・第3作「パディントンの1周年記念(Paddington Helps Out)」(1960年)

・第4作「パディントン フランスへ(Paddington Abroad)」(1961年)

・第5作「パディントンとテレビ(Paddington at Large)」(1962年)


2013年9月5日に英国のロイヤルメールが発行している
くまのパディントン65周年記念切手(その9)-
Paddington and the Brown family having breakfast
(Paddington and Company Limited)

画面左側から、時計回りに、くまのパディントン、ジョナサン・ブラウン(Jonathan Brown - 息子)、
ヘンリー・ブラウン(Henry Brown - 父)、メアリー・ブラウン(Mary Brown - 母)、
そして、ジュディー・ブラウン(Judy Brown - 娘)。

・第6作「パディントンの煙突掃除(Paddington Marches On)」(1964年)

・第7作「パディントン妙技公開(Paddington at Work)」(1966年)

・第8作「パディントン街へ行く(Paddington Goes to Town)」(1968年)

・第9作「パディントンのラストダンス(Paddington Takes the Air)」(1970年)

・第10作「パディントンの大切な家族(Paddington on Top)」(1974年)


2013年9月5日に英国のロイヤルメールが発行している
くまのパディントン65周年記念切手(その10)-
Paddington baking
(Paddington and Company Limited)

・第11作「パディントン、テストをうける(Paddington Takes the Test)」(1979年)

・第12作「パディントンのどろぼう退治(Paddington Here and Now)」(2008年)

・第13作「パディントン、映画に出る(Paddington Races Ahead)」(2012年)

・第14作「Paddington’s Finest Hour」(2017年)

・第15作「Paddington at St. Paul’s」(2018年)


作者のマイケル・ボンドは、2017年6月27日に、91歳で亡くなっているが、第15作目の短編集は、彼が亡くなる前に、既に出来上がっていた。そして、2018年6月27日に、マイケル・ボンド没後1周年記念作とくまのパディントン60周年記念作として、出版されたのである。


Paddington Miniature Sheet
(Paddington and Company Limited)


<メインシリーズ外の短編集>

・「Paddington’s Blue Peter Story Book」(1973年)

・「Paddington on Screen」(1980年)


2023年9月20日水曜日

映画「名探偵ポワロ:ヴェネチアの亡霊」(A Haunting in Venice)- その2

画面手前の人物は、名探偵エルキュール・ポワロで、
画面奥の人物は、左側から、(1)ニコラス・ホーランド(降霊会のアシスタント(弟))、
(2)オルガ・セミノフ(ドレイク家の家政婦)、
(3)マキシム・ジェラード(ロウィーナ・ドレイクの娘アリシアの元婚約者である若きシェフ)、
(4)ジョイス・レイノルズ(降霊会を行う謎めいた霊能者)、
(5)アリアドニ・オリヴァー(ポワロの旧友である推理作家)、
(6)ロウィーナ・ドレイク(元オペラ歌手)、(7)レスリー・フェリアー(ドレイク家の主治医)、
(8)レオポルド・フェリアー(レスリー・フェリアー医師の息子)、
(9)ヴィターレ・ポルトフォリオ(ポワロのボディーガード)、
そして、(10)デズモデーナ・ホーランド(降霊会のアシスタント(姉))の10人が、
運河に架かる橋の上に並んで、立っている。
<筆者撮影>


英国の俳優 / 映画監督 / 脚本家 / プロデューサーであるサー・ケネス・ブラナー(Sir Kenneth Branagh:1960年ー)が監督と主演を務め、2023年9月15日に公開された映画「名探偵ポワロ:ヴェネチアの亡霊(A Haunting in Venice)」のストーリーは、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1969年に発表したエルキュール・ポワロシリーズの長編「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」をベースにしているが、原作の内容とは、大きく異なっている。


(1)

第二次世界大戦(1939年ー1945年)が終結した後の1947年、名探偵エルキュール・ポワロは、一線から退いて、イタリアのヴェネツィア(Venice)において、隠遁生活を送っていた。ポワロの自宅の前には、相変わらず、依頼人が列を成していたものの、ポワロが新たな依頼を受けることはなかった。


<注1>

アガサ・クリスティーの原作の場合、事件の舞台は、ロンドンから30ー40マイル程離れた町ウッドリーコモン(Woodleigh Common)になっているが、今回の映画版の場合、水上の都市ヴェネチアへ変更されている。


<注2>

アガサ・クリスティーの原作の場合、ポワロは特に引退していないが、今回の映画版の場合、ポワロは一線を退いた設定になっている。


(2)

そんな最中、ポワロの旧友であるミステリー作家のアリアドニ・オリヴァーが、ポワロの元を訪れる。そして、彼女に誘われて、ポワロは、彼女とボディーガードのヴィターレ・ポルトフォリオ(Vitale Portfoglio)と一緒に、元オペラ歌手のロウィーナ・ドレイク(Rowena Drake)の屋敷において催されるハロウィーンパーティーに出席することになった。


<注3>

アガサ・クリスティーの原作の場合、ポワロが事件に関与するのは、ジョイス・レイノルズ(Joyce Reynolds)がロウィーナ・ドレイクの自宅の図書室において溺死させられてからであるが、今回の映画版の場合、事件が発生する前から、ポワロは関与している。


<注4>

アガサ・クリスティーの原作の場合、ロウィーナ・ドレイクは、ウッドリーコモンの中心的な存在と言う設定ではあるが、彼女の職業については、特に言及されていない。今回の映画版の場合、ロウィーナ・ドレイクは、元オペラ歌手と言う設定になっている。


<注5>

アガサ・クリスティーの原作の場合、ロウィーナ・ドレイクの自宅は、「リンゴの木荘(Apple Trees House)」と言う名前の屋敷であるが、今回の映画版の場合、ロウィーナ・ドレイクの自宅は、宮殿(palazzo)のような屋敷となっている。また、その屋敷には、子供の亡霊が出ると言う噂がある謎めいた場所と言う設定にもなっている。


(3)

ロウィーナ・ドレイクの屋敷において、大勢の子供達を招いたハロウィーンパーティーが終わった後、謎めいた霊能者のジョイス・レイノルズによる降霊会(seance)が開催される。

降霊会は、ロウィーナ・ドレイクの最愛の娘で、1年前に亡くなったアリシア・ドレイク(Alicia Drake)の霊を呼び出すのが、その目的だった。

アリシア・ドレイクは、若きシェフのマキシム・ジェラード(Maxime Gerard)と婚約していたが、2人の関係が悪化した結果、自宅のバルコニーから身を投げて、自殺したものと、地元警察は結論を下していたのである。


<注6>

アガサ・クリスティーの原作の場合、ロウィーナ・ドレイクの屋敷において、ハロウィーンパーティーが終わった後、降霊会が開催される流れにはなっていないが、今回の映画版の場合、独自の展開になっている。


<注7>

アガサ・クリスティーの原作の場合、ジョイス・レイノルズの年齢は13歳で、ハロウィーンパーティーの準備の手伝いをしていた際、突然、「ずっと前に殺人を目撃したことがある。ただ、当時は、それが殺人だと判らなかった。(I witnessed a murder once, when I was little. I didn’t understand what was going on at the time.)」と言い出している。今回の映画版の場合、ジョイス・レイノルズは、年配の女性で、謎めいた霊能者と言う人物設定に変更されている。


<注8>

アガサ・クリスティーの原作の場合、ロウィーナ・ドレイクに娘が居ると言う設定になっていないが、今回の映画版の場合、ロウィーナ・ドレイクには、アリシア・ドレイクと言う最愛の娘が居たが、1年前に、自宅のバルコニーから落ちて死亡したという設定になっている。


2023年9月19日火曜日

デヴォン州(Devon) ベリーポメロイ城(Berry Pomeroy Castle)- その1

筆者がベリーポメロイ城で購入した
イングリッシュヘリテージのガイドブック


これまでに、ダートマス城(Dartmouth Castle → 2023年9月10日 / 9月12日付ブログで紹介済)とトトネス城(Totnes Castle → 2023年9月14日 / 9月16日付ブログで紹介済)について御紹介したが、デヴォン州(Devon)/ コーンウォール州(Cornwall)内に所在する他の城も紹介したい。


筆者がベリーポメロイ城で購入した
イングリッシュヘリテージのガイドブック内に載っている
城の図面

今回紹介するのは、デヴォン州の村ベリーポメロイ(Berry Pomeroy)から1マイル程、北東のところに建つベリーポメロイ城(Berry Pomeroy Castle)である。


ベリーポメロイ城の入口
<筆者撮影>

15世紀後半に築かれた gatehouse
<筆者撮影>

城が現在建っている一帯の土地は、11世紀より、ポメロイ家(Pomeroy family)が所有しており、ベリーポメロイ城は、15世紀後半に築かれた。

16世紀中頃、財政的に窮したポメロイ家は、初代サマセット公爵エドワード・シーモア(Edward Seymour, 1st Duke of Somerset:1506年頃ー1552年)に対して、ベリーポメロイ城を含む土地を売却したのである。


1600年頃に建てられたシーモア家の邸宅の廃墟(その1)
<筆者撮影>

1600年頃に建てられたシーモア家の邸宅の廃墟(その2)
<筆者撮影>


初代サマセット公爵エドワード・シーモアは、イングランドの政治家 / 廷臣 / 貴族で、彼の妹のジェーン・シーモア(Jane Seymour:1508年ー1537年)が
テューダー朝の第2代イングランド王であるヘンリー8世(Henry VIII:1491年ー1547年 在位期間:1509年-1547年)の3番目の王妃となり、後にテューダー朝の第3代イングランド王として即位するエドワード6世(Edward VI:1537年ー1553年 在位期間:1547年ー1553年)を出産したことを受けて、イングランド政府内で栄進したのである。

2023年9月18日月曜日

アガサ・クリスティー作「牧師館の殺人」<英国 TV ドラマ版>(The Murder at the Vicarage by Agatha Christie )- その3

英国の Harper Collins Publishers 社から出版されている
「牧師館の殺人」のペーパーバック版の表紙には、
英国のイラストレーターであるビル・ブラッグ氏(Mr. Bill Bragg)によるイラストが、
ルシアス・プロセロウ大佐の殺害に使用された拳銃の形
切り取られているものが使用されている。


英国の TV 会社 ITV 社が制作したアガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「牧師館の殺人(The Murder at the Vicarage → 2022年10月30日 / 10月31日 / 11月26日付ブログで紹介済)」(1930年)の TV ドラマ版である「Agatha Christie’s Miss Marple」の第2話(第1シリーズ)「牧師館の殺人」の場合、アガサ・クリスティーの原作に比べると、物語の展開上、以下の違いが見受けられる。今回は、ルシアス・プロセロウ大佐(Colonel Lucius Protheroe)が殺害された後の相違点について、述べる。


(7)

<原作>

その日の午後5時半頃、レナード・クレメント牧師(Reverend Leonard Clement)は電話を受け、「ロウアーファーム(Lower Farm)のアボット氏(Mr. Abbott)が危篤状態なので、側に居てほしい。」と頼まれる。レナード・クレメント牧師は、今からロウアーファームまで出かけると、ルシアス・プロセロウ大佐との約束の午後6時15分までに牧師館へ戻ることは難しいと判断して、ルシアス・プロセロウ大佐には書斎で待っていてもらうよう、メイドに頼むと、急いでロウアーファームへと向かった。

レナード・クレメント牧師がロウアーファームのアボット氏の元を訪れると、驚くことに、本人は全くピンピンとしていて、先程の電話は悪戯であったことが判明する。

午後7時頃、レナード・クレメント牧師が牧師館へと戻った際、非常に取り乱した様子のローレンス・レディング(Laurence Redding)が大慌てで牧師館から立ち去るところだった。不思議に思ったレナード・クレメント牧師が書斎に入ると、ルシアス・プロセロウ大佐が拳銃で後頭部を撃たれて、牧師の書き物机の上に突っ伏してたまま、息絶えているのを発見したのである。

<TV ドラマ版>

基本的に、TV ドラマ版も、原作と同じ流れであるが、TV ドラマ版の場合、ルシアス・プロセロウ大佐の射殺死体がレナード・クレメント牧師によって発見されるまでの間に、以下の場面が追加されている。


*セントメアリーミードのハイストリートにおいて、いきなり走って来たオートバイに轢かれそうになり、転倒して、足を挫いてしまったミス・ジェイン・マープルの世話を、彼女の自宅(道を挟んで、牧師館の向かい側に所在)において、アン・プロセロウ(Anne Protheroe)がやいている。その時、ミス・マープルの自宅に電話がかかってきて、ミス・マープルの代わりに、アン・プロセロウが応答する。その電話は、ミス・マープル宛ではなく、アン・プロセロウ宛だったようで、電話を終えたアン・プロセロウは、ミス・マープルの自宅から出て来ると、ミス・マープルに対して、特に事情を説明しないまま、手ぶらの姿で、牧師館へと向かう。その後、アン・プロセロウは、牧師館から出て来ると、牧師館の庭の一画にある不倫相手のローレンス・レディングのアトリエ小屋へと行った。


*ルシアス・プロセロウ大佐の屋敷に滞在して、建築や室内装飾等を調査するフランス人のオーグスティン・デュフォス(Ausgustin Dufosse - 祖父)とヘレン・デュフォス(Helene Dufosse - 孫娘)の二人が、別々に牧師館の前の道を彷徨いていた。


(8)

<原作>

地元警察から、メルチェット大佐(Colonel Melchett - セントメアリーミード村を管轄する警察の本部長(Chief Constable))とスラック警部(Inspector Slack - セントメアリーミード村を管轄する警察の警部)が、牧師館へと派遣される。

<TV ドラマ版>

英国 TV ドラマ版の場合、メルチェット大佐は登場しない。


(9)

<原作>

メルチェット大佐とスラック警部が率いる地元警察が捜査を進める中、ローレンス・レディングとアン・プロセロウの二人が、それぞれに、ルシアス・プロセロウ大佐の殺害を自供した。

ところが、ローレンス・レディングは、正確ではない犯行時刻を主張する一方、アン・プロセロウの場合、犯行時刻の頃、彼女が牧師館を訪れるのを、牧師館の隣りに住むミス・マープルが見かけており、アン・プロセロウは、拳銃のような大きさのものが入ったバッグ等を持っていなかったと、ミス・マープルは明言する。

牧師館の隣りに住むミス・マープルは、詮索好きで、偶々、同館の様子を窺っていた結果、同館の書斎において発生したルシアス・プロセロウ大佐射殺事件にかかる非常に重要な証人となったのである。

地元警察は、不倫関係のため、ルシアス・プロセロウ大佐の殺害動機があると疑われたローレンス・レディングとアン・プロセロウの二人が、お互いにかばいあっているものと考えて、一旦、二人を無罪放免とし、他に容疑者を求めることになった。

<TV ドラマ版>

ミス・マープルの自宅にかかってきた電話に応答したアン・プロセロウが、ミス・マープルの自宅から出て来ると、ミス・マープルに対して、特に事情を説明しないまま、牧師館へと向かった。足を挫いていたため、自宅の庭でアン・プロセロウをそのまま見送ったミス・マープルであったが、牧師館へと向かったアン・プロセロウは、両肩を出した服装の上、手ぶらの格好だったため、拳銃のような大きさのものが入ったバッグ等を一切持っていなかったと、ミス・マープルは明言した。

そう言った意味では、アン・プロセロウをルシアス・プロセロウ大佐を殺害した容疑者から一旦外されることになった経緯については、TV ドラマ版の方が、原作より自然のように思える。


(10)

<原作>

原作の場合、ルシアス・プロセロウ大佐の所有地において、考古学の発掘調査を行うストーン博士(Dr. Stone)と彼の若い助手であるグラディス・クラム(Miss Gladys Cram)が登場する。

実は、ストーン博士は偽者で、考古学の発掘調査を行う傍ら、ルシアス・プロセロウ大佐の屋敷内にある様々な調度品を偽物に入れ替えていたのである。ただし、グラディス・クラムは、偽者のストーン博士による犯罪とは、無関係だった。

<TV ドラマ版>

TV ドラマ版の場合、ルシアス・プロセロウ大佐の屋敷に滞在して、建築や室内装飾等を調査するフランス人のオーグスティン・デュフォスとヘレン・デュフォスが、ストーン博士とグラディス・クラムに代わって、登場する。

実は、オーグスティン・デュフォスとヘレン・デュフォスの二人は、「祖父」と「孫娘」と言う関係ではなく、「祖父」と「義理の孫娘」と言う関係で、復讐のため、ルシアス・プロセロウ大佐の命を付け狙っていたのである。

オーグスティン・デュフォスの孫であるアンリ・デュフォス(Henri Dufosse)は、第二次世界大戦中(1939年-1945年)、フランスにおいて、レジタンスに参加していた。ヘレン・ハーグレイヴス(Helen Hargreaves)は、レジタンスのサポートのために、英国軍からフランスへ派遣されたエージェントで、1943年にアンリ・デュフォスと出会い、結婚していた。ルシアス・プロセロウ大佐は、レジスタンスに対して、武器、爆薬や軍資金等への供給を、ロンドンから指揮する立場に居た。1944年のある日、フランスのレジタンスのため、英国軍から数万フランの軍資金が投下されることになった。当日、アンリとヘレンの二人は、ある場所で、英国軍の飛行機から軍資金が投下されるのを待っていたが、実際に軍資金が投下されたのは、全く別の場所で、それは、ルシアス・プロセロウ大佐とレジタンス内の裏切り者によって横取りされていたのである。更に、軍資金の投下を待っていたアンリとヘレンの二人は、ルシアス・プロセロウ大佐が流した情報に基づいて、ドイツ軍によって拘束されてしまった。ヘレンは、なんとか逃げ出すことができたが、アンリは、ドイツ軍による過酷な拷問を受けて、残念ながら、亡くなってしまった。

そのため、祖父のオーグスティン・デュフォスと義理の孫娘のヘレン・デュフォスの二人は、ルシアス・プロセロウ大佐の命を付け狙い、アンリの復讐をしようとしていたのである。

ルシアス・プロセロウ大佐が殺害された日、オーグスティン・デュフォスは、拳銃を携えて、牧師館へ向かい、ルシアス・プロセロウ大佐を殺そうとしたが、既に遅く、誰かに殺されていたと証言した。


(11)

<原作>

レティス・プロセロウ(Lettice Protheroe - ルシアス・プロセロウ大佐の娘で、アン・プロセロウの義理の娘)は、自分の本当の母親であるエステル・レストレンジ夫人(Mrs. Estelle Lestrange - 最近、セントメアリーミード村に引っ越して来たばかりの謎めいた婦人)と再会して、一緒に暮らしていくことになる。

<TV ドラマ版>

レティス・プロセロウの本当の母親の名前は、エステル・レストレンジ夫人からレスター夫人へと変更されている。


(12)

<原作>

ルシアス・プロセロウ大佐を殺害したのは、アン・プロセロウとローレンス・レディングの二人で、不倫関係を成就させることが、彼らの殺害動機だった。

<TV ドラマ版>

ルシアス・プロセロウ大佐を殺害したのは、原作と同様に、アン・プロセロウとローレンス・レディングの二人だったが、彼らの殺害動機は、原作とは異なっている。

実は、アン・プロセロウとローレンス・レディングの二人は、元々、恋人同士で、第二次世界大戦に出征して戻って来なかったのは、ローレンス・レディングだったのである。そして、第二次世界大戦後の生活に困窮したアン・プロセロウが、他に選択肢がなく、やむを得ず、ルシアス・プロセロウ大佐と結婚した後、セントメアリーミードへ肖像画家としてやって来たローレンス・レディングと再会した。昔の関係が再燃したアン・プロセロウとローレンス・レディングの二人は、邪魔な存在であるルシアス・プロセロウ大佐を排除しようとした訳である。


(13)

<原作>

ルシアス・プロセロウ大佐の殺害犯人として、アン・プロセロウとローレンス・レディングの二人が逮捕されるが、その後、二人の処罰がどうなったのかについては、言及されていない。

<TV ドラマ版>

ルシアス・プロセロウ大佐の殺害犯人として逮捕されたアン・プロセロウとローレンス・レディングの二人が絞首刑に処せられる場面を以って、物語は最後を迎える。

アン・プロセロウとローレンス・レディングの二人が絞首刑に処せられる場面に並行して、ミス・マープルが物思いに沈む場面が挿入される。セントメアリーミードのハイストリートにおいて、アン・プロセロウと会ったミス・マープルは、彼女から、「恋人が第二次世界大戦に出征して戻って来なかったため、やむを得ず、ルシアス・プロセロウ大佐の後妻に入った」ことを聞かされ、自分自身も、「I lost someone in a war, who got a mdeal for dying(→ 不倫相手のアインスワース大尉(Captain Ainsworth)のこと). His wife will have cherished it.」と告白すると、アン・プロセロウに、「Easier for you, then, Jane. He was dead. You didn’t have to choose between right and wrong.」と切り返された。

TV ドラマ版の場合、


*ミス・マープル:妻帯者のアインスワース大尉と不倫関係にあったが、彼が出征する際に、彼に対して、自分は身を引くことを伝える。アインスワース大尉は戦死して、自分の妻の元へ帰ることができなかった。つまり、恋人のアインスワース大尉は戦死したため、その後における自分の身の処し方について、選択を行う必要がなかった。


*アン・プロセロウ:恋人が第二次世界大戦に出征して戻って来なかったため、やむを得ず、ルシアス・プロセロウ大佐の後妻に入ったが、その後、セントメアリーミードに肖像画家としてやって来た元恋人のローレンス・レディングと再会して、ルシアス・プロセロウ大佐を殺害する破目に陥った。つまり、恋人のローレンス・レディングは戦死したものと思い、ルシアス・プロセロウ大佐の後妻に入ったが、ローレンス・レディングは生還したため、その後における自分の身の処し方について、選択を行う必要があり、悪い選択を行ってしまった。


と言うように、「選択を行う必要がなかったミス・マープル」と「選択を行う必要があり、悪い選択を行ってしまったアン・プロセロウ」の2人の末路が、うまく対比されていると言える。


2023年9月17日日曜日

映画「名探偵ポワロ:ヴェネツィアの亡霊」(A Haunting in Venice)- その1

画面手前の人物は、名探偵エルキュール・ポワロで、
画面奥の人物は、左側から、(1)ニコラス・ホーランド、(2)オルガ・セミノフ、
(3)マキシム・ジェラード、(4)ジョイス・レイノルズ、(5)アリアドニ・オリヴァー、
(6)ロウィーナ・ドレイク、(7)レスリー・フェリアー、(8)レオポルド・フェリアー、
(9)ヴィターレ・ポルトフォリオ、そして、(10)デズモデーナ・ホーランドの10人が、
運河に架かる橋の上に並んで、立っている。
<筆者撮影>


英国の俳優 / 映画監督 / 脚本家 / プロデューサーであるサー・ケネス・ブラナー(Sir Kenneth Branagh:1960年ー)が監督と主演を務める映画「名探偵ポワロ:ヴェネツィアの亡霊(A Haunting in Venice)」が、2023年9月15日に公開され、観に行ってきたので、紹介したい。


「名探偵ポワロ:ヴェネツィアの亡霊」は、アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)が1969年に発表したエルキュール・ポワロシリーズの長編「ハロウィーンパーティー(Hallowe’en Party)」の映画化で、「オリエント急行殺人事件(Murder on the Orient Express)」(2017年)と「ナイル殺人事件(Death on the Nile)」(2022年)に続くサー・ケネス・ブラナー監督 / 主演の第3作目に該る。


配役は、以下の通り。


(1)エルキュール・ポワロ(Hercule Poirot - 一線を退いた名探偵で、イタリアのヴェネツィア(Venice)で隠遁生活を送っている):Kenneth Branagh

(2)ジョイス・レイノルズ(Joyce Reynolds - ハロウィーンの夜に開催された降霊会に姿を見せた謎めいた霊能者):Michelle Yeoh

(3)アリアドニ・オリヴァー(Ariadne Oliver - エルキュール・ポワロの旧友であるミステリー作家):TIna Fey

(4)ロウィーナ・ドレイク(Rowena Drake - 最愛の娘であるアリシアを亡くした元オペラ歌手):Kelly Reilly

(5)オルガ・セミノフ(Olga Seminoff - ドレイク家の家政婦):Camille Cottin

(6)レスリー・フェリアー医師(Dr. Leslie Ferrier - 元軍医で、現在は、ドレイク家の主治医):Jamie Dornan

(7)レオポルド・フェリアー(Leopold Ferrier - レスリー・フェリアー医師の10歳の息子):Jude Hill

(8)デズデモーナ・ホーランド(Desdemona Holland - 弟のニコラスと一緒に、降霊会のアシスタントを務める):Emma Laird

(9)ニコラス・ホーランド(Nicholas Holland - 姉のデズデモーナと一緒に、降霊会のアシスタントを務める):Ali Khan

(10)マキシム・ジェラード(Maxime Gerard - 若きシェフで、亡くなったアリシア・ドレイクと婚約していた):Kyle Allen

(11)ヴィターレ・ポルトフォリオ(Vitale Portfoglio - エルキュール・ポワロのボディーガード):Riccardo Scamarcio

(12)アリシア・ドレイク(Alicia Drake - ロウィーナ・ドレイクの娘で、1年前に、自宅のバルコニーから運河へ身を投げて、自殺したものと、地元警察は結論を下していた):Rowan Robinson


ヴェネツィア共和国の景観画家 / 版画家である
ジョヴァンニ・アントーニオ・カナレット(Giovanni antonio Canaletto:1697年ー1768年)作
「View of the Grand Canal」-
ケンブリッジ(Cambridge)のフィッツウィリアム博物館(Fitzwilliam Museum)で
筆者が購入した絵葉書から抜粋。

事件の舞台が、アガサ・クリスティーの原作の場合、ロンドンから30ー40マイル程離れた町ウッドリーコモン(Woodleigh Common)となっているが、今回の映画版の場合、ヴェネツィアへ変更されていることに加えて、人物設定に関しても、大幅な変更が為されている。


(2)ジョイス・レイノルズ

<原作> ウッドリーコモンに住む13歳の少女で、ロウィーナ・ドレイクの家で開催されたハロウィーンパーティーの準備をしている際に、「以前、殺人事件を見たことがある。」と言い出す。そして、ハロウィーンパーティーが終わった後、ロウィーナ・ドレイクの家の図書室において、リンゴが浮かべられたバケツに頭を入れた溺死体で発見される。

<映画> ハロウィーンの夜、ロウィーナ・ドレイクの家で開催された降霊会に姿を見せた謎めいた霊能者で、後にバルコニーから転落して、中庭の像に身体を串刺しにされて、死亡。


(4)ロウィーナ・ドレイク

<原作> ルウェリン=スマイス夫人(Mrs. Llewellyn-Smythe - 富豪の未亡人)の姪で、ウッドリーコモンの中心的な存在。なお、子供は居ない。

<映画> 元オペラ歌手で、アリシアと言う娘が居た。


(5)オルガ・セミノフ

<原作> ヘルツェゴヴィナ(Herzegovina)出身 / 外国語の勉強を目的として、家事手伝いをしながら、外国の家庭に住まわせてもらう制度を利用していた女性(au pair girl)で、ルウェリン=スマイス夫人の家で働いていたが、後に失踪。

<映画> ドレイク家に献身的に尽くす家政婦で、ロウィーナ・ドレイクの娘であるアリシア・ドレイクを、自分の娘のように可愛がっていた。


(6)レスリー・フェリアー医師

<原作> ウッドリーコモンにある法律事務所の事務員として働いていたが、何者かに背中を刺されて死亡。

<映画> 軍医として従軍した結果、心を病む。ロウィーナ・ドレイクに請われて、現在は、ドレイク家の主治医を務めている。


(7)レオポルド・フェリアー

<原作> ロウィーナ・ドレイクの家の図書室において、リンゴが浮かべられたバケツに頭を入れた溺死体で発見されたジョイス・レイノルズの弟(レオポルド・レイノルズ)で、後に、彼も何者かに殺害される。

<映画> 

レスリー・フェリアー医師の10歳の息子。非常に賢く、父親想いで、子供ながらに、精神的に不安定な父親を一所懸命支えている。


(8)デズデモーナ・ホーランド

<原作> デズモンド・ホーランド(Desmond Holland)と言う名前で、 ロウィーナ・ドレイクが催したハロウィーンパーティーに参加した16歳の少年。

<映画> 弟のニコラスと一緒に、降霊会のアシスタントを務める女性。


(9)ニコラス・ホーランド

<原作> ニコラス・ランサム(Nicholas Ransom)と言う名前で、 ロウィーナ・ドレイクが催したハロウィーンパーティーに参加した18歳の少年。

<映画> 姉のデズデモーナと一緒に、降霊会のアシスタントを務める男性。


(10)マキシム・ジェラード

<原作> 登場しない。

<映画> 若きシェフで、亡くなったアリシア・ドレイクと婚約していた過去を持つ。


(11)ヴィターレ・ポルトフォリオ

<原作> 登場しない。

<映画> エルキュール・ポワロのボディーガードで、探偵を引退して、ヴェネチアで隠遁生活を送るポワロの静かな生活を守る役目を負っている。


(12)アリシア・ドレイク

<原作> 登場しない。

<映画> ロウィーナ・ドレイクの最愛の娘で、若きシェフであるマキシム・ジェラードと婚約していた。1年前に、自宅のバルコニーから運河へ身を投げて、自殺したものと、地元警察は結論を下していたが、エルキュール・ポワロは、殺人だと考えている。