2021年4月28日水曜日

デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 欺かれた探偵」(The further adventures of Sherlock Holmes / The Veiled Detective by David Stuart Davies) - その2

英国の Titan Books 社から2009年に出版されている
デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ作
「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 欺かれた探偵」の表紙 -
なお、本作品自体が執筆されたのは、2004年。

デイヴィッド・ステュアート・デイヴィーズ(David Stuart Davies)作「シャーロック・ホームズの更なる冒険 / 欺かれた探偵(The further adventures of Sherlock Holmes / The Veiled Detective)」において、第二次アフガニスタン戦争に医師として従軍していたものの、飲酒癖のために除隊を言い渡されたジョン・ウォーカー(John Walker)は、犯罪界のナポレオンと呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)からの指示を受け、ジョン・ワトスンと名前を変えて、ロンドンで諮問探偵として活躍するシャーロック・ホームズと一緒に、ベーカーストリート221B(221B Baker Street)で下宿生活を始めていた。そして、彼ら二人は、かの有名な「緋色の研究(A Study in Scarlet → 2016年7月30日付ブログで紹介済)」事件に関わるようになる。


今回、ジョン・ワトスンこと、ジョン・ウォーカーは、モリアーティー教授の手先となって、ホームズをスパイすることになるが、ホームズとワトスンの女家主であるハドスン夫人(Mrs. Hudson)が、更に、ホームズの兄であるマイクロフト・ホームズ(Mycroft Holmes)までもが、モリアーティー教授の協力者になっていた。


物語は、「四つの署名(The Sign of the Four → 2017年8月12日付ブログで紹介済)」事件を経て、1891年4月、「最後の事件(The Final Problem)」にかかるライヘンバッハの滝(Reichenbatch Falls)において、最後を迎えるのであった。


物語には、将来のワトスン夫人となるメアリー・モースタン(Mary Morstan)も登場するが、彼女が依頼人として関わる「四つの署名」事件が発生するのは、1888年9月で、「緋色の研究」事件(1881年3月)よりも数年後である。

雑誌への発表順としては、「緋色の研究」事件(=ホームズシリーズ第1作)と「四つの署名」事件(=ホームズシリーズ第2作)は連続しているが、事件の発生順としては、かなり離れている。


更に言うと、「最後の事件」が発生するのは、1891年4月であり、「緋色の研究」事件から「最後の事件」までに、聖典における時間の流れでは、10年以上を要しているが、本作では、「緋色の研究」事件の後、「最後の事件」が割合と直ぐに発生しているように、駆け足で記述されていて、少し気になった。


「最後の事件」は、本作において非常に重要な位置を占めるので、作者としても記述せざるを得ないが、「緋色の研究」事件と「最後の事件」の間にある数々の事件を、「四つの署名」事件を除き、全てすっとばしてしまい、時間的な隔たりを一冊でうめようとすると、やや無理な感じを否めない。

サー・アーサー・コナン・ドイルの聖典のうち、おいしいところだけを集めて、物語を展開するのは、難しいところである。


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