2021年4月3日土曜日

アガサ・クリスティー作「死との約束」<日本 TV ドラマ版>(Appointment with Death by Agatha Christie

JR 東海から出ている「南紀・熊野古道 フリーきっぷ」のうち、
「中辺路(Nakahechi)コース」の地図 -
日本 TV ドラマ版「死との約束」では、熊野本宮大社を含む熊野古道が、
物語の舞台となる。


アガサ・メアリー・クラリッサ・クリスティー(Agatha Mary Clarissa Christie:1890年ー1976年)作「死との約束(Appointment with Death → 2021年3月13日付ブログで紹介済)」(1938年)の TV ドラマ版が、日本のフジテレビ系「土曜プレミアム」枠で、2021年3月6日に放送されている。

本 TV ドラマ版は、アガサ・クリスティー作「オリエント急行の殺人(Murder on the Orient Express)」(1938年)を原作とする「オリエント急行殺人事件」(2015年)、同「アクロイド殺し(The Murder of Roger Ackroyd)」(1926年)を原作とする「黒井戸殺し」に続く脚本家の三谷幸喜(1961年ー) x 狂言師の野村萬斎(1966年ー)によるドラマシリーズ第3弾に該る。


アガサ・クリスティーによる原作では、エルサレム(Jersalem)にあるキングソロモンホテル(King Solomon Hotel)とヨルダン(Jordan)の古都ペトラ(Petra)にある遺跡が、物語の舞台となっている。日本 TV ドラマ版では、物語の舞台を巡礼の道として世界遺産に登録されている「熊野古道」に、また、時代設定を昭和30年代に置き換えている。そして、キングソロモンホテルは熊野古道の近くにある和歌山県天狗村の「黒門ホテル」(架空のホテル)として、ペトラにある遺跡は「熊野古道」に設定されている。


日本 TV ドラマ版における主な登場人物は、以下の通り。


(1)勝呂 武尊(演 - 野村 萬斎)

原作の「エルキュール・ポワロ」に相当。

原作とは異なり、事件が発生する前から登場して、事件の関係者達と一緒に、事件に立ち会っている。

(2)本堂夫人(演 - 松坂 慶子)

本堂家を束ねる未亡人で、原作の「ボイントン夫人(Mrs. Boynton)」に相当。

(3)本堂 礼一郎(演 - 山本 耕史)

本堂夫人の(義理の)長男で、原作の「レノックス・ボイントン(Lennox Boynton)」に相当。

(4)本堂 凪子(演 - シルビア・グラブ)

本堂 礼一郎の妻で、原作の「ネイディーン・ボイントン(Nadine Boynton)」に相当。

(5)本堂 主水(演 - 市原 隼人)

本堂夫人の(義理の)次男で、原作のレイモンド・ボイントン(Raymond Boynton)」に相当。

(6)本堂 鏡子(演 - 堀田 真由)

本堂夫人の(義理の)長女で、原作の「キャロル・ボイントン(Carol Boynton)」に相当。

(7)本堂 絢奈(演 - 原菜 乃木華)

本堂夫人の次女(実子)で、原作の「ジネヴラ・ボイントン(Ginevra Boynton)」に相当。

自分のことを「伊邪那美命(イザナミノミコト)」の生まれ変わりだと思っている。

(8)十文字 幸太(演 - 坪倉 由幸)

原作の「ジェファーソン・コープ(Jefferson Cope)」に相当。

原作にはない税理士という設定で、本堂家の資産を管理している。一方で、原作と同様に、本堂 凪子の友人という設定になっている。

(9)沙羅 絹子(演 - 比嘉 愛未)

原作と同様に、医師という設定で、原作の「サラ・キング(Sarah King)」に相応。

(10)上杉 穂波(演 - 鈴木 京香)

原作と同様に、婦人代議士という設定で、原作の「ウェストホルム卿夫人(Lady Westholme)」に相当。

以前、ある窃盗団に所属し、怪盗として働いていた過去があり、刑務所に入っていたことがある。原作とは異なり、ポワロに相当する勝呂 武尊と古い知人同士(元怪盗と彼女を逮捕した警官)という設定が追加され、彼との淡いロマンスが描かれる。

(11)飛鳥 ハナ(演 - 長野 里美)

原作の「アマベル・ピアス(Amabel Pierce)」に相当。

原作とは異なり、保母ではなく、上杉 穂波に随行する編集者という設定に変更されている。

(12)川張 大作(演 - 阿南 健治)

熊野警察署の署長で、原作の「カーバリー大佐(Colonel Carbury)」に相当。


アガサ・クリスティーの原作に登場するフランス人の心理学者であるテオドール・ジェラール(Theodore Gerard)については、登場人物を整理して、物語を円滑に進めるためか、あるいは、職業柄、サラ・キングに相当する沙羅 絹子と重なるためか、日本 TV ドラマ版には、登場しない。

日本 TV ドラマ版では、物語の前半における被害者となる本堂夫人の自分勝手さにかかる描写を除くと、(1)勝呂 武尊と上杉 穂波、(2)本堂 礼一郎、本堂 凪子と十文字 幸太、そして、(3)本堂 主水と沙羅 絹子の関係性にかかる描写が主体となっており、本堂 鏡子と本堂 絢奈に対する比重は、(配役的にも、)あまり強くない。

テオドール・ジェラールの場合、本堂夫人による手厚い庇護を受けるあまり、自我が弱くなっている本堂 絢奈との関わりが強くなるが、放送時間的には、そこまでの描写を加えるのは、難しかったのかもしれない。


脚本を担当した三谷 幸喜は、「『死との約束』は、アガサ・クリスティーの隠れた傑作で、ポワロシリーズの中では、僕が一番好きな作品です。」とコメントしている。

そのため、アガサ・クリスティーの原作に敬意を表して、物語の舞台を中東から日本へと移したこと、また、主要ではない登場人物が一部割愛されていることを除けば、原作の内容をほぼ忠実に脚色していると言える。


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