2011年9月に Titan Books から出版された
「Professor Moriarty : The Hound of the D'Ubervilles
(モリアーティ教授:ダーバヴィル家の犬)」の表紙
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英国のファンタジー作家、映画批評家で、かつ、ジャーナリストでもあるキム・ニューマン(Kim Newman:1959年ー)が2011年に Titan Publishing Group Ltd. から発表し、日本のミステリー / SF / ホラー小説家、翻訳家で、かつ、古書研究家でもある北原尚彦氏(1962年ー)が訳者となり、2018年2月に東京創元社から創元推理文庫として刊行された「モリアーティ秘録(Professor Moriarty : The Hound of the D’Ubervilles)」は、
・第1章:血色の記録(A Volume in Vermilion)
・第2章:ベルグレーヴィアの騒乱(A Shambles in Belgravia)
・第3章:赤い惑星連盟(The Red Planet League)
までは、割合と淡々と進むが、
・第4章:ダーバヴィル家の犬(The Hound of the D’Ubervilles)
に入り、その後半位から、著者キム・ニューマンが紡ぐ物語は、やっと快調になっている感じがする。そして、
・第5章;六つの呪い(The Adventure of the Six Malediction)
に入ると、キム・ニューマンの博覧強記が炸裂し始め、他の作品のキャラクターや事物等がどんどん出てくる。それまでの4章分もそうであったが、キム・ニューマンの知識や関連情報等が膨大なので、訳者の北原尚彦氏としても、翻訳作業は非常に大変だったのではないかと思われる。
第5章が終わると、
・第6章:ギリシャこう竜(The Greek Invertebrate)
・第7章:最後の冒険の事件(The Problem of the Final Adventure)
と、怒涛の展開となる。
「モリアーティ秘録」は、犯罪界のナポレオンと呼ばれるジェイムズ・モリアーティー教授(Professor James Moriarty)の右腕として活躍したセバスチャン・モラン大佐(Colonel Sebastian Moran)の視点から、全編語られていることもあるが、「第7章」に少しだけ登場するシャーロック・ホームズとジョン・H・ワトスンについて、ホームズは「トラブルメーカーの鼻の高い同居人」や「痩身の男」の仇名で呼ばれるだけで、本名は出てこないし、ワトスンに至っては、「阿呆」呼ばわりされていて、少し可哀想な気がする。