2020年1月4日土曜日

カーター・ディクスン作「第三の銃弾」(The Third Bullet by Carter Dickson)–その3

ハムステッド地区内に所在するハムステッドヒース(Hampstead Heath)

強盗傷害罪で、15回の鞭打ちと18ヶ月間の重労働という刑罰を言い渡された青年ゲイブリエル・ホワイトは、仮釈放で刑務所から出所した後、先般退官したチャールズ・モートレイク元判事を殺害しようと考え、質屋で拳銃(アイヴァー・ジョンソン38口径リヴォルヴァー)を購入し、ロンドン北西部のハムステッド地区(Hampstead→2018年8月26日付ブログで紹介済)内にあるモートレイク邸へと侵入した。
質屋からの電話連絡を受けたロンドン警視庁(スコットランドヤード)のジョン・ペイジ警部とボーデン部長刑事の二人は、モートレイク邸へと急行したものの、タッチの差でホワイトを捕まえることができず、ホワイトはモートレイク元判事が居た四阿(離れ)の書斎の中へ飛び込み、内側からドアの鍵を閉めてしまった。
そして、最初の銃声が聞こえたのである。

ハムステッドヒース内にある池(その1)

ボーデン部長刑事から遅れて、四阿に駆け寄ったペイジ警部は、半開きになった窓越しに、外から書斎の中を覗くと、窓から少し離れた左手にある書きもの机の上に、モートレイク元判事が突っ伏しており、書斎の真ん中には、例の拳銃(アイヴァー・ジョンソン38口径リヴォルヴァー)を手にしたホワイトが、呆けたような顔をして、立っているのが見えた。

ハムステッドヒース内にある池(その2)

ペイジ警部は、窓枠を乗り越えて、窓から書斎の中に入り、ホワイトに近付くと、彼の手から拳銃(アイヴァー・ジョンソン38口径リヴォルヴァー)を取り上げた。そして、書斎のドアの鍵を開け、廊下に居て、ドアを叩き続けて居たボーデン部長刑事を書斎の中へと入れた。
ペイジ警部とボーデン部長刑事がモートレイク元判事の死体を調べたところ、至近距離から心臓を撃ち抜かれていて、即死だったと思われた。銃弾は、全部で2発撃たれたようで、1発はモートレイク元判事の心臓に命中し、もう1発は、モートレイク元判事が突っ伏している書きもの机の左側にある口述録音機から垂れ下がった送話管の先端のガラス製口当てを砕いた後、元判事の後ろの壁にめり込んでいた。

ハムステッドヒース内にある池(その3)

書斎の中には、射殺されたモートレイク元判事とホワイト以外に、誰も隠れていなかったため、ペイジ警部とボーデン部長刑事にとって、ホワイトが所持していた拳銃(アイヴァー・ジョンソン38口径リヴォルヴァー)で2発撃って、そのうちの1発がモートレイク元判事を殺害して、残りのもう1発は的である元判事を外して、彼の後ろの壁にめり込んだというストーリーしか考えられなかった。
念の為、ペイジ警部が先程ホワイトから取り上げた拳銃(アイヴァー・ジョンソン38口径リヴォルヴァー)を開けて、弾倉を覗いてみたところ、驚くべきことに、ホワイトが所持していた拳銃(アイヴァー・ジョンソン38口径リヴォルヴァー)から、弾丸は1発しか発射されていないことが判ったのである。

それでは、もう1発の弾丸は、どこから発射されたのか?

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