2018年5月12日土曜日

カーター・ディクスン作「黒死荘の殺人」(The Plague Court Murders by Carter Dickson)–その2

絞首刑が行われていたタイバーン(The Tyburn)の樹が立っていた場所を示すプレート

黒死荘(Plague Court)に到着したケン・ブレーク(Ken Blakeー本編の語り手)、紅茶の輸入商ハリディ・アンド・サン商会の次男坊であるディーン・ハリディ(Dean Halliday)とスコットランドヤードのハンフリー・マスターズ主任警部(Chief Inspector Humphrey Masters)の3人は、そこでロンドン博物館での盗難事件を捜査していたバート・マクドネル巡査部長に出会う。彼らや他の参加者が見守る中、心霊学者のロジャー・ダーワース(Roger Darworth)は石室内に一人籠って、降霊会が始まる。
ところが、降霊会の最中、ロジャー・ダーワースが血の海の中で無惨にも事切れているのが発見された。彼が一人籠った石室は厳重に戸締まりされている上に、石室の周囲には足跡が何も残されていなかった。それに加えて、殺害されたロジャー・ダーワースの傍らには、ロンドン博物館から盗まれたルイス・プレージ所有の短剣が真っ赤な血に染まって残されていたのである。


外部からの侵入が全く不可能な石室の内に一人籠もったロジャー・ダーワースを、一体誰がどのような方法で殺害したのか?それとも、彼が呼び出そうとしていた元絞首刑史のルイス・プレージによる仕業なのだろうか?ケン・ブレークは、英国軍防諜部所属時代の元上司で、現在は陸軍省情報部の部長執務室で暇を持て余していたH・Mこと、ヘンリー・メリヴェール卿(Sir Henry Merrivale)に助けを求めるのであった。

絞首刑が行われていたタイバーンの場所は、現在、
マーブルアーチ(Marble Arch)から北上する
エッジウェアロード(Edgware Road)の一番南端で、
道路中央の浮島(画面中央)内にある

ジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年) / カーター・ディクスン(Carter Dickson)の作品は、特に密室を中心とした不可能犯罪をテーマにした作品が多いという特徴があるが、「黒死荘の殺人」は、密室のトリック、ロジャー・ダーワースの殺害方法および犯人の隠し方等を含めて、独創性が高く、彼の最高傑作の一つとして、一般に評価されている。

絞首刑が行われていたタイバーンの南側には、
現在、マーブルアーチが建っていて、
多くの観光客を集めている

明智小五郎シリーズ等で有名な日本の推理作家である江戸川乱歩(1894年ー1965年)は、「別冊宝石」(1950年8月)で行った「カー問答」において、カーの作品を第1位グループ(最も評価が高い作品群)から第4位グループ(最もつまらない作品群)までグループ分けしていて、「黒死荘の殺人」を第1位グループの6作品中、筆頭の「帽子収集狂事件(The Mad Hatter Mystery→2018年4月29日 / 5月5日付ブログで紹介済)」の次に高く評価している。
また、金田一耕助シリーズ等で著名な日本の推理作家である横溝正史(1902年ー1981年)も、「帽子収集狂事件」等と共に、「黒死荘の殺人」をベスト3の中に入れている。

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