ソノラマ文庫ネクストで出版されている 井上雅彦氏作「ヤング・ヴァン・ヘルシング1− 異人館の妖魔(ファンタズマ)」の表紙 ヴァン・ヘルシング教授の若き日を描く時代伝記小説で、西暦1825年の長崎が舞台となる。 なお、表紙のオブジェは、松野光洋氏が造形。 |
アイルランド人の小説家であるブラム・ストーカー(Bram Stoker)こと、エイブラハム・ストーカー(Abraham Stoker:1847年ー1912年)が1897年に発表したゴシック小説 / ホラー小説「吸血鬼ドラキュラ(Dracula→2017年12月24日付ブログおよび同年12月26日付ブログで紹介済)」に登場するエイブラハム・ヴァン・ヘルシング教授(Professor Abraham Van Helsing)は、吸血鬼であるドラキュラ伯爵(Count Dracula)と闘う良心的な人物として描かれている。
ソノラマ文庫ネクストで出版されている
井上雅彦氏作「ヤング・ヴァン・ヘルシング2−鈎屋敷の夢魔(ラミア)」の表紙
ヴァン・ヘルシング教授の若き日を描く時代伝記小説で、江戸が舞台となる。なお、表紙のオブジェは、松野光洋氏が造形。 |
ブラム・ストーカーの原作上、ヴァン・ヘルシングはアムステルダム大学の名誉教授で、恰幅の良い60歳の老年として設定されている。彼の専門は精神医学で、吸血鬼研究を専門としている訳ではない。
教え子であるジャック・セワード医師(Dr. Jack Seward)の依頼を受けて、ロンドンにやって来たヴァン・ヘルシング教授は、ジャック・セワード医師が求婚していたルーシー・ウェステンラ(Lucy Westenra)が吸血鬼に狙われていることを看破する。そして、ヴァン・ヘルシング教授は、
(1)ジャック・セワード医師 → ドラキュラ伯爵が英国進出のための足掛かりとして購入しようとしていたロンドンのカーファックス屋敷(Carfax)の近くにある精神病院の院長で、ルーシー・ウェステンラの求婚者の一人。
(2)アーサー・ホルムウッド(Arthur Holmwood) → ルーシー・ウェステンラの求婚者の一人で、後に彼女の婚約者となる。男爵である父親の死去に伴い、ゴダルミング卿(Lord Godalming)の爵位を受け継ぐ。
(3)クウィンシー・モリス(Quincy Morris) → 米国テキサス州の大地主で、ルーシー・ウェステンラの求婚者の一人。
(4)ジョナサン・ハーカー(Jonathan Harker) → エクセター(Exeter)に事務所を構えるピーター・ホーキンズ(Peter Hawkins)の代理として、カーファックス屋敷の購入手続を行うため、トランシルヴァニア(Transylvania)にあるドラキュラ城(Castle Dracula)へ派遣された新人事務弁護士で、ドラキュラ伯爵に囚われるものの、命からがら城を脱出する。
と一緒に、ドラキュラ伯爵と闘うが、どちらかと言うと、前面に立って闘うよりも、若い彼ら達を補佐する役回りである。
物語の終盤、ロンドンからトランシルヴァニアへと退却するドラキュラ伯爵をヴァン・ヘルシング教授達は追撃し、クウィンシー・モリスを戦死で失うが、ドラキュラ伯爵配下の者達を倒して、馬車からドラキュラ伯爵が眠る棺を引き摺り下ろす。そして、ヴァン・ヘルシング教授達は、ドラキュラ伯爵の心臓に杭を打ち込んだ後、彼の首を切り落として、吸血鬼を見事滅ぼしたのである。
1920年代に英国でロングランを記録した舞台化において、劇団主宰者かつ劇団の看板俳優で、自ら脚本も担当したへミルトン・ディーンが、ドラキュラ伯爵ではなく、ヴァン・ヘルシング教授を演じた。
これが先駆けとなって、その後の舞台化や映画化では、ヴァン・ヘルシング教授は、ドラキュラ伯爵と直接、また、単独で闘うケースが多くなり、ブラム・ストーカーの原作に比べると、より重要な役割を占めることになった。
その結果、現在、ヴァン・ヘルシング教授と言うと、吸血鬼ハンター(vampire hunter)の代名詞的存在として、一般に認識されている。
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