フランスにおいて、フランス語履修用に出版されている ガストン・ルルー作「黄色い部屋の謎」 |
「黄色い部屋の謎」(原題:Le Mystere de la Chambre Jaune / 英題:The Mystery of the Yellow Room)は、Sam Siciliano 作「シャーロック・ホームズの更なる冒険ーオペラ座の天使(The Further Adventures of Sherlock Holmes - The Angel of the Opera)」(1994年ー2015年1月24日付ブログで紹介済)のベースとなった小説「オペラ座の怪人(The Fantome de I’Opera / 英題:The Phantom of the Opera)」(1909年ー1910年)を執筆したフランスの小説家 / 新聞記者でもあったガストン・ルイス・アルフレッド・ルルー(Gaston Louis Alfred Leroux:1868年ー1927年)による推理小説で、1907年9月から同年11月にかけて、週刊の挿絵入り新聞「イリュストラシオン(L’illustration)」に連載されて、世間から高い評価を得ている。
1892年10月26日付の新聞によると、科学者のスタンガーソン博士(Professor Stangerson)が所有する邸宅「グランディール城(Chateau du Glandier)」の「黄色い部屋」と呼ばれる場所から、夜、彼の令嬢マチルド・スタンガーソン(Mademoiselle Mathilde Stangerson)の悲鳴が響き渡ったと報道されている。そして、邸宅内に居たスタンガーソン博士、執事や召使い達が「黄色い部屋」に駆け付けて、鍵がかかったドアを壊し、部屋の中に入ると、そこには、頭が血塗れになった令嬢が横たわっており、彼女は虫の息だった。令嬢を傷つけた犯人が居た痕跡は部屋の中に残っていたものの、犯人の姿はなく、部屋は内側から施錠されており、密室状態であった。
密室状態にあった「黄色い部屋」の中から、マチルド・スタンガーソンを瀕死の重傷にした犯人は、どうやって姿を消すことができたのだろうか?若き新聞記者であるジョーゼフ・ルールダビーユ(Joseph Rouletabille)は、彼の友人で弁護士のジャン・サンクレール(Jean Sainclair - 本小説の語り手)を伴って、この謎に挑むべく、現地へと向かう。
一方、フランス警察から現地に派遣されたフレデリック・ラルサン刑事(Frederic Larson)は、マチルド・スタンガーソンの婚約者で、科学者でもあるロベルト・ダルザック(Robert Darzac)を容疑者と考えていた。
九死に一生を得たマチルド・スタンガーソンに対する犯人の襲撃は、尚も続くのであった。そして、ある時、邸宅内で犯人の姿を見つけたルールダビーユが犯人を追ったが、途中で犯人は煙のように消え失せて、ルールダビーユはラルサン刑事と鉢合わせすることになった。
施錠された密室から姿を消し、更に、自分の後を追うルールダビーユの前から煙の如く消え失せた犯人… 彼は一体何者なのか?
ガストン・ルルー作「黄色い部屋の謎」は、密室トリックを扱った古典的作品として知られており、密室殺人や不可能状況下における殺人等を扱った推理小説で有名な米国の推理小説家であるジョン・ディクスン・カー(John Dickson Carr:1906年ー1977年)は、「三つの棺(The Hollow Man)」(1935年)事件において、探偵役のギデオン・フェル博士(Dr. Gideon Fell)に「『黄色い部屋の謎』は、今までに書かれた中で、最も素晴らしい推理小説である。」と言わせている。
「黄色い部屋の謎」の続編として、「黒衣夫人の香り(原題:Le Parfum de la Dame en Noir / 英題:The Perfume of the Lady in Black)」(1909年)が、ガストン・ルルーによって執筆され、「黄色い部屋」とほぼ同じ登場人物が顔を見せているが、残念ながら、「黄色い部屋の謎」と比べると、フランス特有のロマンチックな内容が濃くなっていて、推理小説的な要素は乏しい。
なお、ガストン・ルルーの原稿及び初版において、「黄色い部屋の謎」の主人公として活躍するジョーゼフ・ルールダビーユの姓はボワタビーユ(Boitabille)だったが、その名前をペンネームとするジャーナリストが居て、彼からの抗議を受け、ガストン・ルルーは「ルールダビーユ」へと変更した。
ちなみに、ジョーゼフ・ルールダビーユの「ルールダビーユ」はあだ名であって、彼の本名はジョーゼフ・ジョゼファンである。
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