絞殺された若い女性の死体が運び出された後の書斎のシーンが描かれている。 帽子、老眼鏡とピンク色の紐が、ミス・ジェイン・マープルの顔を形作っている。 また、書斎の奥にある本棚には、「書斎の死体」に至るまでのエルキュール・ポワロシリーズを除く アガサ・クリスティーの作品が並んでいる。 |
(5)「書斎の死体(The Body in the Library)」(1942年)
本作品は、アガサ・クリスティーが執筆した長編としては第31作目に、そして、ミス・ジェイン・マープルシリーズの長編としては第2作目に該る。
退役軍人であるアーサー・バントリー大佐(Colonel Arthur Bantry)と妻のドリー・バントリー(Mrs. Dolly Bantry)が住む屋敷ゴシントンホール(Gossington Hall)において、思いもよらぬ事件が発生する。早朝、メイドに起こされたバントリー夫妻は、書斎に見知らぬ若い女性の死体が横たわっていることを告げられるのである。
アーサー・バントリー大佐の知らせを受けて、ラドフォードシャー州(Radfordshire)警察の本部長(Chief Constable)であるメルチェット大佐(Colonel Melchett)と彼の部下のスラック警部(Inspector Slack)がバントリー邸に駆け付ける。書斎に横たわる若い女性は絞殺されており、死亡時刻は前日の午後10時から午後12時の間と、検死結果が出るが、彼女の身元が杳として知れなかった。
そこで、バントリー夫人は古い友人であるミス・ジェイン・マープルに電話をかけ、事件の調査を依頼する。探偵好きな独身の老婦人ミス・マープルが、警察よりも先に、事件の真相を鮮やかに解明するのであった。
アガサ・クリスティーの没後40周年を記念して発行された切手には、絞殺された若い女性の死体が運び出された後の書斎のシーンが描かれている。左手前のテーブルの上には本があり、更に、その上には帽子と老眼鏡が置かれていて、ピンク色の紐が帽子と老眼鏡を繫ぎ、ミス・マープルの顔を形作っている。
書斎の奥にある本棚には、エルキュール・ポワロシリーズを除くアガサ・クリスティーの作品が、左から以下のように並んでいる。
(1)「The Secret Adversary(秘密機関)」(1922年)―トミーとタペンス・ベレズフォード第1作
(2)「The Man in the Brown Suit(茶色の服の男)」(1924年)
(3)「The Secret of Chimneys(チムニーズ館の秘密)」(1925年)
(4)「The Seven Dials Mystery(七つの時計)」(1929年)
(5)「Partners in Crime(おしどり探偵)」(1929年)―トミーとタペンス・ベレズフォード登場
(6)「The Mysterious Mr. Quin(謎のクィン氏)」(1930年)
(7)「Murder at the Vicarage(牧師館の殺人)」(1930年)ーミス・ジェイン・マープル第1作
(8)「The Sittaford Mystery(シタフォードの秘密)」(1931年)
(9)「The Thirteen Problems(火曜クラブ)」(1932年)ーミス・ジェイン・マープル登場
(10)「The Hound of Death(死の猟犬)」(1933年)
(11)「The Listerdale Mystery(リスタデール卿の謎)」(1934年)
(12)「Why Didn't They Ask Evans ?(なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?)」(1934年)
(13)「Parker Pyne Investigates(パーカー・パイン登場)」(1934年)
(14)「Murder Is Easy(殺人は容易だ)」(1939年)
(15)「And Then There Were None(そして誰もいなくなった)」(1939年)
(16)「N or M ? (NかMか)」(1941年)
つまり、「書斎の死体」に至るまでのエルキュール・ポワロシリーズを除く作品が並んでいるのである。となると、左手前のテーブルの上にあるのは、「書斎の死体」だろうか?
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